第28回東京国際映画祭ジョン・ウー監督トークイベントは、若手監督へのアドヴァイス満載!「PFFアワード2015」グランプリ杉本大地監督も登壇した時間を、改めてお届けします。

映画祭ニュース

去る10月25日(日)、第28回東京国際映画祭にて第2回"SAMURAI賞"ジョン・ウー監督授賞記念イベントが開催され、
ジョン・ウー監督と共に、「PFFアワード2015」グランプリ・杉本大地監督、「SKIPシティ国際Dシネマ映画祭2015」オープニング作品・福島功起監督、「第17回京都国際学生映画祭」長編部門グランプリ・二宮健監督、「第9回TOHOシネマズ学生映画祭」ショートフィルム部門グランプリ・田中穂先監督、同映画祭ショートアニメ部門グランプリ・谷阪萌瑚監督、「第27回東京学生映画祭」アニメーション部門グランプリ・円香監督、同映画祭実写部門グランプリ・中村裕太郎監督の計7名が登壇し、直接質問する機会を得ました。


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まずは司会の羽鳥慎一さんからの質問です。

Q:映画と出会ったのはいつ頃ですか。

A:幼い頃から映画が大好きで、特にアートムービーが好きでした。当時、香港には映画学校がなく、映画をやりたい人は映画をただ観て盗むしかなかった。幸い沢山の映画を見ることができたので、その傍ら図書館で批評や本を読んだりしていましたね。そして、仲間たちと製作した実験映画がキャセイ・フィルムの目に留まり、同社に現場のスクリプターとして入りました。


Q:影響を受けた映画監督、作品はありますか。

A:大きな影響を受けたのは、黒沢明監督『七人の侍』、ジャン・ピエール・メルヴィル監督『サムライ』、サム・ペキンパー『ワイルドバンチ』、デヴィッド・リーン『アラビアのロレンス』ですね。


Q:『男たちの挽歌』二部作でチャレンジしたことはありますか。

A:当時の香港アクションは、白黒、善悪がハッキリしている、人間の感情があまり描かれてない、非常に事務的な映画だと思っていたので、自分の言いたいこと、気持ちを登場人物に投影させる初めての試みをしました。そこでアクション+感情という新しいスタイルが確立しました。


Q:『ハードターゲット』(93年)でハリウッドデビューをされましたが、香港・ハリウッドの違いは。

A:信じられないことに、ハリウッドでは大スターが映画の最終編集権、脚本やキャスティングについても決定権を持っていますが、『フェイス/オフ』(97年)で、社長が全員に「私はジョン・ウーの映画が欲しい」と言ったひと言のおかげで、私は好きなことが表現が出来、そして、今では5人の監督しか持っていない、最終的編集権を持つことが出来ました。
*参考までにジョン・ウーのほか、[アルフレッド・ヒッチコック、スタンリー・キューブリック、クリント・イーストウッド、スティーヴン・スピルバーグ、M・ナイト・シャラマン]と思われる。


Q:『レッドクリフ』(08年~)で、アジアで再び撮影をしようと思った理由を教えてください。

A:中国語圏の友人から度々「世界に通用する中国映画を作って欲しい」と依頼されていて、これからはハリウッドでの経験をいかしアジアの若手を育てるべきだと思い、そして、いつかハリウッドの映画製作の材料が不足するときがくると感じており、そのときのために中国圏での若手育成の制度をつくるべきだと考え、アジアに戻りました。


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続いて、若手監督7名が登壇し、ジョン・ウー監督に直接質問を投げかける一問一答の質疑応答が行われました。

Q杉本監督:自分は、映画を撮っているときに心が躍る瞬間を感じるのですが、ウー監督は映画を撮る以外でそういったことを感じることは何がありますか。

Aウー監督:最近飼いだした子犬ですね。かわいくて仕方なく、映画撮影の悩みなどをすぐ忘れてしまうくらいとにかくかわいいです。


Q福島監督:宗教観や文化の違いで演出上、困った経験はありますか?

Aウー監督:文化、宗教、政治がどうであろうと、われわれのテーマは人間だと思う。喜怒哀楽、正義感、善と悪、そういった基準に基づくと人間同士のコミュニケーションはしやすくなる。そして若手の監督は、自分が何を求めているのか、何か欲しいのか分からない人が多いため、何をやりたいのか、役者に伝えることがまず大事だと思います。


Q二宮監督:日本からどのような作品が出てくることを期待しますか。

Aウー監督:日本映画の伝統的からその真髄を取り出して、今の日本の若手監督の現代感覚とうまく結合出来ると新しい作品が生まれるはず。ハリウッドに行くことを憧れているかもしれませんが、その前に、日本映画の精神といったものを表現できるとうまくいくと思います。


Q田中監督:人間を描く上でなぜアクション映画をいう表現を選んだのか。

Aウー監督:小さいころはミュージカル映画が好きでした。ダンス、音楽、衣装、物語、全てが好きでした。また毎日チンピラが喧嘩している場所で貧しく暮らしていまして、そういった環境で育ったことで、悪い人にも良い人にも何かあってそれぞれの考えがあるという独自の感覚があるかもしれません。そしてダンスのようなアクションと人間の感情で、人々を感動させたいと思いました。ミュージカルから受けた影響は大きかったと思います。先ほどと重複しますが、アクションはひとつの手法で、大事なのはその精神、人間性をアクションを通して表現することが出来たらアクションそのものは力と変わってしっかりと表現することが出来ると思います。


Q谷阪監督:20代前半の頃、当時の映像製作に対する信念はありましたか。

Aウー監督:1973年の『カラテ愚連隊』でデビューしたのが26歳のとき。ちょうどブルース・リーが亡くなった頃で、拳と拳で戦う映画が流行っていました。完成した映画は暴力的な映画と言われ、検閲のためになかなか香港では上映できず、結局成功しませんでしたが、ゴールデン・ハーベストの社長はこの映画に登場する男女の心情描写を気に入ってくれ同社と専属契約を結ぶことになりました。当時の香港映画ではない人物描写だったから。でも実はこの手法は小さいころに16ミリの自主映画時代のもの。そういう経験は意外に使い道があるので大事にしてほしいです。


Q円香監督:好きなアニメーションはありますか。

Aウー監督:小さいころ沢山のディズニー映画を観ました。アクションのデザインはけっこうアニメーションと共通しているところが多いです。また、以前パラマウントから、アニメーションの制作を提案され、『西遊記』
を撮ろうと準備をしましたが、計画は実現ませんでした。が、いつかあなたと一緒にやってみようかなと思います。


Q中村監督:好きな「現場飯」は何ですか?

Aウー監督:私の好きなご飯はとてもシンプルです。もちろんケチャップはかけませんよ。
*ジョン・ウーファンにはたまらない答えですね。

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今回登壇した杉本監督の「PFFアワード2015」グランプリ作品『あるみち』を含む、入選20作品は、全国で順次開催中の第37回PFFでご覧頂けます。
神戸開催はこの週末から始まります。ぜひご来場ください!

<第37回PFF 全国開催日程>
神戸:10月31日(土)~11月3日(火・祝) 神戸アートビレッジセンター
名古屋:11月12日(木)~15日(日) 愛知芸術文化センター
福岡:2016年4月開催予定 福岡市総合図書館
【「第37回PFF全国開催」詳細】