風は吹くだろう

監督:白石晃士/近藤 太

準グランプリ

レンタル可能/配信有り

映画監督を志す町田は、買ったばかりのビデオカメラを回しながら家を出る。目指すのは、会ったこともない1人の男のアパート。もしかしたらそこに、自分の恋人である夕希子がいるかもしれないからだ。そして本当に夕希子はいた。男の部屋の布団の中でぐっすり眠って。責める町田、悪びれる様子もなく開き直る夕希子、飲み物を買いに行って帰ってきた男。そのやりとりを、カメラは写していく。結局、町田と夕希子は別れる。しかし、浮気した彼女も悪いが、おおもとの原因は自分にあるのではないかと考えた町田は、かつて撮ってあったビデオと、役者による再現ビデオを交え、2人の関係を見つめ直すべく1本の映画をつくろうと決心する――。
最初は、自分の恋愛を扱ったドキュメンタリーかと思わせながら、次第にフィクションとノンフィクションの境目を限りなく曖昧にしていき、観客の意識を作品の中に引きずりこむ。さらに、撮り手の立場で過去を再現すると言いながら、相手(恋人)の立場や気持ちも冷静に描いており、男女あるいは浮気する側、される側どちらにもシンパシーを感じさせる。構成も、オープニングのハンディカメラの荒々しいブレとは裏腹に、かなり緻密な計算を経た、手間のかかったもの。恋愛を題材にしていると見せながら、実は、真実を追求することの意味と残酷さを描いた高度に知能犯的な作品である。とはいえ、男性の嫉妬や未練のメカニズム、浮気性の女性がいかに浮気を重ねるかを知る上で、好テキストであることには間違いない。

  • 1998年/111分/カラー/video
  • 監督・制作・脚本・編集:白石晃士、近藤 太
  • 原案・撮影:近藤 太 音楽:小貫 誠
  • 出演:笠井暁大、松梨智子、佐野敬子、中原和宏、村上賢司、加藤栄一郎、北川さおり、古川 健、近藤 太、白石晃士

配信・放映

レンタル可能作品

料金:15,000円(税別) 貸出フォーマット:ビデオ

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