夏将軍

監督:木下涼子/上田啓嗣

レンタル可能

志麻子はケーキ屋でアルバイトをしている。仕事は暇で、『風の谷のナウシカ』を読んだり、ウトウトしたりしながら、閉店時間がやってくる。今日は外の看板をしまう時に、アイスを食べながら歩いている女の子と目が合った。そんな毎日。久し振りに実家に帰ると、屋上で弟が、哲学的な悩みを抱えた顔でビールを飲んでいた。中学生のくせに。弟との会話に刺激され、ひなびた島に1人で夏休みにやってきた志麻子。そこでも暇だ。浮輪に乗って海に出て、ゆられながら眠ってしまった。晴れた日にうな重を食べた。台風の日にアイスを食べた。帰る時、言葉を交わしたこともない島の兄妹が手を振ってくれた。一方、アイスを食べながらケーキ屋の前を歩いていた少女は、仕事も家事もせず、同居人の女性に「ごくつぶし」と言われながらも「ごくつぶしって何?」と聞き返す、のんきな日々を送っていた。しかしある晩、腹痛がして、布団を血で汚してしまう。翌日、お赤飯を炊いてくれた同居人は、間もなく、テーブルいっぱいのごちそうをつくり、忽然と姿を消す。1人黙々と料理を平らげながら、これまでと同じようにのんきではいられないことを、少女はうっすらと感じていた。
「夏将軍」とは、夏の空に湧く雲のこと。勇ましくも、はかなく消えていく雲に象徴されるように、夏にだけ感じる、気だるさと興奮。人生のある時期にだけ感じる、退屈と自由。女の子だけが感じる、孤独に対する強さと弱さ。そんな不確かで微妙な気分を、デリケートなまま、映像化することに成功している。

  • 1998年/40分/カラー/video
  • 監督:木下涼子、上田啓嗣
  • 脚本:木下涼子 撮影・編集:上田啓嗣 音楽:高柳嘉光
  • 出演:葉隠みどり、蔵谷貴輪、冨田恵実、流星ヒカル、澤近真由子、西内雄紀

レンタル可能作品

料金:15,000円(税別) 貸出フォーマット:ビデオ

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