デジタル化による日本における映画文化の未来について

と題されたシンポジウムが、フィルメックスの会期中に朝日ホール10階で開催されていました。が、迂闊にも逃した私。
その日、11階での上映が終わったあと、ロビーにアップリンクの浅井さんを囲む熱い熱気を発する人々の輪が・・・・「これは一体何?」と思いましたらば、階下で開催されたシンポジウム「デジタル化による日本における映画文化の未来について」の流れで、浅井さんがご自身の体験から、とりあえず試す価値ある、低予算で実現できる劇場のデジタル化のノウハウを引き続き伝授しておられるのだと、居合わせた利重剛監督に教えていただいた(あわわ)更に迂闊を恥じる午後でした。このシンポジウム、映像で観ることができるそうなので、これから検索してみます。
考えてみれば、PFFは現在、イベント開催会場の方々と映写技師の方々に頼ることばかり。昨年までの事務局は試写室を持っていましたので、8ミリ、16ミリ、35ミリ、デジタルと、全てのフォーマットに対応できること、スタッフも映写できること、が目標でしたが、それがなくなってから、一挙に弛緩してるのか自分?と深く反省しました。
それにしても、ノウハウを伝授する浅井さんの姿、頼もしかった。いつも「インディペンデント」という言葉が浮かんでくる方ですが、アップリンクの紹介する映画のように、ニッチなマーケットがとても重要だと改めて思う会話を、先日海外からのお客としたことを思い出します。
フィルメックスに合わせて来日した方々がいます。メイルでしかPFFとの交流のなかった方々と、そんな来日チャンスに直接お会いできるわけですが、今回は、PFF作品を頻繁に上映してくださるカナダの新しい、しかし熱心で誠実な映画祭、「新世代映画祭」のクリスさんと、『川の底からこんにちは』『ハラがコレなんで』を配給してくださるイギリスのthird window filmsの、アダムさん。「日本映画にこだわる西欧の映画人はみな友達!」という側面がありますので、やはり二人はお友達。別々のアポイントメントで始まったのに、いっしょくたになってしまいました。
アダムさんは、惚れた監督の作品をずっと紹介していくことに情熱を注いでおり、石井裕也、園子温、中島哲也、藤田容介、三木聡、といった監督を、可能な限り紹介し続けたいのだそうです。「海外で三木聡BOXを出したのはうちだけ!」と威張っていましたが、もっといろいろな監督と出会い、たくさんイギリスに紹介したいのです。
イギリスは、日本のようなレンタルビデオショップマーケットはなく、セル主流。それも、セルで一本数百円からというのですから、感覚が違います。ただし、セルの本数は、日本と同じく、メジャー系でなければ、数百本・・・それで公開とDVD販売で商売が成り立つのか?と不思議なのですが、ニッチなマーケットは手堅いとおっしゃる。『おくりびと』がめちゃコケるイギリスでは、癖の強い映画が強いのだそうです。
ただ、日本の制作会社、配給会社は、Celluloiddreams とFortissimoという、アジア系作品のセールスに強いと言われる2大エージェントはじめ、大きなところに作品を預け、高額で売ろうと狙うことが近年常識になってしまったので、彼らの商売では値段が上がりすぎて、時間をかけても、結局売れない=買えないということが起こりすぎていて、ほんとうに残念なのだと。小さいけれども、情熱ある会社に個別に対応してくれるほうが、結局はずっと得なはずなのに・・・と嘆いておられました。
とてもよくわかります。
日本映画、近年海外セールス苦戦。いえ、日本映画に限らず、小さい映画は世界中で冷えてます。
私が、出会う映画人(いや、映画祭人とか映画監督ですね、正確には)に近年よくする2つの質問があります。
Q:お国で有名な日本の監督は? A:ほぼ間違いなく、北野武と宮崎駿です。
Q:あなたが個人的に会いたい監督や、好きな映画は?A:非常に高い確率で、黒沢清と是枝裕和です。
これらBIG4の作品がどのくらいセールスに成功しているのか?となると、宮崎駿以外、楽観的な数字ではないのではないかと思われます。が、小さい売り買いをコツコツやることを覚悟すれば、意外にまだまだ開拓できる顧客がいるのではないかと、ビジネスに積極的にタッチしない私でも感じるのです。
それにしても、「好き」とか「会いたい」とかに挙がる黒沢監督と是枝監督。近年ますます、その技術の冴えにほれぼれするお二人です。黒沢監督のWOWOW作品、楽しみです。
*文中敬称略・五十音順で失礼しました