No.43:香港アジア映画投資フォーラム(1/3)

海外レポート

香港アジア映画投資フォーラム
Hong Kong - Asia Film Financing Forum(HAF)

文:北川 仁(PFFアワード2010『ポスト・ガール』、2011『ダムライフ』監督)

これまで主に「監督たちが参加した映画祭の体験記」という形でお送りしてきた本コーナーが、今回より少しリニューアル!

昨今、“映画祭”というものの役割が膨らみ続け、映画と人との交流が濃縮されて行える場所ならではの多機能化が進んできています。映画の上映、コンペティションの実施、それらに絡めての公開宣伝の大規模化、マーケット設置による映画の売り買い、さらに近年では、映画の企画という、まだかたちにならない、具体的にはみえないものの紹介や、映画の撮影誘致も活発に行われています。
そう、映画祭は、作品だけでなく、人も企画も国境を軽く越え始めているのです。そんな映画祭の現況をレポート形式でお伝えしていく予定です。

第一弾は、北川仁監督が参加した「香港アジア映画投資フォーラム」。北川監督が体感された「企画コンペに大切なこと」とは!?

2010年と2011年にPFFに参加いたしました北川仁と申します。
今年の3月、香港国際映画祭併設のマーケットHong Kong - Asia Film Financing Forum(HAF)の企画マーケットに選出され、参加してまいりました。
僕が参加したのは、HAF Projectsと呼ばれる部門でありますが、これは、世界各国から応募のあった企画の中から選出されたものに(今年は25企画が選出されました)、各国のバイヤーや出資者などとのビジネスマッチングの機会と共に、HAF Awardsなどの賞及び賞金を競う機会も与えられる、いわば、企画マーケットであると共にコンペティションでもあるような由緒正しき部門であります。で、今回、どういうわけか、僕がそれに参加させていただける幸運を得ましたもので、緊張や畏れ多さの上に図々しさを塗りたくって精神武装し、いけしゃあしゃあと参加してまいりました。
このレポートが、多くの方の参考になるようでしたら、幸いであります。

会場外の壁に貼り出されている、選出された企画のポスター写真。北川監督の『Dance of Death』も、もちろん掲示されています。
選出される企画と滞在スケジュール

まず、僕が今回参加したHAF Projects部門では、選出される企画の段階において、様々な種類があります。それはたとえば、編集を終え、各国での配給を考えている段階の企画、撮影を終え、ポスプロをどこで行うかを考えている段階の企画、脚本制作を終え、出資者や制作会社を募っている段階の企画、等々であります。僕の企画は、ただプロットがあるだけ、というかなり初期段階のものであったため、選出自体がそもそも寝耳に水状態でありましたが、とにかく、選出される企画には、そういった様々な段階の違いがあるわけです。⇒HAFで紹介された北川監督の企画

また、その予算規模も様々です。僕の企画は他の企画からしますと、予算の桁がだいたい一桁は違うような状態でありまして、非常に萎縮しましたが、本当に様々な規模の企画が選出されてまいります。
上記2点を鑑みて、さらには内容・監督の過去作などから総合的に判断し、興味を持ってくださった出資者の方・制作会社の方・配給会社の方などがアポイントメントをとってくださり、マーケット内に設置されたブースで我々企画者らと詳しい話をする、おおまかに言って、マーケット内で行われることはこのようなことであります。

このように書きますと、一日暇になることもあるのではないか、と思われる方もいらっしゃられるかもしれませんが、そもそもHAFには多くの映画関係者の方々が集まっておられますし、また、HAFのスタッフの方々は非常に丁寧で優秀であるため、アポイントのスケジュールを、企画の内容等に合わせて見事に組んでくださります(これには僕と同伴してくださったプロデューサーの方も絶賛といいますか、大いに驚いておりました)。ですので、暇になることはまずありえません。実際、僕が参加した三日間も、ほとんどの時間が埋まっている、非常に有意義な時間となりました。本当に、HAFのスタッフの方々には心の底から感謝いたします。