No.7:『はっこう』in香港インディペンデント・ショートフィルム&ビデオアワード

海外レポート

日本国内のみならず、海外の映画祭でも上映される機会が多くなったPFFアワード入選作品&PFFスカラシップ作品。このページでは、そんないろいろな映画祭に招待された監督たちにも執筆していただいた体験記を掲載します。

PFFアワード2006 グランプリ受賞『はっこう』in 香港インディペンデント・ショートフィルム&ビデオアワード (香港:2007年3月16日~25日)

授賞式での熊谷監督

授賞式での熊谷監督(右)。

3月下旬、初めてやって来た街、香港。
人、言葉、食べ物、乗り物…あらゆる物が多量で過剰で超高速。
とかく「新しい物好き」と聞く香港ッ子の、その旺盛な好奇心が狭い土地から溢れ出てニョキニョキと隆起し、あの天を突く高層建物群を生み出したのでしょうか?
いくら地震がない土地かも知らんが、日本人の目にはどのビルもどう見ても高すぎ!細すぎ!!
全般的にこの街、極端過ぎ!です。
駅のエスカレーターなんてせっかち関西人もびっくりのメチャ速やし。

だけど、歴史に培われた絶妙のバランス感覚なのか、忙しなく目まぐるしいけど、急かされる不快感は全くなくむしろ躍動感が心地良い。街自体の懐が深かいというのか、度量が大きいというのか。

今年で12年目というifva(HONG KONG INDEPENDENT SHORT FILM & VIDEO AWARDS)も、そういう香港らしい、大らかで、熱い映画祭でした。

『はっこう』が参加したASIAN NEW FORCEという部門は創設されて4年目の新しい部門で、香港以外のアジア各国から11本の作品がエントリー。アニメーション、ドキュメンタリー、実験的映像、ドラマ・・・内容もバラエティに富み、クオリティもなかなか高い。意外と言っちゃナンだけどアジア特有の熱く土臭い感じよりむしろ、シュールでクールな印象の作品が多い。とは言え、ゲイのアダルトビデオ男優が主人公のタイの作品や、山岳地帯の少数民族を取り上げた中国のドキュメンタリーなど、しっかりとお国ぶりが表れている。台湾のハンセン病サナトリウムを取材したドキュメンタリーには「日本統治時代」などという文言が出てきてドキリとしたりも…。

いろんな国で、いろんな思いで、「自主エイガ」をたくさんの人が作ってるんだな。それだけで嬉しくなります。なんだか胸が熱くなる。

授賞式の風景

授賞式の風景。

全員揃って記念撮影

全員揃って記念撮影。

そんな中で『はっこう』がどんな風に受け止められるのか?!
超緊張で迎えた上映でしたが、かなりの好反応に一安心。
声を上げて笑って貰えるのはやっぱり嬉しい!…ちょっと意外なシーンでだったりもするんだけど、それもやっぱりお国柄と納得。主人公の内向していく湿っぽい心理は日本人特有かとも思っていましたが、その部分に強い共感を得られたのも意外な感動でした。
やっぱり、映画ってすごいなってあらためて実感。
もちろん英語字幕があるのだけど、でも、画が、声が、表情が、音が、たぶん言葉を超えて確かに何かを伝えてくれる。感じさせてくれる。

翌日の授賞式で『はっこう』はASIAN NEW FORCE部門のスペシャルメンションを授与されました。なにより嬉しかったのは、他の監督さん達がかけてくれた言葉です…英語だったけど。
「とても良かったよ!演技が素晴らしかった!(たぶん)」
「次回作も是非見たい!(たぶん)」
「これからも作り続けてね!(たぶん)」
これからも映画を作り続けていくための力をたくさん貰った気がします!!

細長い古びたビルのてっぺんの一室、なぜだか日本の古い歌謡曲が流れるゆる~い雰囲気のクロージングパーティ、タイの、韓国の、シンガポールの、中国の、台湾の…アジアの若い監督さん達とビールとスプライトを酌み交わしながら、夜は更けて行く。『はっこう』と私をここに連れてきてくれたを全ての人々に深く感謝です。

文:『はっこう』監督 熊谷まどか