5月2日、茶をつくる

監督:小嶋宏一

グランプリ

レンタル可能

祐作は、全寮制の専門学校生。進路を決める時期になり、真剣に打ち込んできたバスケで推薦入社が受けられる可能性も出てきているが、茶畑を営む両親が自分に跡を継いで欲しいと思っているのは痛いほど知っている。そのため、休日には茶づくり名人のもとで修業を積んでいるが、はっきりとした決心はつかないままだ。八十八夜である5月2日、祐作は名人と2人、茶をつくっている。しかし、将来に対する不安や焦り、苛立ちから、昼休みに後輩を殴ってしまう。自己嫌悪に陥り、午後の作業に気もそぞろな祐作だったが、名人と息を合わせて茶づくりをするうち、次第に気持ちが浄化され、波立っていた心がおだやかになっていくのがわかるのだった。そして、つくりたてのお茶は、彼の身体と心の両方に、さわやかにしみ渡っていった。
「めったに撮影できない」という茶づくりの作業風景は、記録として珍しいだけでなく、見ているだけで一緒に作業をしている感覚になるようなリズム感があり、つい引き込まれる。「黙々と働く人のかっこよさを撮りたかった」という監督の意図を充分に反映されているといっていいだろう。シンプルなストーリーだが、茶摘みや茶づくりの様子、作業室などの風景を大切に撮ったことで、この作品ならではの清々しい空気が生まれた。特に、身体を1つのことに集中させ続けると訪れる、頭の中がからっぽになる“昇華の瞬間”を、主人公が目をやる窓の外の風景に重ね合わせたシーンで、テーマと題材が1つに融合している。

  • 1998年/25分/カラー/video
  • 監督・脚本・撮影・編集:小嶋宏一
  • 助監督:畑 康久
  • 出演:山﨑祐作、萩原 豊、澤井真也、城下輝明、永尾裕也、甲斐正剛、川谷哲也、田之上尚満、中島 毅、枦川克可、寶物雅洋、松尾 実、吉田秀智

レンタル可能作品

料金:15,000円(税別) 貸出フォーマット:ビデオ

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