◎コンペティション部門 PFFアワード2014

PFFアワード2014 日本映画ペンクラブ賞受賞作品

カメラは寄り添った、3.11のあの日も

『波伝谷に生きる人びと』

The People Living in Hadenya
[2014年/134分/カラー]

監督・撮影・編集:我妻和樹

この映画のキーワード

  • 南三陸の人々の日常
  • 完成までに9年の歳月
  • 自然体の人々の姿を記録

セレクション・メンバーによる解説

宮城県南三陸町にある波伝谷部落。3.11までの3年間、海と共に生きる人びとの濃密な小世界を一途に追い続けたドキュメンタリー。1年に1度の獅子舞に皆が集まり、家族・親族総出で海の仕事を支え合う。民俗学から出発した我妻監督は、閉じられた共同体特有の原初的な共生のあり方を、人びとの暮らしから凝縮した。共同体が社会の変容とともに衰退して行くなか、人間の蠢く生が露呈する。
養殖で痩せていく海、血が決める共同体のパワーバランス、気づきながらも動かせない現実。波伝谷の人びとが頑に守り続けてきた人と人の共生のあり方にひずみが生まれ出す。ほころびは揺れ動く前からすでにあったのだと痛みと共に思い知る。遠くかけ離れた波伝谷の暮らしも当然我々と同じ時間軸にあることを忘れてはならない。意識を広げれば思いが共有できる瞬間がある。

文:木下雄介(映画監督)

監督:我妻和樹 あがつま・かずき

1985年 宮城県出身。東北学院大学文学部史学科卒業
小学校5年生のときにカナダの実写映画『赤毛のアン』を観て感動して以来、「将来は映画監督になりたい」とずっと思っていました。しかし天邪鬼な性格のため、真直ぐ映画の道には進まず、遠回りで大学で民俗学を学び、その過程で南三陸町の波伝谷に出会いました。海や陸の恵みとそこでの人のつながり。面倒なことも多いけど、それが生きがいでもあるという大きな矛盾を孕んだ豊かで複雑な世界。「土地とともに生きる」ということがどういうことなのか。波伝谷という一つの地域社会の中で、互いが深く関わりあい、ときに葛藤しながら生きている人びとの姿を、その瞬間を生きる人びとの表情と言葉をもって伝えたい。そうして映像の下積みもないまま、僕の映画制作はスタートしました。今回の作品は、民俗調査に費やした3年間、撮影に費やした3年間、編集に費やした3年間と、僕の夢も涙も金も時間も労力も性欲も青春の全てを注いだ入魂の一作です。しかしこれがようやくスタートライン。どんどん新しい題材に挑戦したいなと考えています。

繰り返し観ている作品
『TOMORROW/明日』(89年/黒木和雄監督)
『ナージャの村』(97年/本橋成一監督)
最近観て面白かった作品
『わたしたちに許された特別な時間の終わり』(13年/太田信吾監督)
好きな映画監督
未来の自分
主役にしたい俳優
二階堂ふみ

【フィルモグラフィー】
『波伝谷に生きる人びと』(2014年/134分/カラー)

◎予告編

◎上映日程

  • 【東京会場】2014年9月14日(日) 14:30~ / 2014年9月18日(木) 12:00~ ※監督、出演者など来場予定。
  • 【京都会場】2014年12月15日(月) 18:40~ / 2014年12月18日(木) 18:40~ ※我妻監督、来場予定。
  • 【名古屋会場】2014年12月20日(土) 10:30~ ※我妻監督、来場予定。
  • 【神戸会場】2014年12月21日(日) 18:00~ ※我妻監督、来場予定。
  • 【福岡会場】2015年4月24日(金) 13:00~

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