鶴岡慧子監督×小川努カメラマン×柳島克己撮影監督「デジタル撮影で手に入れた新しい表現の選択 vol.02」(Vol.1)

インタビュー

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登壇:鶴岡慧子監督(以下、鶴岡監督)、小川 努カメラマン(以下、小川氏)、柳島克己撮影監督(以下、柳島氏)
進行:荒木啓子PFFディレクター(以下、荒木D)

今回お届けするのは、【第28回東京国際映画祭 PFF映画製作特別セミナー supported by CINEMA EOS SYSTEM】。前回のPICKUPで掲載した鼎談メンバー3人が再び結集し、このセミナーのために鶴岡監督と小川カメラマンが手掛けた短編『焦がれる鼓動』を題材に、より具体的なデジタル撮影のテクニックをご紹介していただきました。

カメラを回す前にやるべきこと

『焦がれる鼓動』監督:鶴岡慧子

鶴岡監督の故郷で撮影された短編作品(発売中の『過ぐる日のやまねこ』DVDに収録)。出演:山田杏奈、鈴木美羽、森 海哉、小久保由梨。
© 2015 PFF映画製作特別セミナー実行委員会


荒木D:このセミナーの為に撮りおろした鶴岡慧子監督の短編『焦がれる鼓動』についてどういうふうに生まれてきたのでしょうか。

鶴岡監督:第2回目のセミナーに向けてキヤノンC100 Mark IIを使い短編を撮る、というだけで特に縛りはなく、言ってみればゼロから作ることになりました。『過ぐる日のやまねこ』のプロデューサーの天野さんから「意外な鶴岡さんを見たい」と言われ、「若い女の子を取りたい、学校を撮りたいな」と、出し惜しみしていたちょっと恥ずかしい部分というものを積極的に出していこうと撮りました。脚本が出来上がった段階で小川さんと話を始め、撮影場所もここだったらOKを出してくれるだろうと思い、一番撮影しやすい長野県上田市の母校で撮りました。

荒木D:脚本、撮影場所が決まっていた段階で、カメラマンとして何から始めましたか。

小川氏:当初、夜の湖の設定だったんですが、日数的に少ないし(準備をいれて4日間)、芝居場が水場の時点で、役者の近くでは照明が立てられない、離れたところから照明を当てるのであれば強いライトをたかなければいけないが予算が限られているので、何とか「湖の上」、「夜」というのは止めてくれないかという話をしました。

鶴岡監督:消極的な話に聞こえますけどそうではなく(笑)、昼にできませんかと言われたので、私としてもそこまで夜にしがみついていたわけではないですし、最後の台詞で「これ季節外れだね」と言うのでそもそも場違いであっていい、というのが私の中にあったので昼間の設定にしました。脚本を書くときは色々な制約はいったん置いといて出してみるというか。それで実際、撮るとなったら、後で一回相談して考えてみようという。

撮影する際に気をつけていること

左から鶴岡慧子監督、小川 努氏

荒木D:設計図としての脚本と、現実的にするためのそこからの話し合いはまた別だと。そのときに、カメラマンとしてそれを実現するために特に気をつけていることはありますか。

小川氏:自分が田舎の出身なので、地元から東京に出てくる時に感じる視界が開けていくような、田舎の単純な風景から、コマゴマとした情報がガーっとある都会の風景に変わっていくというか。単純な意味でのひらけている、狭苦しいというものではなく、画面の中身から間接的に感じられる広さというものにすごく興味があって、そんなことを考えながら撮っています。映画の撮影の際に多くのカメラマンの方がまず考えることだと思うのは、映画の中で世界観が破綻しないこと、1本の物語の邪魔にならないようなレベルで世界観を統一するということだと思います。僕の場合はその世界観の統一感を考えたときに、先に考えることは色味ではなく、先ほどの意味での広さみたいなことを気にします。

荒木D:お互いが映画を撮ることについて事前に話し合っていますか?

鶴岡監督:小川君は撮影に入る前に必ず「すごく抽象的なレベルでいいのでどういう心積もりで撮ればいいのか教えてください」と言いますが、私はイメージでつかんでいきたいタイプで、あまり言葉で言いたくないし、言うと固定されちゃう気がして嫌だなというのがあって濁しているんです(笑)。

小川氏:今回も答えてはくれませんでしたね。それで、これって官能的な話だよねって聞きました。

鶴岡監督:官能と言ってしまうと…なんですが、中学生に設定したということで、すごく危うい、どこか艶のあるものが撮りたいというのがあって、そこには素直にやろうかなと思い、オープニングのカットは胸元のアップで始めました。内科検診なのであたり前の動作なんですが、見る人にとっては少しエロティックに見えるというか、そういうものを中学生で撮ろうと。