入場料金の適正価格とは・・・・

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先週末の神戸&名古屋同時開催を最後に、第31回ぴあフィルムフェスティバルの上映が全て終了しました。
一年中映画の上映が映画館と同等に続けられている、映写やスタッフの装備がしっかり整った会場である「神戸アートビレッジセンター(KAVC)」があるから、2都市の同時開催を展開出来たので、KAVCには本年も感謝感謝です。

PFFの開催会場は、映画館が京都の「京都シネマ」しかありません。各地の公共ホールての展開が中心です。
東京は国立のフィルムセンターですし、仙台、名古屋、神戸、福岡は、県や市の公共施設のホールです。もうかれこれ10年、これらのホールで、担当の学芸員の方々と共に開催していますが、
その建物の設計意図や、出来上がったものの使い勝手、その後の運営体制など、個々の運営団体の哲学や状況が伝わってきて、全国各地の「映像文化のポジション」を、毎年学んでいる感覚があります。これは、かなり貴重な体験ではないかと感じています。

また、映画館として機能する神戸以外は、皆、一般興行を行わないため、基本的な上映料金の設定が低くなっています。そうすると、何が起きるかというと、通常料金として観客の中にインプットされた料金以上の値段設定に対して、クレームが出ます。
つまり、PFFの料金は高い。安くしろ。というクレームです。
映画館で開催される映画祭は、通常の入場料金より多少安く設定する場合が多いので、その類のクレームには繋がりませんが、逆に、通常料金より高くなるイベントとなると、主催者側からすると、不利です。
本年は、特にその不利な部分を感じさせられる場面が多かったように思います。

そんなこともあって、入場料金について考える機会が多かった秋なので、いくつかの実験をやってみようと考えました。
まず、一日じゅう、正価でロードショーをはしごする。という実験をしました。
あまり時間の組み合わせがうまくいかず、一日4作品しか廻れませんでしたが、1800円×4作品で7,200円。晴れた日曜日、この金額で出来る他のことをあれこれ考えてしまう金額でした。
しかし、よく耳にする、日本人の平均的な映画館に出かける回数は、一年に1作品というデータが正しいのだとすると、私はそのたった一日で4人分を消化したのです。
映画祭の観客には、年に数百本を"スクリーンで"観るという人もいます。レンタルビデオやDVDではなくてです。そんなことを思い出すと、どう考えても、一年に一本もみない人の数は膨大であろうと思われます。
ただ、広い意味で言えば、映画で食べている私たちですから、映画にそれを還すのは、至極当然のことと思えます。映画で食べてる人が映画館で映画をみることを習慣にするだけで、かなりの観客動員が図れるのではないかと感じました。

その後、レディースデイや映画の日、前売り券での入場、映画館ではない場所での上映のはしごなど、プランしていますが、慌しくしてしまい、まだ実行できていません。一日4作品をはしごするシリーズを出来るだけ試し、映画の適正価格についてもっと考えてみたいと思います。

かつて、映画は散髪代と同等価格が設定の基準だったそうです。
その散髪代も、現在はさまざま。
あらゆることに、新たな基準が必要になってるなという感を、ここでも強くしました。

神戸の会場、神戸アートビレッジセンターは、淀川長治さんのふるさと新開地にあります。かつては映画館だけでも10軒が林立する神戸一の繁華街だったのですが、今は昔です。
近所の洋食屋「一平」が美味しいです。