『なぜ君は総理大臣になれないのか』
という不思議なタイトルの映画が話題だ。
監督は大島新さん。昨年、PFFで始めた「大島渚賞」ですっかりお世話になった、大島渚監督の御子息である。
既知の方の作品は白紙状態で鑑賞する習慣のため、何も情報を入れずに劇場に向かい、驚いて劇場を出た。
誠実が服を着て歩いている。
家族に恵まれる様が、藤沢周平の時代劇のようだ。
様々な意味での衝撃作。
そして、政治家の声を、行動をこれほど見聞きすることが、まず、ない、ことを改めておもった。
翌日は、PFFアワード1992伝説の16ミリ短編『灼熱のドッジボール』でグランプリを受賞した古厩智之監督の新作『のぼる小寺さん』に。
観終わって、「ありがとう、小寺さん!」と心で叫ぶ。
自分に向ける誠意が、周りの人を変えて行く。静かで美しい映画。
その翌日は、PFFアワード1994年に鮮烈な8ミリ短編『悲しいだけ』で入選した豊島圭介監督の『三島由紀夫vs東大全共闘 50年目の真実』の公開再開に。
三島由紀夫の誠実さに脱帽する“真面目に生きたひとびと”の記録。
黒板の隅に書かれた小川紳介3部作上映教室変更の告知がくっきりと時代を実感させ、すっと背筋が伸びる。
そして翌日は、以前PFFにいた両角美由紀さんがプロデューサーとして参加したと知り『ぼくが性別「ゼロ」に戻るとき 空と木の実の9年間』へ。
13歳のときに性同一性障害と診断された小林空雅さんを追いかけたドキュメンタリー。
男と女という二分が必要なのは誰なのか、何のためなのか、同時に、属性や区分を当たり前とする、あるいは、必要とするひとたち、について考える。そして、戸籍の性別を変える条件が“肉体”であることの由来を勉強せねばと気づく。
4作を通して、日常の暮らしのなかで、考えていることをじっくり話す、あるいは聞く機会は少ないこと、映像に記録することの力を認識した。
話すこと、聞くことを、もっと日常の習慣にできるといいのに・・・
随分以前に、桃井かおりさんから、(少女時代の英国留学から)日本に戻って、同級生との会話にとても苦労したので、遂に「話し方教室」に通ったことを伺った。その結果、自分が何を考えて今このことを言っているのか、を事細かに説明する習慣がついた。とおっしゃっていたのが強く印象に残っている。
自分に対する「なぜ?」他者に対する「なぜ?」をじっくり聞いて、話して、という習慣が拡がるための<時間>のゆとりは、この状況ではもしかすると獲得しやすくないだろうか?
・・・というようなことをぼんやり考えていたら、『なぜ君は総理大臣になれないのか』が、オンラインで上映され、上映後には被写体である小川淳也議員も登場してのトークが決定したと!そのうえ、バリアフリー上映実行と!
いろんなことが出来るなあオンライン上映・・・とびっくりしている日進月歩の上映環境(余談ですが、我々も、初めて挑戦した「PFF・オンライン映画祭」で随分いろいろ学びました。)
8月1日土曜日の19時から上映開始、21時からトーク開始。チケット購入者は翌8月2日24時までのアーカイブ視聴が可能とのこと。
あの映画を見終わったら、そこに本人がいて、監督や政治ジャーナリストと話し始める。そのトークを、自分の居心地のいい場所で聞いていられる・・・凄いことが実現しますね、オンライン。そしてそのトークのあとには、更なる会話が自室で生まれること確実な『なぜ君は総理大臣になれないのか』です。
【『なぜ君は総理大臣になれないのか』オンライン上映はこちら】
第42回ぴあフィルムフェスティバルは、予定通り9月12日から26日まで国立映画アーカイブを会場に開催。オンラインでの企画もすすめています。
どちらも乞うご期待!
8月中旬の全プログラム発表目指し、鋭意準備中です。