ジャッキー・チェンと香港国際映画祭
香港ではやけにブログの更新が頻繁なのですが、それは、宿泊場所にごく近い上映会場がふたつあり時間にいささか余裕があるからです。こんなことが可能な映画祭は、あまりありません。
本日の最後は、石橋義正監督の新作『Milocrorze-A Love Story』で締めくくりました。「I SEE IT MY WAY」という特集の4作品の一本で、ひとことで言えば、"ちょっと変わった映画を、若い観客向けに特別上映する"企画で、英語がまだ堪能ではない若年層の為に、中国語字幕投影のサービスつきです。(香港国際映画祭は基本的に英語字幕のみの上映です)、本日はイースター休暇を控える週末の夜でもあり、オープニングやクロージングに使われる大劇場が満杯の盛況。日本公開はこれからの、この『ミロクローゼ』、山田孝之さんのひとり3役が素晴らしい!ファンになります。鈴木清順監督も拝めます。(注・マイキー一家は出てきません)
既に報じられましたが、ジャッキー・チェンの呼びかけたチャリティーコンサートで、2億円の義援金が集まった香港。そのほかにも、ショッピングモールの入り口に、「日本のために祈ろう」と書かれた愛の木(←勝手に命名。写真を撮る習慣がないため、これまた写真なしですいません)が置かれていたり、スターバックスで、ある時間帯の売り上げを義援金にすると発表すると長蛇の列が出来るなど、さまざまな善意をいただいている香港。石橋監督は、上映後のQ&Aの最後に、「お伝えしたいことがあります」と、香港からいただいたさまざまなサポートに、深くお礼を伝えて、舞台を去りました。大人な監督の行動に感動しました。
ジャッキー・チェンは香港国際映画祭とは殆ど縁がなく、映画祭スタッフからはあまり話しが出ません。また、昨今香港でジャッキーは「テレビで養毛剤の宣伝をしているおじさん」という認識で、10代20代はジャッキーの映画をみたこがないのが普通、という話を数日前に聞いて、ちょっとうろたえたばかりでした。・・・・しかし日本でもそうですね。冷静に考えると。
かつて映画の中で、ジャッキーが縦横無尽に駆け回った街も、殆ど面影がない近年の香港。更に香港を象徴するフェリーも廃止の方向と聞き、寂しさが増します。
311まではテレビを全くみない生活をしていた私ですが「もしかして速報はテレビニュースが一番早いかも」と、一生分(ちょっとオーバー)みていたこの数週間。印象的だったのは「わからないことを喋るとすぐばれる」ということがよくわかったこと。そして「コントロールされた情報しか流れない」のは本当なのだな、と確認できたことでした。
また、この3週間続く「わからない者が発表し、わからない解説者が解説し、わからないメディアが質問し」を海外でみると、その不思議さが際立ちます。そこだけ「平和な日本」が脈々と生きてるのを感じるのです。
数々の映画の中で、危険地帯はフリーランスのジャーナリストしか行きませんし、わかっている専門家は、必ず"狂っている"とパージされますが、「現実も同じかも~」とか口に出したくなったりして、映画原理主義になりそうなので、この辺でテレビにお別れです。それは、今、集中的に映画をみることが出来たことで、映画の力を、再確認できているからかもしれません。
テレビと映画、その役割は完全に別であり、比べるものでは全くありませんが、ひとつのメディアとして、映画は世界の変化に敏感で有り得る、人類の信頼に応える強靭さを持ち得る、時間と思考の詰まった媒体になりえる、と確認できてきた気がします。
そしてあと一日で香港国際映画祭ともお別れです。
付記:韓国映画『The Journal of Musan』は、日本公開が決定しているそうです。迂闊ですいません。必見作品です。