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PFFアワード

PFFアワード作品紹介

PFFアワード1999

作品名 監督名 作品名 監督名
『あおい夏』 渡辺充浩 技術賞(IMAGICA賞)
『にくいあなた』
継田 淳
『ウワバミの絵』 山下真由子 『バッド デット』 郡司正人
準グランプリ
『風は吹くだろう』
白石晃士
近藤 太
『昼下がり』 小野靖之
グランプリ
『5月2日、茶をつくる』
小嶋宏一 『福田さん』 宇田敦子
審査員特別賞、ブリリアント賞(日活賞)
『シアワセの記号』
三好 暁 エンターテイメント賞(レントラックジャパン賞)
『プロゴルファー虎木』
長屋正志
企画賞(TBS賞)
『失跡~1998年の補足~』
横川兄弟 審査員特別賞、音楽賞(TOKYO FM賞)
『他、3本。』
川合 晃
審査員特別賞
『テーブルトーク』
三内 徹 『PORTAMENTO(ポルタメント)』 林 拓身
『夏将軍』 木下涼子
上田啓嗣
観客賞(東京)
『ランナーマン』
中村隆太郎

応募総数 914本 入選 16本

『あおい夏』

監督:渡辺充浩

礼介は、いつか自分の米をつくることを夢見て米屋で働いている若者。彼には、しじみという好きな女の子がいるが、このところ、なぜかあまり会えないでいる。夏のある暑い日、久しぶりに見かけたしじみは、平日の昼間だというのに、そして金づちだったはずなのに、プール帰りらしい格好で、態度もよそよそしい。しじみの女友達によれば、彼女は「役者になる」と、突然会社を辞めてしまったらしい。クリーニング店で働くその女友達は、礼介のことをずっと想ってくれているが、礼介と一緒に暮らしているミュージシャン志望の友人が、彼女のことを想い続けているのも知っているのだった。長い間、変わることのなかったこの四角関係から抜け出すように、1人動き出したしじみ。礼介は、自分の知らないところで彼女が夢を持っていたことに、さみしさを禁じ得ない。しかし、自分の米づくりの夢と同じように、遠い将来に向かって、小さいが確実な一歩を刻もうとするしじみを、応援したいと思うのだった…。
素直になりたいのに素直になれない、素直になった途端になぜかバツの悪い思いをしてしまう、あおくさい時間。恋と不確かな未来との間で振り子のように揺れる、あおい夢。そんな若さの断片を、セリフではなく、全身のショットも含めた、役者たちのさりげない表情でとらえた。特に“出会ったあと”“別れたあと”“怒られたあと”など、余韻の表情を撮る時に、監督のデリケートな個性が光る。また、プールの水しぶきやサンダルの靴音、米をふるいにかける音など、音が登場人物のキャラクターや心情を伝える、大きな役割を果たしている。

1998年/8ミリ/カラー/27分
監督・脚本・編集:渡辺充浩
制作:中村満男 助監督:堀井真人 撮影:寺内俊之 撮影助手:井村 慈 照明:雲井成和 照明助手:谷 艦 音楽:谷下 信 録音・整音:中野由美 録音助手:恩田晋一郎 美術:名雪美紀子 記録:新間英貴
出演:中村雪子、高口真吾、土屋直子、可野浩太郎

【貸し出し対象作品】料金:15,000円(税別)/貸し出しフォーマット:ビデオ

『ウワバミの絵』

監督:山下真由子

恋人と別れ、時間と心の隙間を持て余すマユコは、突然の電話やわがままにも優しく応じてくれる男友達を、今日も海辺に呼び出した。そこで「大切なことがたくさん書いてある」と言われて一冊の本『星の王子さま』をもらった彼女は、自分の心についたサビを落とすため、1人、東京タワーへと車を走らせる。一方、東京タワーの下では、3人の若い女性が“東京タワーの下にある公園ナンバーワン”を決めようと、だらだら公園めぐりをしている。決して相手の心に踏み込まない、自分の本音も出さない、あたりさわりのないおしゃべりを延々と続けているように見える彼女たち。しかし目を凝らすとそこには、しあわせを手にするためのそれぞれの工夫と思いやりがあり、ささやかながら誠実なしあわせが芽吹いているのだった。
タイトルの「ウワバミの絵」とは、サン=テグジュペリの有名な小説『星の王子さま』に登場する「子どもにはすんなり理解できて、大人になるとすっかり忘れてしまうもの」の象徴。子どものように少ないボキャブラリーゆえ、大人から見ればコミュニケーションが貧弱そうな現代の若者たち。だが、何でもない日常生活の中でしあわせを感じ、それを分かち合う方法は、ちゃんと知っている。しあわせは探し出すものではなく、感じるものだというテーマを、4人の女性の3日間の中に、少女マンガのようなやわらかな語り口で描いた。

1998年/8ミリ/カラー/31分
監督・脚本・演出:山下真由子
撮影:藤木 啓、穐山茂樹、岩切謙太郎 協力:冨永啓仁、水本里美、保坂千秋、田辺麻美、福中海人、今井 久、五置純子、板本恵利子、青山博久、柴崎夏樹、東方 聡、井口晶子、三谷麻里子、植野智之、三輪勇気、前田典子
出演:山下真由子、樋口わかこ、森 美華、吉田絵理、梅澤寛太、大河儀輝、村本秀介、山田耕平、大前研二

【貸し出し対象作品】料金:15,000円(税別)/貸し出しフォーマット:8ミリ、ビデオ

準グランプリ

『風は吹くだろう』

監督:白石晃士/近藤 太

映画監督を志す町田は、買ったばかりのビデオカメラを回しながら家を出る。目指すのは、会ったこともない1人の男のアパート。もしかしたらそこに、自分の恋人である夕希子がいるかもしれないからだ。そして本当に夕希子はいた。男の部屋の布団の中でぐっすり眠って。責める町田、悪びれる様子もなく開き直る夕希子、飲み物を買いに行って帰ってきた男。そのやりとりを、カメラは写していく。結局、町田と夕希子は別れる。しかし、浮気した彼女も悪いが、おおもとの原因は自分にあるのではないかと考えた町田は、かつて撮ってあったビデオと、役者による再現ビデオを交え、2人の関係を見つめ直すべく1本の映画をつくろうと決心する――。
最初は、自分の恋愛を扱ったドキュメンタリーかと思わせながら、次第にフィクションとノンフィクションの境目を限りなく曖昧にしていき、観客の意識を作品の中に引きずりこむ。さらに、撮り手の立場で過去を再現すると言いながら、相手(恋人)の立場や気持ちも冷静に描いており、男女あるいは浮気する側、される側どちらにもシンパシーを感じさせる。構成も、オープニングのハンディカメラの荒々しいブレとは裏腹に、かなり緻密な計算を経た、手間のかかったもの。恋愛を題材にしていると見せながら、実は、真実を追求することの意味と残酷さを描いた高度に知能犯的な作品である。とはいえ、男性の嫉妬や未練のメカニズム、浮気性の女性がいかに浮気を重ねるかを知る上で、好テキストであることには間違いない。

1998年/DV/カラー/111分
監督・制作・脚本・編集:白石晃士、近藤 太
原案・撮影:近藤 太 音楽:小貫 誠
出演:笠井暁大、松梨智子、佐野敬子、中原和宏、村上賢司、加藤栄一郎、北川さおり、古川 健、近藤 太、白石晃士

【貸し出し対象作品】料金:15,000円(税別)/貸し出しフォーマット:ビデオ

グランプリ

『5月2日、茶をつくる』

監督:小嶋宏一

祐作は、全寮制の専門学校生。進路を決める時期になり、真剣に打ち込んできたバスケで推薦入社が受けられる可能性も出てきているが、茶畑を営む両親が自分に跡を継いで欲しいと思っているのは痛いほど知っている。そのため、休日には茶づくり名人のもとで修業を積んでいるが、はっきりとした決心はつかないままだ。八十八夜である5月2日、祐作は名人と2人、茶をつくっている。しかし、将来に対する不安や焦り、苛立ちから、昼休みに後輩を殴ってしまう。自己嫌悪に陥り、午後の作業に気もそぞろな祐作だったが、名人と息を合わせて茶づくりをするうち、次第に気持ちが浄化され、波立っていた心がおだやかになっていくのがわかるのだった。そして、つくりたてのお茶は、彼の身体と心の両方に、さわやかにしみ渡っていった。
「めったに撮影できない」という茶づくりの作業風景は、記録として珍しいだけでなく、見ているだけで一緒に作業をしている感覚になるようなリズム感があり、つい引き込まれる。「黙々と働く人のかっこよさを撮りたかった」という監督の意図を充分に反映されているといっていいだろう。シンプルなストーリーだが、茶摘みや茶づくりの様子、作業室などの風景を大切に撮ったことで、この作品ならではの清々しい空気が生まれた。特に、身体を1つのことに集中させ続けると訪れる、頭の中がからっぽになる“昇華の瞬間”を、主人公が目をやる窓の外の風景に重ね合わせたシーンで、テーマと題材が1つに融合している。

1998年/DV/カラー/25分
監督・脚本・撮影・編集:小嶋宏一
助監督:畑 康久
出演:山﨑祐作、萩原 豊、澤井真也、城下輝明、永尾裕也、甲斐正剛、川谷哲也、田之上尚満、中島 毅、枦川克可、寶物雅洋、松尾 実、吉田秀智

【貸し出し対象作品】料金:15,000円(税別)/貸し出しフォーマット:ビデオ

審査員特別賞&ブリリアント賞(日活賞)

『シアワセの記号』

監督:三好 暁

楽しそうな若者であふれ返る街を見て、三好監督は思った。「みんな、本当にシアワセなのだろうか?」。そして学校、駅、街角と、様々な場所で様々な若者にビデオカメラを向け、インタビューを敢行した“ドキュメンタリー風現代幸せ探し物語”。「今、シアワセか」「シアワセとは何か」「何をしている時がつまらなくて、何をしている時が楽しいか」「何才まで生きていたいか」「将来の夢は」。そうして出会った人々の中で、三好監督は、にぎやかな街を見て自分と似たことを考える1人の女の子を知る。不特定多数へのインタビューを続けるかたわら、彼女と交流を深め、その様子もビデオに捉えていく。女の子とのやりとりの中で、時に三好監督は映される側に回り、インタビューされ、彼女とともに自分が大勢にした質問の答えを考えていく。同年代の人間にビデオカメラを向け、「シアワセですか?」と聞くことは、映画、特にドキュメンタリーを撮ろうとする若者の、比較的多くが思いつくアイデアだ。だが、この作品がただのアンケート映画にならなかったのは、三好監督がインタビュアーとして優れていたから。その真摯さ、明るさ、立ち位置の明確さは、相手の気持ちに真正面から触れることを可能にし、いい表情といい言葉を自然に引き出した。また、漫画やTVドラマの挿入の仕方、音楽の使い方などに感じられる映画作家としてのセンスも、テーマが持つ深さ、重さの割には、この作品を人なつっこいものにしている。

1998年/Hi-8/カラー/85分
監督・構成:三好 暁
出演:高岡敬子、杉崎竜人、神谷光治、渡成健一郎、その他大勢のインタビューに答えて下さった方々

【貸し出し対象作品】料金:15,000円(税別)/貸し出しフォーマット:ビデオ

企画賞(TBS賞)

『失跡-1998年の補足-』

監督:横川兄弟

恋人に裏切られ、失意の日々を送るOLの小沢ケイ。平静を装って暮らしてはいるがこの先、特に打ち込むことも訪れそうにない虚しい生活に飽き飽きしていた。だが、ふとしたことから、殺人を引き受けてくれる組織の電話番号を手に入れて、気持ちに変化が訪れる。彼女がそこに電話して依頼したターゲットの名前は、小沢ケイ。自分自身だ。その日から、組織が派遣する殺し屋と、逃げる彼女のゲームが始まった。家も会社も捨て、ただ逃げて生き残ることに集中し、次々と襲いかかるトラブルを乗り越えていくケイは、次第に凛々しく、イキイキとしていく。生きることのシンプルな喜びと価値に触れた彼女は、しつこい殺し屋の手を完全に逃れ、新しい人生のスタートを切ることができるのだろうか――。
ヒールにタイトスカートで、走り、壁を乗り越え、マンホールのふたを開けて下水道を延々と歩くという八ードな撮影をこなしたのは、この作品が演技初体験の女性。ヒロインがまったく笑わないという設定もかなり珍しいが、精神的にも肉体的にも厳しかったであろう要求に、よく応えている。派手なアクションこそないが、むしろその持久戦的な逃走の様子が、生きることのシリアスさを伝えている。後半戦が完全に逃走劇になっているため、忘れられがちではあるが、オープニングで、ケイが恋人の浮気を突き止めるエピソードは、かなり良くまとめられた恋愛劇である。なお、監督名の横川兄弟とは、複数ではなく1人の人物である。

1998年/DV/カラー/45分
監督・脚本・編集:横川兄弟
制作:菊森久美 助監督:本居佳菜子 撮影:増田庄吾 照明:小倉正彦 録音:秋浜瑞紀、菅谷佳弘 MA:古木 聡 音楽:黒田靖彦
出演:平田亜希子、大九明子、岡本真太朗

【貸し出し対象作品】料金:15,000円(税別)/貸し出しフォーマット:ビデオ

審査員特別賞

『テーブルトーク』

監督:三内 徹

兄と妹が中良く暮らしている。兄が食事をつくり、妹が食べ、お互いを気づかう。特別なことはないながらも、心地好いペースが定着している2人の生活。しかし、妹に恋人ができたことから、そのペースは少しずつ狂い始め、兄の機嫌も悪くなってくる。そんなある日、2人の家を見知らぬ少女が訪ねてくる。幼い頃に別れた父親から来た手紙の住所が、2人が住んでいる部屋のものなのだという。妹の不在中、彼女を家に上げる兄。少女に好意は感じながらも、妹は家を出て恋人と暮らし始める。その間、兄は少女の父親を探し出し、少女はすっかり家になじみ、妹は恋人との絆を深め、それぞれの道が見え始める。と、思われたのも束の間、初めて4人で食事をしようとした日、兄が不機嫌を爆発させてしまう…。
イギリスのマイク・リー監督の「秘密と嘘」に触発され、「その状況に存在する2人を見るだけで、へたな説明をするより、状況や人物の心情がわかるのではないか」と、“セリフなし、シーン割りのみ”の脚本で撮った作品。役者には、出来事とシチュエーションだけを与えて、あとは自由に動いてもらったという。そして役者たちも過剰にしゃべろうとはせず、食べる、茶碗を洗う、掃除をする、寝るなど、ごく日常的な動作を抑えたトーンで演じながら、その時々の心理を伝えようとし、うまく成功している。また、家の中を映す数ヵ所の定点的なカメラも、リアルな生活の中に起きる小さな変化を丁寧に追うのに、大きな役割を担っている。

1998年/8ミリ/カラー/85分
監督:三内 徹
脚本:三内 徹、中野良一 撮影:中村聡史 助監督:中野良一 録音:佐々田優子 音楽:スーツケースローズ、中山 泰
出演:中野良一、こんゆみきこ、松谷容作、鈴木 葵、宮下耕治

【貸し出し対象作品】料金:15,000円(税別)/貸し出しフォーマット:8ミリ、ビデオ

『夏将軍』

監督:木下涼子/上田啓嗣

志麻子はケーキ屋でアルバイトをしている。仕事は暇で、『風の谷のナウシカ』を読んだり、ウトウトしたりしながら、閉店時間がやってくる。今日は外の看板をしまう時に、アイスを食べながら歩いている女の子と目が合った。そんな毎日。久し振りに実家に帰ると、屋上で弟が、哲学的な悩みを抱えた顔でビールを飲んでいた。中学生のくせに。弟との会話に刺激され、ひなびた島に1人で夏休みにやってきた志麻子。そこでも暇だ。浮輪に乗って海に出て、ゆられながら眠ってしまった。晴れた日にうな重を食べた。台風の日にアイスを食べた。帰る時、言葉を交わしたこともない島の兄妹が手を振ってくれた。一方、アイスを食べながらケーキ屋の前を歩いていた少女は、仕事も家事もせず、同居人の女性に「ごくつぶし」と言われながらも「ごくつぶしって何?」と聞き返す、のんきな日々を送っていた。しかしある晩、腹痛がして、布団を血で汚してしまう。翌日、お赤飯を炊いてくれた同居人は、間もなく、テーブルいっぱいのごちそうをつくり、忽然と姿を消す。1人黙々と料理を平らげながら、これまでと同じようにのんきではいられないことを、少女はうっすらと感じていた。
「夏将軍」とは、夏の空に湧く雲のこと。勇ましくも、はかなく消えていく雲に象徴されるように、夏にだけ感じる、気だるさと興奮。人生のある時期にだけ感じる、退屈と自由。女の子だけが感じる、孤独に対する強さと弱さ。そんな不確かで微妙な気分を、デリケートなまま、映像化することに成功している。

1998年/DV/カラー/40分
監督:木下涼子、上田啓嗣
脚本:木下涼子 撮影・編集:上田啓嗣 音楽:高柳嘉光
出演:葉隠みどり、蔵谷貴輪、冨田恵実、流星ヒカル、澤近真由子、西内雄紀

【貸し出し対象作品】料金:15,000円(税別)/貸し出しフォーマット:ビデオ

技術賞(IMAGICA賞)

『にくいあなた』

監督:継田 淳

最近、中津の通う大学の学生ばかりを狙った、連続殺人事件が起きている。犯人も動機も不明だが、学生たちはおもしろそうに噂話をするだけで、自分だけは被害者にならない自信があるとばかりに、特に怖がる風でもない。そんな中、いかがわしい裏ビデオばかりを撮っている宇野が、中津の恋人・智子を主人公に切腹ビデオを作りたいと言ってくる。反対する中津を無視して、女優志望の智子は出演を快諾。結局、撮影はカメラマン志望の坂本、その恋人で缶ジュースが大好きな香を交えて、中津のアパートで行われることになった。しかし、途中から智子が本当に自分の腹を切ると言い出し、怒った中津と宇野のもみあいに。そこに、例の連続殺人犯がやってきて、智子が狙われるが――。
監督自身が「自分もひっくるめて、“何かを作りたい”などと言っている若い奴らにツバをひっかけるようなものにしたかった」と言っているように、芸術性とわがままを履き違えている人、儲けるためには何をしてもいいと思っている人、努力よりも話題性が大切だと勘違いしている人など、“クリエーター志望のイヤなやつ”のパターンを、少ない登場人物の中で、タイトに整理して提示している。そして、彼らは決して特別ではなく、それがキャンパス全体の、引いてはこの国の若者全体の空気だということも、言外に伝わってくる。どんな出来事も、自分に都合のいいように解釈して図太く生きていく、ラストシーンのシニカルさも効いている。

1997年/16ミリ/カラー/23分
監督:継田 淳
助監督:久保茂昭、武山 暁 撮影:萩原美奈子 録音:清水栄理子 撮影助手:伊佐敦由紀 録音助手:渡辺琴美
出演:伊藤賢治、前川拓也、鈴木由美子、大久保祐子、鈴木穂高

【貸し出し対象作品】料金:15,000円(税別)/貸し出しフォーマット:16ミリ、ビデオ

『バッド デット』

監督:郡司正人

大学の授業料を使い込んだ福原。穴埋めのために同級生の菊池から50万円を借りるが利子が利子を呼び、気付くとそれが100万円にふくれあがっていた。もちろん返済のあてはなく、日増に厳しくなる取り立てに頭を抱えている。心配した友人の岸田は、一晩で100万円稼ぐ方法や、借金を返さなくても済む方法など、様々なアドバイスを親身になって与えるのだった。しかし、どれもことごとく失敗。というよりも全てが裏目に出て、福原は心身ともにボロボロ、生来のアンラッキーぶりだけを発揮するのだった。そんな福原たちとは逆に、余裕と迫力たっぷりの菊池。何としてでも借用書を取り返そうと、岸田はある強行手段を思いつく。それは、菊池の恋人らしき女性を誘拐することだった。しかし、指定場所の湘南の海岸で、女は「彼と私は恋人同士ではない。彼はきっと来ない」とつぶやく。果たして菊池は来ないのか。来たとしても、うまく借用書を取り戻すことはできるのだろうか…。
決して上手いとはいえない出演者の演技が、それぞれの雰囲気が生かされた、ユーモラスで味わいあるものとして映っているのは、ほぼ同じキャストで、これまでに2本作品を撮っているという気心のせいか。特に福原役の福原大介は、とことんついていない男を、ナチュラルに好演。また、短いカットをつなぐ時間経過の説明にも独特のリズム感があり、この作品を、どこかスタイリッシュでありながらトボケているという、個性的なものに仕上げている。

1998年/8ミリ/カラー/23分
監督・脚本・撮影:郡司正人
助監督:中島さや香 録音:中島隆一
出演:菊池 徹、福原大介、岸田研二、上田平一則、椎名麻美、若狭雄介、塩頭裕治、甲斐智広、今井若奈

【貸し出し対象作品】料金:15,000円(税別)/貸し出しフォーマット:8ミリ、ビデオ

『昼下がり』

監督:小野靖之

岸と岡村は、昔からダラダラとツルんできた友人同士。しかし、岡村が精神を病んで病院に入り、退院してきてからは、岸の様子が少し変わってきた。何となくイライラしているのだ。理由は、岡村が入院している間、彼の妻と関係を持ってしまったことだった。どちらとの関係も断ち切れず、しかも、彼女が育てているのが自分の子どもだと知った岸は、自分に対するイラだちをさらに深めていく。その少し前、2人が住む町の交番で、何者かによってピストルが盗まれるという事件が起きていた。町内会ではその対策にと自警団が結成される。彼らの良識派ぶりに嫌悪感を抱く岸に対し、岡村は興味を持って入団する。だが、パトロール中に女子中学生にいたずらしたことがもとで入院歴が明るみに出て、退団をせまられる。それだけでなく、真犯人が自分達の仲間の息子だと知った団員たちに、ピストル強盗の濡れ衣を着せられそうになる。陥れられて錯乱する岡村を見た岸は、あることを思いつき――。
地域であれ、人間関係であれ、小さなコミュニティの中で、息苦しさや煩わしさを感じながらも、どこかに甘えられる部分があるのも知っていて、そこから出られない。現代人の多くが身を置く状況だが、そこに八マった人々が招く悲劇を、様々な形で描いた作品。そこでは被害者も加害者になり得、加害者も一瞬で被害者になり得るが、それが明確に伝わるのは、自主製作映画にしては珍しく、中高年を比重の重い出演者として起用したことが、大きな要因のひとつだろう。

1998年/β-cam/カラー/52分
監督・脚本・撮影・編集:小野靖之
制作:新川勝博、小野靖之 効果音:アイランド 編集協力:小川昌洋
出演:鹿島直弘、新川勝博、加藤恵子、早川 健、石黒景太、筒井 良、中村祐子、茅野大滋、白鳥座

【貸し出し対象作品】料金:15,000円(税別)/貸し出しフォーマット:ビデオ

『福田さん』

監督:宇田敦子

福田さんは、岐阜県にあるマルチメディアの専門学校の2年生。特に美人でも、個性的でもなく、どちらかといえば要領もよくないが、ほんわかとした雰囲気と、暮らし全般に対するいいセンス、それに、こまやかな思いやりの持ち主だ。あまりしゃべらなくても、長い時間を一緒に過ごせる友人も多い。この福田さんと友人にまつわる日常のエピソードを、4話のオムニバスで切り取る。福田さんのもとに実家から蟹が届き、友達を呼んで蟹鍋をする「日曜日」。福田さんが友達の大切な茶碗を割ってしまう「かけら」。引っ越し準備をする福田さんのもとに友達がやってきて、福田さんが一度捨てたラケットでバドミントンをする「バドミントン」。福田さんの部屋に友達が遊びにきて、一緒にお菓子を食べ、お茶を飲む「何でもない日」。どれもが素っ気ないほどの日常的なトーンで語られるが、福田さんとその友達が醸しだすコミュニケーションの温度は、じっくりと確実に、観る人の気持ちを温めていく。ちょっとうれしいことがある日。自分はついていないと感じる日。友達にしあわせを分けてあげたい日。友達にしあわせをもらう日。誰もが過ごしているような、小さな出来事が繰り返される日々も、福田さんという存在を通して見ると、何かを改めて発見したり、自分を前よりも理解してもらう時間になる。“世界は、監督の目を通すとどう見えるか”を提示する映画が多い中で、タイトル通り“世界は福田さんの目を通すとこう見える”と提示する。監督の福田さんに対する強い興味と信頼が成立させた作品。

1998年/DV/カラー/41分
監督・脚本:宇田敦子
機材:岐阜県立国際情報科学芸術アカデミー(IAMAS)
出演:福田 史、内山ありさ、玉井章子、宇田敦子

【貸し出し対象作品】料金:15,000円(税別)/貸し出しフォーマット:ビデオ

エンターテイメント賞(レントラックジャパン賞)

『プロゴルファー虎木』

監督:長屋正志

不景気が長引く日本では、下着泥棒が大量発生していた。景気対策の無策ぶりを目立たせないよう、内閣は下着泥棒対策に力を入れ、警視庁内に「下着窃盗犯捕縛方(したぎせっとうはんとりしばりかた)」なる部署を発足させる。予算のない部署ではあったが、キレ者の長官・時田正志の指揮のもと、目覚しい検挙数を上げる。それでも時田が気にかける最大の敵は、三代続く下着盗賊界の老舗・駒沢一家だった。しかし肝心の駒沢一家内では、先代、先々代が伝えてきた「盗んだ下着をかぶらない」などの教えを破って仕事の質を落としている長男・伝蔵と、昔気質の次男・助次郎との深刻な内部対立が進んでいた。そして遂に、助次郎は時田を訪ね、自らの下着泥棒人生と引き換えに、下着泥棒としてのプライドがない兄の伝蔵を捕らえてほしいと頭を下げる。敵対する立場にありながらも、互いに認め合うものを感じた2人は、なぜか揃って旅に出るのだが、行く手には様々な敵が待っていた――。
早口のためわかりにくいが、よく聞くと、セリフの中には細かいギャグが「これでもか」というほど詰め込まれている。メジャーの日本映画でもここまでやるかと思うほどの、迫力あり、小細工なしのたっぷりとしたアクション・シーン。監督のいろいろやりたい精神とエンタテインメント性とが、最後まで失速することなく作品を貫いている。その愛すべき勢いが、多少のストーリーのちぐはぐさもカバー。ちなみにタイトルのプロゴルファー虎木とは、ほんのワンシーンだけ登場する、ストーリーにもテーマにも関係しない人物。

1998年/S-VHS/カラー/48分
監督・脚本:長屋正志
アクション指導:加藤 敏、長屋正志 音楽:高橋兼史
出演:坂田照忠、加藤 敏、長屋正志、斉藤みつる、岡本和之、勝見隆久、西村哲信、佐藤恵子、小川直子、沖 輝之

【貸し出し対象作品】料金:15,000円(税別)/貸し出しフォーマット:ビデオ

審査員特別賞&音楽賞(TOKYO FM賞)

『他、3本。』

監督:川合 晃

ある町の小さな映画館で起きる、3人の男の物語。
1つ目は、怖い2人組みの借金取りに追われている男の物語。追い詰められてどうすることもできず、苦肉の策でトイレの個室に逃げ込むが、なぜかそこのゴミ箱には拳銃があった。2人組みと借金男の立場は一瞬にして逆転し――。
2つ目の物語の主人公は殺し屋。その映画館にヤクザ映画を見に来ている暴力団組長を狙って雇われたのだ。用意周到、パーフェクトな仕事を自他ともに売りにしている彼だったが、その日、指定してあったトイレのゴミ箱には、あるはずの拳銃が見つからない。念のためにと隣の個室を探すと、そこにはなぜか薬物らしきものが。中身を確認するため鼻から吸引してみると、質の高い麻薬だった。ラリッた彼は、トイレの詰まりを直す吸引具(日本刀のつもり)を手に、組長を殺しに行くのだった――。
最後の話は、トイレに麻薬を隠していた売人が主人公。買い手のメドが立ち、意気揚々とトイレに行くと、そこにブツはなく、2つの死体が。映画館の支配人に顔を見られた彼は、逃げるに逃げられず、死体と“仲良し3人組”を装うハメになって――。
1つの場所を舞台に、偶然のいたずらによって引き起こされたある間違いから、何人もの人間がドミノ倒しのように転げ落ちていく様子を、スタイリッシュに描いたアクション・コメディ。真剣な姿をおもしろおかしく、格好悪いはずの姿をこだわりの映像で撮る。そのセンスはクエンティン・タランティーノを彷彿とさせるが、ボタンのかけ違いのようにズレた3つの物語が1つになるラストは、ストーリー・テラーとしての資質の高さを感じさせる。

1998年/DV/カラー/48分
監督・脚本:川合 晃
撮影:立花 宣、井上敏彦、横山健二 照明:澤村厚志 音声:栗山誠一 音楽:首藤正典 編集:岡部純子 メイク:久保田かすみ
出演:伏原正康、江藤公威、藤田裕樹、横田直哉、首藤正典、金 義植、前羽佳代子、友松直之、井上敏彦、山口泰平、大植朋和、小山哲哉、佐藤京国、菅原研治、赤井勝久、目片宏介、奥山直樹、YABU、涼子、池田 勝

【貸し出し対象作品】料金:15,000円(税別)/貸し出しフォーマット:ビデオ

『PORTAMENTO(ポルタメント)』

監督:林 拓身

ある若い会社員のもとに、部長から「お中元のお返しは届いたか」という電話が入る。ジュースを受け取っていた彼は「おいしかったです」と答えて電話を切る。そこに同僚から「部長からお中元のお返しは来たか」と電話が入る。「ちょうどその話をしていたんだよ」と答えると、同僚は「去年もそうだったけど、部長からのお返しって、すごいよな」と言う。聞けば彼の元には、よくわからない機械が届けられているらしい。その電話中にキャッチホンが入る。相手の女友達の声はバスルームからのように響いている。「今日、うち、湿気がすごいの。それより今日、変な電話がかかってこなかった?」そういう彼女の電話にもキャッチホンが入り、彼女の女友達が話し出す。保留にされたまま次々と広がっていくコミュニケーションの輪。映像はそのデジタルなつながりを、各人物の俯瞰を割り込ませながら、次々と画面を分割させて見せていく。そして電話の人々をつなぐ輪は、メビウスの輪のようにねじれ、別の事実を映しては、再び同じところに戻っていく。
「これは映画ではない。かと言って、クリップでもないし、ビデオドラマでもなく、実験映像でもない。ジャンルが未確定なのだ」と監督自身が言うように、既存のジャンルではくくりきれない肌合いを持つ作品。しかし決して難解ではなく、不自然で尻切れとんぼでユーモラスな映像とストーリーは、確かに私達の日常とつながっている。

1998年/DV/カラー/24分
監督・脚本・撮影・編集・音楽・効果:林 拓身
ナレーション:守屋初則、長谷川恵子
出演:木村一郎、織笠恵美、加藤淳一、東村一洋、原 奈保子、堀内良昭、泉本俊介、辻下綾乃、広瀬康人、小林大高、朴 正赳、古屋広之、山岡由和、川辺菜穂、湯田英実

【貸し出し対象作品】料金:15,000円(税別)/貸し出しフォーマット:ビデオ

観客賞(東京)

『ランナーマン』

監督:中村隆太郎

3人しか部員がいない、ある高校の陸上部。大会が間近に迫っているが、リレーの規定は4人なので、このままでは出場できない。2人の先輩にとって最後の大会となるため、何としてでも部員を補充したいと、運動部中に頭を下げて臨時部員を募る後輩部員。そこに、今まで特に見たこともない、そして見るからに頼りない男が現れた。自称“生まれながらのランナーマソ”田中。陸上で身を立て、名を成し、財を築き、もてる人生を歩むという人生設計を持つこの男、「乞われて入部することに意味があり、自分から入部するなんて、ランナーマンとしてのプライドが許さないから」という理由で、これまで陸上部から遠ざかっていたのだと言う。確かに走ると速い彼は早速、部員に。しかし肝心の大会の日、田中の初歩的な体調管理のミスで、結果は惨敗。落ち込む田中を先輩がなぐさめようとするが、彼の走ることに対する勘違いはなはだしい意識を知り、逆にあきれるのだった。ランナーマンはこのまま勘違いを続け、陸上部は部員1人になってしまうのだろうか――。
ギャグ漫画をそのまま実写にしたような、テンションの高い演出が冴える。そのアイデアの数々は、一見チープだが、スピーディな切れ味とセンスで、ゴージャスにさえ感じられる。それを活かしているのは、オーソドックスなストーリーの部分で、人物描写を丁寧に押さえていること、そして「これを本当に実写で?」と考えたあとの手間暇を惜しまない仕事ぶりだろう。

1998年/16ミリ/カラー/15分
監督・制作・脚本・編集:中村隆太郎
撮影:小袋淳子 録音:鈴木正寿
出演:達 弘介、足立 学、藤原洋介、中村隆太郎

【貸し出し対象作品】料金:15,000円(税別)/貸し出しフォーマット:ビデオ

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