◎コンペティション部門 PFFアワード2014

20代の女性にしか描きえない心の揺らぎ

『還るばしょ』

Color My World
[2014年/36分/カラー]

監督・脚本・編集:塚田万理奈

撮影:名古屋純子/録音:伊東俊平
出演:佐藤由紀子、手塚けだま、村上 玲、中田くるみ、藤井佳代子

この映画のキーワード

  • 誰もが感じる心のずれ
  • 虚無感からの再生
  • 20代女性からの賛同

セレクション・メンバーによる解説

歯科衛生士として働くちかげは毎日を淡々と過ごしている。女友達の家に泊まりに行く彼氏を許し、付き合っている意味を同僚からも問われ、姉には「ちかげってなんかつまんなそーだよね」と言われても、それが幸せとも不幸とも感じていなかった。そんな日常が少しずつ、ちかげ自身を受け入れさせなくなっていく…。
矛盾を抱えながら生きている人間の複雑な内実を、忘却の彼方においやるのではなく、映画の中の主人公を通して炙り出す。それを見ている私たちの中から引き出される言葉もまた、根の深い領域からやって来るだろう。自分でも気付かない何かが違和感を引き寄せるようにして…。『還るばしょ』は、我に還るという感覚に限りなく近い響きを見るものに残す。

文:小原 治(映画館スタッフ)

監督:塚田万理奈 つかだ・まりな

1991年 長野県出身。日本大学芸術学部映画学科監督コース卒業
卒業制作で何を撮るかの段階で壁にぶつかりました。不器用なので、例えば自分の好きなものは何か考えても、本当に好きなのか、好きと言える自信ってなんだろう等々、キリがなくなって。私には書くものが何もないって思ったとき、ある方から「気持ちがゆらいで不安なそのままを書けばいいじゃないか」と言われました。主人公のちかげを歯科衛生士に設定したのは、資格が必要な職業ではあるけれど、人の口の中を掃除する単調な仕事でもあり、ある種の虚無感を抱くのではないかと思ったから。登場人物の名前は、ちかげは「影」ですが、みどり、あおい、きいと、色の名前にして、衣装や小道具もそれぞれの色を反映させました。話のなかの駒であるキャラクターではなく、いろんな思いを抱えて今を生きている人間にしたかったから。人は最終的には土に還って無になるけれど、土は生命が生まれる場所でもある。いま抱えている不安は確かに存在していることに気づいて土と一体化したとき、そこから再生が始まるという気持ちを込めました。

繰り返し観ている作品
『ジャーマン+雨』(06年/横浜聡子監督)
『エレファント』(03年/ガス・ヴァン・サント監督)
最近観て面白かった作品
『ROOM237』(12年/ロドニー・アッシャー監督)
好きな映画監督
横浜聡子、古厩智之、ガス・ヴァン・サント
主役にしたい俳優
無回答

【フィルモグラフィー】
『還るばしょ』(2014年/36分/カラー)、『あぐりとなな』(2013年/10分/カラー)

◎予告編

◎上映日程

  • 【東京会場】2014年9月16日(火) 15:30~ / 2014年9月18日(木) 18:30~ ※監督、出演者など来場予定。
  • 【京都会場】2014年12月14日(日) 16:20~ / 2014年12月17日(水) 16:20~
  • 【名古屋会場】2014年12月19日(金) 18:30~ ※塚田監督、来場予定。
  • 【神戸会場】2014年12月23日(火・祝) 13:00~ ※塚田監督、来場予定。
  • 【福岡会場】2015年4月25日(土) 10:30~

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