みたい映画をみることはそれほど簡単ではない
前回の続きみたいな始まりですが、実はだいぶ違う今回。
釜山国際映画祭では、「日本語字幕付きで上映される、東京FILMEXや劇場公開でみよう!」と後送りにし帰国した作品多く、山形国際ドキュメンタリー映画祭では、6年ぶりの参加も嬉しく、マルケル特集を全力でみる気合も含むすべてを仕事に回すことになる、哀しい夏休みとなり、東京国際映画祭では、チラシにものすごく力強くマークをつけた映画たちよさようなら...逃したあの映画、この映画を、今、映画祭カタログをみながら肩を落とし呼びかけてみて、連絡網が便利になって、いつでもどこでも簡単に仕事場になるこの悲劇よ!と、色々考える3つの映画祭体験。同時に、一期一会の映画体験を改めて覚醒させられる体験でもあったな、と。
今回は、ずっと気になっている「映画をみるチャンス」についてすこし
渋谷TSUTAYAの4階にPFFの棚があります。
インディペンデント映画の紹介に力を入れたいというお店の意向を受け、自主映画を広く紹介するコーナーとして始まりました。PFFの入選作品がDVD発売を実現できた時期もあり、「自主映画」が並ぶ棚として展開していたのですが、ある日、
「映画をつくるということは、映画をみるということと切っても切り離せない」
ということを、この、映画の溢れる夢のような空間で伝えていくことはできないだろうか?
と、改めて想いが高まりました。
そして、およそ4年前から、映画監督を中心としたクリエイターに、あるテーマに沿って、ご自身の心を震わせた作品を挙げていただく、というコーナーへと移行してきました。
以来、隔月でテーマを替え、年に6回、各回約20作品づつを紹介させていただいております。
これまでこのコーナーで紹介してきた作品は、昨年からPFFの映画祭カタログに記録することにしました。お読みいただけると嬉しく思います。
特に、今回、第35回のカタログは、上記TSUTAYAコーナーで紹介してきた作品のみならず、PFFが1976年から現在まで映画祭を通して紹介してきた作品も網羅した、一大歴史記録となっております。手前味噌ながら、相当貴重な映画資料になると考えます。
さて、以下の作品リストをご覧ください。結構な数にのぼります。
*並び順は、アトランダムです。
「阿賀に生きる」1992年/監督:佐藤真
「そして人生はつづく」1991年/監督:アッバス・キアロスタミ
「愚かなる妻」1921年/監督:エリッヒ・フォン・シュトロハイム
「サンライズ」1927年/監督:F・W・ムルナウ
「周遊する蒸気船」1935年/監督:ジョン・フォード
「生きるべきか死ぬべきか」1942年/監督:エルンスト・ルビッチ
「レディ・イヴ」1941年/監督:プレストン・スタージェス
「カルメンという名の女」1983年/監督:ジャン=リュック・ゴダール
「クリスマスキャロル」1970年/監督:ロナルド・ニーム
「天使」1982年/監督:パトリック・ボカノウスキー
「修羅」1971年/監督:松本俊夫
「プレイタイム」1967年/監督:ジャック・タチ
「盗まれた飛行船」1966年/監督:カレル・ゼマン
「8 1/2」1963年/監督:フェデリコ・フェリーニ
「オーソン・ウェルズのフェイク」1974年/監督:オーソン・ウェルズ
「ストーカー」1971年/監督:アンドレイ・タルコフスキー
「カメレオンマン」1983年/監督:ウディ・アレン
「?嶺街少年殺人事件」1991年/監督:エドワード・ヤン
「エル・パトレイロ」1991年/監督:アレックス・コックス
「フェイシズ」1968年/監督:ジョン・カサヴェテス
「レニングラード・カウボーイズ・ゴー・アメリカ」1989年/監督:アキ・カウリスマキ
「女は女である」1961年/監督:ジャン=リュック・ゴダール
「コミックストリップヒーロー」1967年/監督:アラン・ジェシュア
「ハート・オブ・ダークネス コッポラの黙示録」1991年/監督:ファックス・バー、ジョージ・ヒッケンルーパー、エレノア・コッポラ
「金融腐蝕列島[呪縛]」1999年/監督:原田眞人
「愛と哀しみのボレロ」1981年/監督:クロード・ルルーシュ
「鬼火」1963年/監督:ルイ・マル
「パリ、テキサス」1984年/監督:ヴィム・ヴェンダース
「秘密と嘘」1996年/監督:マイク・リー
「霧の中の風景」1988年/監督:テオ・アンゲロプロス
「ZOO」1985年/監督:ピーター・グリーナウェイ
「女相続人」 1949年/監督:ウィリアム・ワイラー
「クローズ・アップ」 1990年/監督:アッバス・キアロスタミ
「Unloved」2001年/監督:万田邦敏
「レディバード・レディバード」1994年/監督:ケン・ローチ
「絞死刑」1967年/監督:大島渚
「ウディ・アレンのザ・フロント」1976年/監督:マーティン・リット
「街の灯」1974年/監督:森崎東
「赤い砂漠」1964年/監督:ミケランジェロ・アントニオーニ
「情事」1960年/監督:ミケランジェロ・アントニオーニ
「奇跡の丘」1964年/監督:ピエル・パオロ・パゾリーニ
「ノスタルジア」1983年/監督:アンドレイ・タルコフスキー
「リリー・マルレーン」1981年/監督:ライナー・ベルナー・ファスビンダー
「ケレル」1982年/監督:ライナー・ベルナー・ファスビンダー
「カリフォルニア・ドールズ」1982年/監督:ロバート・アルドリッチ
「動くな、死ね、甦れ!」1989年/監督:ビターリー・カネフスキー
「恋々風塵」1987年/監督:ホウ・シャオシェン
「こわれゆく女」1975年/監督:ジョン・カサヴェテス
「にっぽん昆虫記」1963年/監督:今村昌平
「ケス」1969年/監督:ケン・ローチ
「愛を乞うひと」1998年/監督:平山秀幸
「秘密と嘘」1996年/監督:マイク・リー
「人間蒸発」 監督:今村昌平
「ミツバチのささやき」 監督:ビクトル・エリセ
「オープニング・ナイト」 監督:ジョン・カサヴェテス
「友だちの恋人」 監督:エリック・ロメール
人生変わるかもな必見作品群としか言えないタイトルが並んでおりますが、これらは全て、TSUTAYA渋谷店での在庫がVHSのみだったものです。
「DVDでのレンタルが、全ての映画で実現しているわけではない」
という現実を強く印象付けるリストと言えはしないかと、この2年間、ふと気づいて記録してきました。
同時に、クリエイターの皆様から作品リストをいただいたものの、レンタルされていない、という場合も、上記リストほど多くはありませんが、存在します。しかし、VHSプレイヤーを処分した人の多さを痛感する昨今、DVD以外は再生不能な環境は驚くほど多いかと...その場合、VHS在庫はあっても無いと同じ環境の方がいるという現実が...
「レンタルがなければ、セルのDVD購入、TV放映のチェック、映画館での上映チェック、あらゆる方法を試み、追いかけてみる。それでもだめなら、映画祭チェック、それでも無理なら書籍でその映画を読んで、見た気になってみる」
そんな「映画を必死にみる」という感覚は、とても楽しい。なのに、近年その楽しみから遠ざかりつつある自分に喝を入れてみる、このリスト。これらの作品を観る機会に恵まれていた過去の自分の幸福。「初心忘れずに」とそっと自分につぶやくのであります。
気付けば11月。
今月は名古屋へ参ります。「PFFin名古屋」。チラシ製作時にはまだ来場監督の確定ができませんでしたが、今、続々と来場予定の報が入っています。随時HPで発表します。
初めての試みを満載した今年の名古屋開催。マラソン上映とか、寝転び観賞とか、2年分一挙上映とか、実験冒険開催です。
楽しい思い出づくりにご参加いかがでしょうか?
12月には、京都と神戸での開催です。
京都では、8mmフィルム作品を、8mm映写機で上映する特別プログラムを実現するべく、映写機を東京からも運びます!
神戸では、PFFのプログラム終了後の夜は、ファズビンダー作品の上映が続くという、個人的に楽しみなこともございます。
間もなくプログラム発表する「PFFin京都&神戸」も是非ご期待ください!