No.33:『リコ』in 第31回バンクーバー国際映画祭

海外レポート

日本国内のみならず、海外の映画祭でも上映される機会が多くなったPFFアワード入選作品&PFFスカラシップ作品。このページでは、そんないろいろな映画祭に招待された監督たちにも執筆していただいた体験記を掲載します。

PFFアワード2012 入選作品『リコ』in第31回バンクーバー国際映画祭(開催:9月27日~10月12日)

スタンレーパークから見たバンクーバーの街並み。

バンクーバーからの問いかけ

文:『リコ』監督 弓場 絢

バンクーバー映画祭に行けることが決まって以降、常々「最高のホスピタリティー」ということを耳にしていた。
期待はかなり高まっていたが、その期待を上回る兎に角VIPなもてなしに戸惑いつつも、通訳や運営の方達はとても気さくで何から何までお世話をしていただき、短い滞在であったにも関わらずバンクーバーを大いに楽しむことができた。

バンクーバーは海沿いのとても綺麗かつ穏やかなところで、街にはビルが建ち並び、街から少し外れると緑がたくさんあり、浜辺から見たビル郡と森と海(ヨットとかも停舶していたり)が一体となった眺めは絶景でとても贅沢、ムード最高。
バンクーバーの飲み屋はどこも夜2時までしかやっていないようで、本当に穏やかな街だった。

上映は2回あり、各上映後にはQ&Aタイムが設けてあった。
映画祭のプログラマーであるトニー・レインズさんの進行で、通訳さんに訳してもらいながら色んな質問を受けた。
同時通訳をしてもらった経験がほとんど無く、これがまず面白かった。
トニーさんや、観客の方が英語で質問しているのを聴きつつ、耳元で小声の日本語訳を聴き、その質問について考え、日本語を適度なところで区切り、英語に訳してもらいつつ答える。
途中、「あー。自分は今話すんだっけ?聞くんだっけ?」と寝ぼけた感覚になり、とても不思議だった。
時差ぼけと寝不足のせいかもしれない。

質問では、
「この映画の教訓は?この映画で何を感じ取ればよいのか?」
「どこまでがシナリオ通りでどこからがアドリブなのか?」
といったものや、「音楽を使わずに動作や生活の音だけで構成されているところが好きだ」と、感想を述べてくれた人もいた。
時間は結構ゆったりと取られていて、質問してくれた人とゆっくり会話ができたのは貴重だったし、何かしら興味を持って質問してもらえたことが純粋に嬉しかった。

『リコ』が上映された会場。

自分の上映時と、授賞式以外はほとんど自由だったので通訳の方にご飯を食べに連れて行ってもらったり、郊外の方へ観光に連れて行ってもらったりもした。

授賞式は一瞬だった。
体感時間としては30分ぐらい。
海外の式はこんなものなのだろうか?
次々と受賞監督が発表され、最後に短めのコメントがいくつか続き、
上映時間が迫ってるので終わり!といった感じであっけなくもあり、爽快な式だった。
バンクーバー映画祭直前に行われたPFFの授賞式は、規模も大きく、じっくり発表され、コメントが添えられ、一つ一つの賞が決まっていくのがとても長く感じられたので映画祭の授賞式とはそういうものだと思い込んでいた。
映画祭は何もかも初めてで、いちいち驚きっぱなし。

式の後はディナーでお腹いっぱい飲んで食べて、談笑しながら祭りの最後を楽しんだ。
他の国から来ていた監督の方と話をしていると、早く次が作りたいという思いがいっぱいいっぱいであわよくば、またこうやって海外の人にもみてもらったり会って話が出来たら最高だなと、欲がでてきたりもしたので作るしかない。

本当にあっという間の5日間だったけれど、こんな貴重な経験をさせて貰えて、スタッフのみんな、出演者のみんな、PFFの方々、バンクーバー映画祭で出会ったみなさん、トニー・レインズさん、本当にありがとうございました。