PFF

2014年9月25日(木)の「PFFアワード2014表彰式」にて、最終審査員5名およびパートナーズ各社より述べられた、各受賞作へのコメントと審査講評をご紹介します。(※登壇順。敬称略)

【各受賞作へのコメント】

  • ◇日本映画ペンクラブ賞

    【受賞作品】
    『波伝谷に生きる人びと』監督:我妻和樹

    【プレゼンター】
    日本映画ペンクラブ審査員 渡辺祥子、まつかわゆま、清藤秀人

    「ドキュメンタリーは主観。事実というものを元にして、監督なりの真実をつかむのがドキュメンタリー。我妻監督は、自分にとっての真実を持っている方だと思います」

  • ◇観客賞

    【受賞作品】
    『ガンバレとかうるせぇ』監督:佐藤快磨

    【プレゼンター】
    東京都近代美術館フィルムセンター主幹 岡島尚志

    「主人公たちの微妙な心の揺らぎが目に見えるような映画でした。構図の感覚は、生まれながらの才能に負うところだと思いますが、佐藤監督は素晴らしいものをお持ちだと思います」

  • ◇映画ファン賞(ぴあ映画生活賞)

    【受賞作品】
    『ガンバレとかうるせぇ』監督:佐藤快磨

    【プレゼンター】
    ぴあ株式会社 総合営業局IMGグループ チーフプロデューサー 岡 政人

    「青春ものはよくある設定ですが、決してありきたりな青春ものにはなっていないこと、媚びない強さや、定石を裏切る展開に惹かれました。登場人物が魅力的で、演技賞があれば女優賞をあげたい」

  • ◇ジェムストーン賞(日活賞)

    【受賞作品】
    『ネオ桃太郎』監督:小田 学

    【プレゼンター】
    日活株式会社代表取締役社長 佐藤直樹

    「100年間映画を作り続けてきた日活が、今すぐにでも映画を撮らせたい、撮ることが出来る監督は誰なのかを考え、この作品を選びました」

  • ◇エンタテインメント賞(ホリプロ賞)

    【受賞作品】
    『独裁者、古賀。』監督:飯塚俊光

    【プレゼンター】
    株式会社ホリプロ代表取締役社長 堀 義貴

    「難しく考えずに衒いなく、真正面から描いている。主人公の若い二人の表情が、とても生き生きと撮られていて、完成度の高い作品。大林宣彦監督や、北野武監督のようでした!」

  • ◇審査員特別賞

    【受賞作品】
    『埋み火』監督:山内季子

    【プレゼンター】
    最終審査員:ヤン・ヨンヒ(映画監督)

    「拝見してから審査会までの数日間、とにかくずっとこの作品が頭から離れませんでした。寝たきりの母親に食べさせ、排泄を処理し、手を洗い、他人が食べる魚をさばき、また手を洗い。。。「生きる」ということを強烈に、そして面白く見せるな、と思いました。「主人公の女性はこの後どういう人生を歩むんだろう?」という問いがずっと胸に残り、私の想像力を掻き立てました。私も、観客の心に長く残る作品を作りたいと常々思っていますので、ちょっとやられた感がありました。終わり方=ラストシーンについては再考の余地があるとも思いますが、全体として説明的にならなかったのが良かったです。「是非『埋み火』に!」と1票を強く投じました。おめでとうございます」

  • 【受賞作品】
    『モーターズ』監督:渡辺大知

    【プレゼンター】
    最終審査員:柳島克己(撮影監督)

    「この作品を最初に観たときの印象は、硬派でも軟派でもない男臭さが表現されていることでした。東京からほど近いの地方都市を舞台に、女にも疎く、うだつも上がらない主人公をはじめ、仲が良い4人の修理工場の工員たちの日々何もない世界に、修理に来た2人組のうちの1人の女の出現によって、淡いストーリーが展開するのですが、そこに流れる時間の表現が非常に心地が良かった。最後に女や自ら育てた若者が去って元の生活に戻る、その喪失感のようなものが、エンディングの音楽と映像に現れていて、エンタテイメントを感じました。映像的にも修理工場の情景や工場内の雰囲気、色あせたスタジャン、シャッターを使った構図など、色彩と光の陰影の使い方にも独自の感覚が出ていて、好印象を受けました」

  • 【受賞作品】
    『人に非ず』監督:矢川健吾

    【プレゼンター】
    最終審査員:成宮寛貴(俳優)

    「自分が映画を選ぶ立場なのに、映画に選ばれているような気持になりました。強烈なインパクトのある、とても荒削りな、ミステリアスな映画です。冒頭の力強いシーンからスタートし、そこに行った人を狂わせる、この島特有の不思議な世界観の中でドキドキしながら進んでいく展開に、とても惹かれました。実はこの作品は一番最後に決まったのですが、僕がとにかく好きで推薦しました。21作品、どれが賞を獲ってもおかしくない作品だったと思います」

  • ◇準グランプリ

    【受賞作品】
    『乱波』監督:中島悠喜

    【プレゼンター】
    最終審査員:森重 晃(プロデューサー)

    「36年で、PFFにアニメーションがどれだけ応募されてきたのか僕は知らないのですが、多少ズルいという気はします(笑)。ただ僕は、5分間、端的に、オチも含め見事に、観せきっていて素晴らしいと思いました。また、自主映画は音が難しいのですが、この『乱波』は音のセンスが非常によかったです。おめでとうございます」

  • ◇グランプリ

    【受賞作品】
    『ナイアガラ』監督:早川千絵

    【プレゼンター】
    最終審査員:内田けんじ(映画監督)

    「非常に不思議な作品でした。今回の21本、喪失感であるとか、日常から離れてアンバランスになってしまうとか、そういう作品が多い中で、『ナイアガラ』は、主人公がものすごく安定しているという不思議な映画でした。新鮮な感動が一番あったことが決め手になっています。あの明るさ、ユニークな雰囲気というもの自体が、強さと優しさというか、強いメッセージ性を僕は感じました。大好きになった作品です。おめでとうございます」

【最終審査員による審査講評】

  • 成宮寛貴 / 俳優

    今回PFFの審査員という、映画を選ぶ立場の役割をいただき、とても光栄でした。お金のかかった映画もそうじゃない映画もありますが、本当に自由に表現をしている作品を観て、視野が広がったような感じがしました。新しい監督のみなさんから、刺激を受けて、僕はこれからまた俳優として仕事ができるな、という風に思いました。
    今回は本当に参加ができてよかったと思っています。ありがとうございました。

  • 内田けんじ / 映画監督

    今回審査員ということで21本観させていただきまして、すごく楽しかったです。PFFに入選した作品ですから、何もない作品なんて1本もないんですね。楽しかったんですけど、これ審査しろ、って言われるのはやはりつらくて、ドキュメンタリーとアニメと、製作費も違う中でいいの選べっていうのはですね、やっぱりそうとう強引な行為だなと思いました。ただ、仕方がないですね。そういう遊びですから、そういう楽しみが映画にはありますからね。でも5本選ぶと6本目が気になるんです。どうしても。それは仕方がないと思います。たとえば『ネオ桃太郎』とかね。「賞は必要ないんじゃないか、あの作品は(褒め言葉)」って話になりまして、でもジェムストーン賞(日活賞)獲ってよかったですね。受賞がないのも寂しいなって思っていましたし。大好きな作品でした。
    本当に、僕も自主制作を撮ってPFFで入選したことがありますから分かりますけれど、監督のみなさんはいろんな友達に迷惑をかけたことでしょう(笑)。PFFで入選していろんな人に観てもらえたことが最高のお返しになったと思います。いろんな感性のいろんな作品を観れたこと、本当にありがたく思っています。みなさんお疲れ様でした。

  • ヤン・ヨンヒ / 映画監督

    受賞なされたみなさん、おめでとうございます。惜しくも受賞を逃したみなさんも、21本に選ばれた、というのは十分受賞に値すると思います。
    映画祭というのは祭で、出会いの場でもありますが、映画監督たちにとっては、揺りかごのような、母校のような、ふるさとのような場所になっていきます。私はPFFの卒業生ではありませんが、自分の作品が初めて映画祭で上映されたときの感動は強烈に憶えています。数年後、同じ映画祭で自分の新作が上映されても、未だに胸がドキドキしてウルウルしちゃいます。映画祭という場で作品を発表出来るのはこの上ない幸せです。
    自主映画とか商業映画とか、あまり区別して考えませんが、自分が作りたい作品にこだわって表現をしようとすると、難しいことがたくさんあります。みなさんもそうだと思います。私もそうです。『かぞくのくに』を撮っているときは、アパートの電気代が払えなくて、朝、シャワーを浴びて、撮影現場に行くときにドライヤーを使えなくて髪が濡れたまま現場に行ってました。珈琲を買うお金も無くて本当にシンドかったですが、映画を作る現場にいられる事がとても幸せでした。
    皆さんまだ若いですが、これから先いろんな事が起こります。結婚する、子供が生まれる、親が病気になる、経済的に追いつめられる、精神的に壊れそうになる等、いろんなことがあって、現実と映画を作ることの両立に悩む時期も来るかもしれません。今悩んでる人も多いでしょう。でも一つ、肝に銘じて欲しい事があります。私たちは、日本という豊かな国に生まれ、モノ作りに挑戦しています。戦場でもなく、難民キャンプでもない、便利で清潔で平和で表現の自由が保障されている日本で、夢を追いかけています。自分が置かれた状況がどれほど恵まれているかを自覚し、そうではない苦しい状況の中でも映画を作るために、表現のために闘っている勇気ある仲間がいる事を知って欲しいと強く思います。
    今年は中国でインディペンデント映画祭が潰されました。政府によって映画祭事務局が荒らされ、過去の上映作品のテープやデータ、パソコンまで押収されました。別に反政府的な映画を作ったり煽っている映画祭ではありません。もちろん、反政府的な映画を作ったとしても潰されるのはナンセンスですが。純粋に、作家性にこだわった映画祭です。それが一瞬のうちにすべてを壊されてしまいました。もちろん、映画人たちは今も闘っています。。。でも私たちは、作りたい作品を作ったからって刑務所に入れられることもなく、爆撃があるわけでもなく、難民キャンプで暮らしているわけでもありません。蛇口をひねれば飲める水が出るし、一日中電気も使え、世界中で作られた映画を観る機会も豊富にあります。確かに、例えば、お金がないというのは苦しいです。映画を作っているのに、映画を観るお金がないっていう状況は辛いです。人間関係に疲れて壊れそうにもなる時もあるでしょう。でも、映画を作ることにチャレンジできる幸せを噛みしめて、踏ん張ってみましょう。視野を広く持って世界を知れば知るほど、日本にいる私たちがどれほど恵まれていて、それ故にどれほど視野が狭く世界を知らないかが解ります。私も皆さんと一緒に頑張っていきたいと思います。皆さんとは既に仲間というかライバルというか同志のような関係だと思っています。誰でも映画を作ることができる時代になったからこそ、本当にイイ映画を、残る映画を作っていきたいと、そう思います。

    いくつか、入賞を逃したけども印象に残った作品があります。やはりドキュメンタリー出身ですので、ドキュメンタリーがとても気になって観ていました。『波伝谷に生きる人びと』と『沖縄/大和』。さっき監督自身がおっしゃっていましたけれども、「もしかしたら、完成度の高いドキュメンタリーはあんまり観てないんじゃないかな」と正直思いました。面白いテーマで、大事なテーマで、部分的には惹かれるところがあったのに、入賞作品を選ぶというときには、最初の段階で落ちました。二人とも、難しい&大事なテーマを前に自問自答しながら撮っているということがよくわかって、頑張ってるなぁ~、と思いました。が、構成と編集についての“安易な自信”が垣間見えました。編集ソフトを使えるのと、構成編集出来るのとは全く次元が違う問題です。もっと突き詰めて、完成度の高い作品にして欲しいと感じました。私もまだ考えております。のちほど時間がもしあれば、お話できれば、と思います。もうひとつ気になった作品は、『流れる』。自分について、もしくは、とても個人的な一瞬について作った“セルフ”な作品は、日本の映画には多いと思います。その中で普遍に到達するというのはとても難しいことですが、私は、この作品に普遍を見ました。ナレーションがなかったのがとてもよかったです。そのことでスタッフと揉めたという言葉がカタログにあってビックリしたのですが、あれは、絶対にナレーションがなくてよかった、と私は思います。高校生の監督だということにもビックリしたんですが、ぜひ、作り続けてほしいな、と思います。

    まだ私は劇映画を1本しか撮っていませんので偉そうには言えないのですが、どう終わるか、ラストシーンが本当に大事だと改めて勉強させていただきました。「映画は、多くのスタッフを巻き込んで多額のお金を使い、観客の方にわざわざ時間をいただいて、お金も払っていただき成立します。映画を作って観せるということはとっても人騒がせなことだ」と感じています。どうせ騒がせるんだから、一緒に騒いでくださった皆さんが、本当に加わってよかったな、と、思っていただけるような映画をどんどん残していきたいと思います。
    本当にみなさん、お疲れ様でした。また、一緒に頑張って、面白い作品を残していきましょう。本当にありがとうございました。おめでとうございます。

  • 柳島克己 / 撮影監督

    審議会議では議論がかなり色々と分かれ、ようやく1つずつ決まって行ったのですが、作品の内容と連動して一番感じたのは、やはり技術的なことです。
    近年、撮影機器のデジタル化と共に、簡単に撮影が出来るようになった分、ライティングや撮影技術に目を向ければ更にクオリティの高い映像が撮れるじゃないか、と思います。それが、賞の対象にならなかった作品が対象作品になるかも知れないし、さらに、グランプリに繋がるかも知れないような、質の向上に繋がる方法が一杯あったのに、もったいないな、という風に思いながら観ていました。例えば、オート設定で撮ってしまうのではなく、少しマニュアル撮影を勉強して、その表現として狙った撮影をしてみたり、暗い所の撮影では何かしらの明かりを利用して黒の表現を考えたり、引いた画で音が録れないのなら、テストで録ったものをハメ替えて使うなど、少しでも知識が上がれば更に表現力が上がった作品になり、評価が全然変わってくるんじゃないかと思いました。次回作はそういった作品に繋がるよう、みなさん頑張って下さい。

  • 森重 晃 / プロデューサー

    最後の総評ということで、みなさんお疲れ様です、おめでとうございます、という型通りのことを言いながら、みんな下手だということを自覚しましょう、と。
    まだまだ、下手です。下手というのは柳島さんがいうカメラのことも然り、音のことも然り、脚本のことも然り、まだまだ下手だということを人の映画を観ながら自覚して、どういう映画を作りたいかを考えていったほうがいいな、と思います。それと、人の意見を聞きましょう。どんどん取り入れましょう。
    日本映画ペンクラブの渡辺さんもおっしゃっていましたが、今回21作品を観ていて、「他人の映画を観ていないな」というのを凄く感じました。やはり、他人の映画、先輩の映画、これだけ名画座なくなってきましたけれども、DVDで観ようと思えば観られます。そりゃ、映画は映画館で観るのが美しい。これはもう基本だと思います。でもDVDでたくさん先輩たちの映画を観られるんですから、もっと観ましょう。昨年東京で公開された日本映画は580本。洋画が420本。新作だけで900本もある。正直言って評論家の人も900本全部観ている人はいないと思います。しかし30年前、80年代に公開されていた日本映画は年250本くらいです。それが今580本というのは、逆にビデオ、HDが普及して、みなさんが撮りやすくなったということも含めて、映画の製作費がどんどん安くなったということもあります。その両方が兼ね備わったと同時に、みなさんの今回のPFFでの上映のように、「映画はお客さんがお金を払ってもらって成り立つ」というところから始まっております。映画はフィクションです。ドキュメンタリーも撮影した時点でフィクションです。フィクションは嘘です。しかし、その中にひとつの真実が見えたら素敵な映画になるはずです。頑張って映画を見続け、作り続けてください。

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