No.3:『つぶろの殻』in ニッポンコネクション

海外レポート

日本国内のみならず、海外の映画祭でも上映される機会が多くなったPFFアワード入選作品&PFFスカラシップ作品。このページでは、そんないろいろな映画祭に招待された監督たちにも執筆していただいた体験記を掲載します。

日本国内のみならず、海外の映画祭でも上映される機会が多くなったPFFアワード入選作品&PFFスカラシップ作品。このページでは、そんないろいろな映画祭に招待された監督たちにも執筆していただいた体験記を掲載します。

“ニッポンコネクション”の旗がなびく会場入口。

“ニッポンコネクション”の旗がなびく会場入口。

ニッポンコネクションは、6年前からフランクフルトを拠点に日本映画、特に新鋭監督の作品に焦点を当て、ドイツを中心とした映画ファンに紹介するヨーロッパ最大規模の日本映画祭である。

その映画祭に、『堤防は洪水を待っている』(Waiting for the Flood)、『つぶろの殻』(TSUBURO)の2作品が上映される事となった。自作としては、『髪の毛の河』(2003年)、『The record of the cry from the deep sea』(2004年)に続き、3度目の出品となり、今回、初めて映画祭を訪れた。

4月13日。関西空港からソウル経由でフランクフルトへ。
飛行機は1時間ほど遅れて到着した。ホテルに寄る事もなく会場へ直行。
会場では開会宣言が行われていて、長旅の疲れも抜けぬうちに22時から1本目の作品『堤防は洪水を待っている』の上映が始まった。

様々なポスターが貼ってある会場前フロア。

様々なポスターが貼ってある会場前フロア。

上映後、観客からの質問を受ける山田監督(中央)。

上映後、観客からの質問を受ける山田監督(中央)。

平日の夜という事もあり空席もあったが、最後まで観てくれた観客の方々と、
「主人公の付けている鉄仮面の意味は?」
「この作品では主人公が人間性を失い心を隠してしまう、表情を失うという所で鉄仮面を用いた」
などの質疑応答。
終了後、ロビーにて再度、質問をくれた男性と話をするが、お互いに英語が話せず、
何とか「16日に上映の『つぶろの殻』も観てください」と、伝えるのが精一杯だった。
やっぱり、言葉の壁は大きいと痛感。

ニッポンコネクションの会場では、映画だけでなく、日本の文化を紹介するスペースもあり、太鼓や着付け、指圧、書道なども体験でき、お寿司もかなり美味かった。
去年訪れたバンクーバー国際映画祭とは、また違ったアットホーム感がありおもしろい。

また、大きい本屋には日本の漫画がたくさん置いてあり、会場でもアニメーション作品は人気があった。
中には、コスプレをしている学生がいたり、「漢字」の刺青をしている人もいた。
会場を訪れている人は、皆日本文化に興味があり「漢字」の意味や日本の憲法、政治についての質問も受けたり。日本人の私より日本を知っているかも。

4月16日、22時から『つぶろの殻』の上映が始まる。
遅い時間帯に心配していたが、会場は観客で埋め尽くされた。
言葉も通じない人々が、息を飲んで見つめている心地よい静寂。
誰一人立ち上がる事無く、無事上映は終了した。

山田監督が踊り狂ったというパーティ会場。

山田監督が踊り狂ったというパーティ会場。

上映終了後の質疑応答では、「カタツムリの意味は?」や「影響された作家は?」等の様々な質問を受ける。
一番多く質問をくれた男性も映像の仕事をしているらしく、大変興味を持ってくれた。
彼とは、終了後も長々と、お互いが今まで撮ってきた作品の事などについて話し、「また来年会いましょう」と硬く握手を交わし別れた。
主人公の内面や精神をより深い所まで観てもらえ、伝わった事は嬉しくこだわって作った甲斐があった。
日本での質疑応答では、技術面の質問がほとんどだったが、バンクーバー国際映画祭と同じように、ここでも精神的な質問が多かった。

上映が無事に終わり、調子に乗って会場内でのパーティーに行き、ビール瓶片手に踊り狂った。ドイツだけに、ビールがうまいんです!

その後、日本人より日本人らしいドイツ人たちの中で、ソーセージに埋もれ、
「来年もまた来るぞ!」
と叫んでいたのは、記憶にない……。

文:『つぶろの殻』監督 山田雅史