PFFアワード2012入選作品海外へ

一昨日は、招待作品部門で上映する『リルウの冒険』が、海外でグランプリなどを受賞した速報を、昨日は、『贖罪』のヴェネチア上映ヴァージョンをPFFで上映するお知らせをさせていただきました。

海外の映画祭話題が続きましたので、今夜は、その話題の最後を締めくくる(情報解禁許可も出ましたので)「PFFアワード2012入選作品の海外からの招待」を発表させていただきます!

カナダ・バンクーバー国際映画祭のコンペティションに、『魅力の人間』二ノ宮隆太郎監督と、『リコ』弓場絢監督が招待されました。更に、招待作品として、『故郷の詩』嶺豪一監督が招待されました。
そして、韓国・釜山国際映画祭のコンペティションに、『くじらのまち』鶴岡慧子監督が、招待されました。
4作品の監督みなさんは、PFF終了から間を置かずに、慌ただしく各映画祭へと向かう計画です。
おめでとうございます。

先日、ある人から「PFFの作品、いつもバンクーバーと釜山いくね~。レギュラーだね~」と言われました。
そうですね。バンクーバーと釜山、よく招待くださいます。なぜなら、この2つの映画祭は毎年PFFに「英語字幕なしでも、みたい!」と熱心に訴えてくださるからです。
基本的に、国際映画祭へ出品するには「英語字幕版のプレヴューDVDをつくる」ことは必須です。字幕なしの映画を受け付けてくれる可能性は、限りなく低い。むしろ、字幕無しは常識はずれの行為です。その「常識」をどこかに置いてでも、映画を探したいという映画祭の情熱に応えるべく、同時通訳やストーリーテキスト作成など、字幕なしを克服する術を試みているPFFです。

翻って、プログラマーやディレクターを世界各地に送ることができる映画祭はそう多くありません。来日する人たちに、「日本の自主映画は宝がいっぱいあるらしい」ということを知っていただくこと。それが私たちの仕事だなあと思っています。

さて、今、PFFは開催準備に粛々と取り組んでいます。
現時点での私の最大の悩みは、「どうも『天国への階段』のプリント状態がよくない」ということです。
今回も世界中に問い合わせているプリントの有無。唯一確保できていたものは、褪色していることが日本に着いていきなり発覚。そんなこんなで、未だ探し続けていますが、世界はすっかりDCPに模様替えなので、「DCPで上映できないの?じゃ、DVDとかブルーレイは?」と親切に言ってくださるのが泣けてくる。「フィルムセンターだから、フィルム上映なんです。監督はフィルムでつくったので、フィルムがあるかぎり、フィルム上映なんです。」と毎回のご説明。
そして、今年の発見は、なんと、レンタル代が、フィルムよりDCPが高くなったことでした!
いまや「フィルムで上映したい~」と世界中に訴える役割は私たちの肩に?とも感じて、すっかり驚いています。

そんなこんなで、まだまだプリント探しが続く開催2週間前。
到着してみないと状態がわからないというのが、毎度毎度の悩みのたねでもありますが、かといって、ニュープリントがみつかるような幸運がそうあるはずもなく(ダグラス・サークのときは、ユニバーサルの倉庫火災で焼失した作品のニュープリントをつくらざるを得ない状況がユニバーサルにあり2作品が新しかったのですが・・・)同時に、褪色していても、それはフィルムの存在証明でもあるので、頓着されないのが当たり前なのも再確認するのでした。
確かに、フィルムは、時が経って、傷がついても、コマが欠けても、色が落ちても、必ず映る。一方、デジタルは、いきなり映らなくなる。そこが大きな違いです。

そして、フィルムの魅力は、どんな状態だろうと、見ているうちにどんどん没頭できること。私たちの想像力の増幅装置となってくれるフィルムの回転。たとえば、ロバート・アルトマンの『ギャンブラー』は、もとはシネスコなのにスタンダードにトリミングされた褪色フィルムしかこの世に存在しなくなってました!が、それでも、私たちは確かに映画を掴み、映画に心を掴まれたのを覚えています。

・・・ああ、フィルムに関する思い出は尽きません。
上映するたびに劣化していくフィルム。その楽しさ体験しておられない方に、PFFができるだけ長く伝えたいなあフィルムの手触り・・・と、そんなことを思いながら、心を落ち着かせるために、タランティーノの『イングロリアルバスターズ』を(DVDで)みていました。映画館主が、映写技師が、フィルムとともに映画館を焼く・・・すごい設定です。そしていつものようにこの作品をみると『海の沈黙』をみたくなるのでした。