◎コンペティション部門 PFFアワード2014

人の心の暗い穴を覗く、現代社会への問題提起

『反駁』

Winding Night
[2014年/51分/カラー]

監督・脚本:伊之沙紀

撮影・照明:中瀬 慧/編集:和泉陽光/録音・整音:大野裕之/音楽:有田尚史
出演:富田理生、佐藤愛葉、泉水美和子、森田亜紀

この映画のキーワード

  • 過干渉な母親と受験地獄
  • 母と子の歪んだ関係
  • 驚愕のエンディング

セレクション・メンバーによる解説

1997年7月、受験地獄の只中にいた沙羅は渋谷の路上で通り魔と遭遇し、思わず呟く。「わあ、自由だ。あの人、自由に殺しまくってる」その場に居合わせた3人の小学生と最高学府で再会し、封印された記憶、過去の所業が、そのうちの1人の杉崎という悪魔の如き男によって、次々と露わにされていく。沙羅は今まで自分の奥底に沈めていた、母に対する真の願望を思い出す。その時、母は沙羅の身を案じ、大学へと向かっていた…。
1組の母娘の壮絶な愛憎を主軸に、人間が人間の精神を蝕み、崩壊させ合う過程を容赦なく抉り出す。瓶、鉛筆、人形などの、不穏さを煽る小道具の用い方も秀逸。人間の深い闇を希求しながらも、映画はその先の人智を越えた運命の領域にまで到達する。奈落に向かって決して逃れ得ぬ運命の無慈悲さ。それが何よりも恐ろしい。

文:江川太洋(フィルムラボスタッフ)

監督:伊之沙紀 いの・さき

1983年 神奈川県出身。映画美学校フィクションコース高等科卒業
社会人3年目のとき、当時の会社での辛い経験を表現したいと思い、映画美学校に。もともと映画を作る側になることは考えたこともなく、週に一度ぐらい映画館で映画を観ていただけでした。それが、西川美和監督の『ゆれる』や橋口亮輔監督の『ぐるりのこと。』を観て、自分の思いを表現する手段として映画があると思ったのです。第1作の『正当防衛』は、過酷な労働条件や人間関係など、自分の実体験をもとにしました。第2作『反駁』の出発点は、悪さをする優等生の大学生の話でしたが、最終的には母子関係のほうに集約していきました。自分の実体験からは離れたつもりだったのに、母子関係の部分に私の少なからぬ個人的な思いが働いた気がします。自分の気持ちを表現するための映画はこの2作で卒業して、次は自分の思いから切り離したところでの映画制作に挑戦したい。この8月からシンガポールに転勤になりました。異国での新たな体験が次の映画のネタにつながるかもという期待を抱いています。

繰り返し観ている作品
『ソーシャル・ネットワーク』(10年/デヴィッド・フィンチャー監督)
『アメイジング・グレイス』(06年/マイケル・アプテッド監督)
『台風クラブ』(85年/相米慎二監督)
最近観て面白かった作品
『ソーシャル・ネットワーク』(10年/デヴィッド・フィンチャー監督)
好きな映画監督
無回答
主役にしたい俳優
無回答

【フィルモグラフィー】
『反駁』(2014年/51分/カラー)、『正当防衛』(2010年/16分/カラー)

◎予告編

◎上映日程

  • 【東京会場】2014年9月13日(土) 14:30~ / 2014年9月17日(水) 15:30~ ※監督、出演者など来場予定。
  • 【京都会場】2014年12月13日(土) 16:20~ / 2014年12月18日(木) 12:00~
  • 【名古屋会場】2014年12月21日(日) 11:00~
  • 【神戸会場】2014年12月23日(火・祝) 15:30~
  • 【福岡会場】2015年4月26日(日) 16:30~

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