釜山+山形+東京。久方ぶりに3つの国際映画祭はしごしてみました

「始まります」って、一体いつ、何が始まるの?
と我ながら突っ込みたい、長期すぎるブログ無更新でした。
いやはやお恥ずかしい...

そして、8月のPFFプレフェスティバル以来、延々と今日まで睡眠不足でふらふらですが、相変わらず痩せない。不思議。その原因は、深夜の酒盛りか?とつい思うような日々も、確かにあったこの3か月でした。ああ無情。

9/20に第35回PFFが終了し、その後始末もまだまだ継続中ながら、PFFは11/12-17の名古屋開催、12/7-20の京都開催、12/21-23の神戸開催と、ツアー準備驀進中です。
名古屋開催は、すでに詳細を発表しました。チラシもアップしてます。⇒チラシはこちら

今年の名古屋は初めて尽くし。寝転んでみてもいいPFFアワード上映もございます!
次いで、年末の京都神戸では何が起きるか、来週の発表をお楽しみに!会場ごとのオリジナルな上映を企画しています。

そして今月は、久方ぶりの「映画祭の秋」一色でした。
東京のPFF終了後、珍しく映画祭初日(10/3)から一週間、釜山国際映画祭(略称BIFF)に参加しました。今回は、昨年と違い、事前に参加申し込みをして行きましたから、ホテルもとれました。ほっとひといき。部屋での仕事もすいすい。
が、そのホテルがstar hotelと書かれているように、韓国のスターたちの宿泊場所にもなっておりまして、出待ちの人々の渦にびっくりすること度重なり、「ファン」という人たちのエネルギーに、全く関係ない私が狼狽えて落ち着かない日もありました。あの熱気を受け止めることの出来る「スター」という存在に、改めて感心するのでした。

今回BIFFへは、PFF事務局から、第22回PFFスカラシップ作品『HOMESICK』、PFFアワード2013作品『山守クリップ工場の辺り』、そして、お預かりしている『ロマンスロード』の3作品の上映がありました。日本から程近い釜山です。沢山のスタッフ&キャストがいらっしゃいます。そして、釜山の食べ物は飲み物は、安くて美味しい!
それはもう、深夜の宴会が繰り広げられましょうとも!
昨年の、『くじらのまち』鶴岡監督との二人旅とはうって変わり、映画祭のパーティー訪問より、大勢での食事のほうが圧勝した今回の釜山。それは私に、第1回(1996年)から5回くらいまでの、初期の釜山国際映画祭(昔の略称はPIFFなのでPFFと似ていたからよくからかわれました。「釜山」の英語表記は、その後PuasnからBusanに改められたのです)の日々を思い起こさせる、懐かしいものでした。

かつてBIFFは、解禁されていない日本映画と、まだ概念の薄い「インディペンデント映画」を紹介する、韓国の新しい窓となる映画祭でした。
役人から映画祭ディレクターとなったキム・ドンホさんは、数年前名誉ディレクターとなりその座を後進に譲られましたが、まだまだその存在は大きい。今日の海外への韓国映画のプロモーション成功は、ひとえに彼の功績であると、讃える声は途切れません。確かに、私も海外でその手腕を何度も目撃しました。いつのまにか韓国映画に注目しなくてはまずいぞと思わせる、そのふわりとした語り口とデータの開陳は、名人芸のようです。

近年の釜山国際映画祭は、オープニングとクロージングの"派手な"セレモニーがクローズアップされがちというか、視察者はそこばかり行く傾向にありますが、「それよりも、ドンホさんの<世界各国映画祭へのひとり旅>についていってみるというのはどうか?」とよく考えます。自国映画の宣伝マンとして、映画祭の資金調達の名手として力を持つ方であり、学ぶところは多い。今年もある作品(ドンホさんが学長を務める新しい映画大学院の初のメジャーとの共同製作作品『10minits』のお披露目があったのです)のこじんまりとしたパーティーでお会いしましたら、いつものように、PFFの運営状況を聞かれたあと、「BIFFは、来年国家予算が大きく削減されるのが決定しているが、それと同じというか少し多いくらいの一般企業のスポンサーがつくので、何も変わらない」と自慢された私でした。まあ、淡々と事実を話されただけなんですが、この、淡々とゆっくり事実を話す、というところに、何かの魔力がある感じがします。

しかし、17年前、始まったばかりの釜山国際映画祭では、「あらゆる飲み会に現れては、その代金を払ってくれる素敵なおじさま」として、印象深かったのです。「生活費は妻の収入、自分の収入は全部映画祭期間の飲み会の支払いに」というのは、有名な話でした。
...「ああ、そんなことをしてみたい」と、思ったことを思い出す、宴会復活な今年の釜山の夜でした。※東京では、飲食費の桁が違うので、夢のまた夢であります。

で、そのキム・ドンホさんを追いかけたドキュメンタリーを、モフセン・マフマルバフ監督が撮ったと聞いてびっくりしたのですが、伺いました、上映に。
最初に、マフマルバフ監督から、何故ドンホさんを撮ろうと思ったのかという話があり(「いつも静かに微笑んでいる、こんな人になりたいと自分が願っているから」)上映。その後、そこに出てくる、「人生を1:役人期、2:映画祭ディレクター期、3:アーティスト期として、現在の3の段階で、映画監督に挑戦した」そのキム・ドンホ監督デビュー短編『Jury』 の上映が続いたのです。
『Jury』。ご自身の数ある審査員体験からヒントを得て作ったというこの短編。審査員役のひとりに、日本からイメージフォーラムの富山さんが出演しておられるほか、映画祭関係者ならくすりとくすぐられるマニアックなキャスティングがされています。(日本ではすでにイメージフォーラムフェスティバルで上映されました)

さて、上映が終了し、質疑応答になりました。
最初に手をあげたのは、韓国映画界最大の巨匠イム・ゴンテク。びっくり。次は、ジャ・ジャンクー。びっくり。みんな嬉しくてしょうがないという、笑顔に溢れた上映会。最後には、映画祭に参加してる全イラン人監督はじめ、ゲスト監督大集合、ここに爆弾投げられたら困るというメンバーでの記念撮影が始まったのでした。
(勿論、写真を撮る習慣のない私は「あら~」と眺めているだけでした。すいません。)
いや~、数ある映画祭体験の中で、「ああ、映画祭というのは、監督のためのオアシスなんだなあ」ということを、静かにゆっくり骨身に沁みさせられるこの上映会でした。

昔、大島渚監督から、「かつてカンヌ映画祭というのは、めったに会うことのできない同志たち=監督たちですね=が、リゾートで、ゆったりと、思う存分映画について語る場所だったが、今はその影もない」とおっしゃっていましたが、その「かつて」の感じ、監督たちのための理想の空間、というものをつくれる可能性のあるのが「映画祭」なんだなと、改めて思うのでした。

その会場を出て、釜山映画祭広場に行くと、監督たちの巨大なバナーがたっていました。
イム・ゴンテク、ホン・サンス、ポン・ジュノ、イ・チャンドン、黒沢清、青山真治、是枝裕和、そして、今年手形を残すニール・ジョーダン。(敬称略)
この人選、なんかすごい。彼らを含んだ、200人くらいの映画監督が集うこの場所で、このひとたちだけがこのディスプレイか~と、しみじみとした私。そのしみじみの理由を探しているところです。
(関係ないですけど、韓国に来ると「ホン・サンスごっこ」したくなりませんか?安い、煙草の吸える酒場で、焼酎を延々飲むってだけですが)

この時期、晴天が続くので有名だった釜山は台風に襲われ、暴風雨のまっただ中を歩くという、人生で初めての体験もしました。
地下鉄駅からホテルまでの徒歩15分の距離を冗談抜きで飛ばされそうになりながら「看板でも飛んできたらアウト」と怯えながら、傘崩壊、全身ぐっしょり、靴の中に雨が入って、子供の長靴遊びみたいにガポガポ言わせながら、自然の驚異を全身体験してきました。
と思ったら、次に、ようやく6年ぶりで訪れた山形国際ドキュメンタリー映画祭でも、台風に遭遇。またもやブーツがぐっしょり。釜山でも山形でも、部屋履きに持って行ったビュルケンシュトックで、足先心細く帰宅したのでした。
旅の必需品、それはいざとなったら外履きできる部屋履きですな。
ああそして東京国際映画祭(略称TIFF)も、台風襲来とのうわさ。
台風を避ける時期に映画祭開催を変えるところも出てくるかもしれない、最近の変な天候です。

TIFFでは、「日本映画スプラッシュ」と名前を変えたセクションで、PFFのグランプリ受賞作品を特別上映してくださっています。
コンペでもあるそのラインナップを拝見して、今年は相当驚きました。PFFアワード2013でもう少し枠があったら上映させていただきたかった2つのパワフルな作品を発見し、是非受賞して欲しいと願い、はっと気づくと、過去にPFFで入選なさっているヴェテランとも言える方々の作品が3本あり、同時に、実験的な若手の作品もあり、そのヴァラエティにクラクラと...・ああ、自分が審査員だったら、これは大変な悩みになりそうだ...と息を呑むのでした。

その審査員のおひとりは、瀬々監督と昨日知りました。遅い。
瀬々監督は、最近大島渚監督の再現ドラマを監督なさいました。困難な仕事だったろうと想像します。友人から借りた録画でやっと拝見した私。豊原さんの監督なりきりに感心し、合津さんのつくられたNHKのドキュメンタリーはじめ、数々の映像に心揺さぶられ、また大島監督作品をみたくなります。その友人に一緒に渡されたのが、つい最近発見され話題になった小津安二郎脚本ドラマ『青春放課後』。こちらも絶品。小津もまたみたくなります。

映画祭の話なのに、全然映画のはなしをせずにきてますね...
本日TIFF上映の、ウルリヒ・ザイドル監督の「パラダイス」三部作。
これは、今年のPFFの企画書に最初からずっと書き続けていた、上映を実現したかった映画です。最終的に他の企画に力を入れたのですが、どこかの映画祭でやってもらいたいと願っていました。そしたらここに!更に、ユーロスペースでの公開も決まったということで、嬉しくなっている私です。是非お出かけください!

それから、初めてTIFFCOM(TIFFのマーケット)にブースを出したPFFです。
便利さにびっくりしました。これまでの道順の説明も困難な東京で「何時にどこで会う?」という約束をしていた日々が、すっかり過去のものに!ただ、マーケットブースにはそぐわない、作品売り買いの話より、新人監督の紹介ばかりになるPFFですから、最後に提出する「商談の成立報告」に何を書けばいいのか当惑したりします。同時に、知らない世界を体験できた、新鮮なTIFFCOMです。

できることなら、ずっと映画祭を廻ってみたい秋。遅い夏休みのつもりでいった山形では、丸二日自主ホテル缶詰で仕事している自分に自分で呆れましたが、山形の、遮る建物のない、空と山とがすいっと目に入るあの街の感じ、観客の楽しみ能力の高いあの会場の感じが、どれだけ素晴らしいものかを改めて感じることが出来たのも、追いかけてくる仕事からくる苦しさのおかげかもとも思うのでした。

うわ~長い。
次からは、毎日少し書け!ですわね。
失礼致しました。