第27回東京国際映画祭スペシャルトークイベントに、北野武監督らと「PFFアワード2014」受賞5監督が登壇!

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第36回

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本日10月25日(土)、第27回東京国際映画祭にてスペシャルトークイベントが行われ、北野武監督トニー・レインズ氏、(映画評論家、映画祭キュレーター)、クリスチャン・ジュンヌ氏、(カンヌ国際映画祭代表補佐)らと共に、「PFFアワード2014」受賞監督5名、「第26回東京学生映画祭」実写部門、アニメーション部門の各グランプリ受賞監督、「第8回TOHOシネマズ学生映画祭」ショートフィルム部門グランプリ受賞監督が登壇。

"日本映画の今と未来"について語りました!
イベントレポートをお届けいたします!

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「PFFアワード2014」を受賞し、北野監督と共に登壇したのは、
早川千絵監督(『ナイアガラ』/グランプリ)、中島悠喜監督(『乱波』/準グランプリ)、山内季子監督『埋み火』/審査員特別賞)、矢川健吾監督(『人に非ず』/審査員特別賞)、渡辺大知監督(『モーターズ』/審査員特別賞)の5名。
トークは、若手監督たちが北野監督にそれぞれの質問をぶつけ、北野監督がそれに答える、という形で行われました。
PFF受賞監督からの質問は以下の通りです。
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Q早川監督: 映画では食べていけない、という意見について、この道を選んだのだから自己責任だと思いますか?それとも映画監督を育成するシステムの構築が必要でしょうか?

A北野監督:日本映画の全盛期には、そういったシステムがあったのですが、今はそういう時期ではないですね。だから自分はお笑いをやって、今度はそのネタを映画に持ってくる。そしてまた映画のネタでコントを作る。自分は芸人でもあり映画監督でもあるわけだから、どちらもよく分かるし面白いものができる。そうやって、仕事から監督、監督から仕事、と発想を切り替えています。映画ばかりやっていると、非常に頭が固くなってしまって他のものに目が行かなくなってしまうから。映画に尽くすのではなく、逆に映画に尽くさせるんだと考え、苦しいときに作った映画がヒットしたら、そのお金を次の映画に全部使ってしまうくらいの感覚でいたほうが、自分はいいと思います。

Q中島監督: 自分は作品を作る上で「しっかり人間を描く」ことを意識していますが、監督が映画を撮る上で意識していることはありますでしょうか?

A北野監督: 自分は何をやりたいか、を突き詰めていけばいいと思います。自分が描きたいことを自分なりに描けばいい。そしてその上で、他の人のやっていることを否定しない余裕も大切だと思います。自分は自分のいいと思うものをどんどん突き詰め、原子爆弾みたいに爆発させればいい。自分自身に集中すると同時に、それを解放するときは周りに目を向けなくてはいけないと意識しています。      

Q渡辺監督: 僕は映画制作にあたってある種の不自由さや制約から反抗心が生まれるので、そういったものが必要だと思うのですが、いかがでしょうか?

A北野監督: サッカーなんかはいい例で、あんなに不自由な競技はないと思います。でも選手たちはその中で工夫していいプレーをしている。不自由でいい、不自由さの中でどれだけ裏切るか、不自由な中でいかに自由に動き回るかを考えればいいと思う。 自分にとっては、「人間はどうせ死ぬんだ」ということ自体が制約になっている。200年も生きる人はいないわけだから。そう思って自分を追い込んでいます。社会的な制約を破ることなく、すれすれのところで無限に生きる方法を考えています。

Q山内監督: 私は脚本を書く際に、テーマを考えずに書き始め、後から削っていくのですが、監督は映画にはテーマが必要だと思われますか?

A北野監督: 自分もテーマはないです。ラストシーンが思い浮かんで、いかにストーリーをそこへ持ってくかを考えます。4コマ漫画のように欲しい画が浮かび、その1つ1つからまたいくつかのシーンが浮かんで、そうやって何千カットというシーンが生まれ、それが一本の映画になっています。シーンのために撮っているので、主張というものはありません。それは後から浮かび上がってくる。 映画は生き物だから、作っているうちに変わっていくのはしょうがない。テーマなんてものは評論家に任せておけばいいんです。口で言えるくらいなら映画なんて撮るわけないんだから(笑)

Q矢川監督: 映画監督というものは、作品に対して何か質問されたとき、すべてを説明できなければいけないのでしょうか?監督の責任というものをどこまで意識されていらっしゃいますか?

A北野監督: 質問する人はなんでも理屈を求めるけど、宇宙も地球も分からないことだらけなんだから。だから監督は一言一言説明する必要なんてないと思います。"観客にはこう思ってもらわなきゃ"と主張するものでもないし。観客は観客で自分なりに感じてくれたらいいと思いますよ。 映画は基本的には監督のものだから。最初は、自分はこれが好きなんだ、というのが入れられればいいと思いますよ。

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続いて日本映画を世界に紹介してきたトニー・レインズ氏クリスチャン・ジュンヌ氏も登壇。
北野監督は、「自分の作品が"あんなもん映画じゃない"と言われた時に、初めて認めてくれたのがトニーさん」と、感謝の言葉を述べ、次いで若手監督たちへ「だから皆さんも、誰がどこで観てくれるか分からないから、ちゃんと好きなものを撮った方がいい」とアドバイスを送りました。

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最近の日本映画の変化についてどう考えているか?という質問に、
レインズ氏は、「映画の将来は、まさに今、舞台にいるみなさんのような若手監督たちの手に託されています。
最良の道は、"良い映画を作る"こと。そうすれば、必ず世界は注目してくれます。
意外なことに、ほんとうに良い映画というのは少ないのです」と回答。
「たとえば、私が今年観た中で一番刺激的だったのは、「PFFアワード2014」の鈴木洋平監督の『丸』という作品です。大島渚監督が1960年代に作っていた作品と比較しても遜色のない、素晴らしい作品でした」と絶賛しました。

ジュンヌ氏は、「私も同じ意見です。これは日本映画だけでなく全世界的に言えることですが、世の中が変わったのだから映画も変わるのは当然のことだと思います。
言いたいことも、言い方も変わるはずです。新しい表現を生み出す若手監督が、未来を担っていくと思います」と述べました。


最後に北野監督は、「映画なんて命懸けるもんじゃない。今日お話しをしてみんな真面目だな、と。もっと不真面目でいいと思いますよ。常に自分を俯瞰、あるいは客観的に見た方が追い詰められなくて良いと思う。映画は客観的なものだから映画一筋なんて言ってちゃダメ。一歩引いてみて、やるときはのめり込む。その切り替えが大切」と、若手監督たちに激励を送りました。

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本日登壇した「PFFアワード2014」受賞5監督の作品は、10月29日(水)、30日(木)の2日間、東京国際映画祭 日本橋会場にて上映されます。
東京で上映される貴重な機会ですので、ぜひご覧ください!
≪第27回東京国際映画祭(TIFF)「PFFプログラム」詳細はこちら≫

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今回上映される5作品はもちろん、レインズ氏絶賛の『丸』を含む
「PFFアワード2014」入選全21作品は、
12月13日(土)よりスタートする「第36回PFF」全国開催にてご覧いただけます!

北野監督や世界の映画人たちが注視する日本の若手監督たち。
12月からはそんな監督たちの作品が一堂に会す「第36回PFF」に、ぜひご来場ください!


≪第36回PFF全国開催≫

【京都】京都シネマ
<第一部>12月13日(土)~19日(金)
<第二部>2015年1月3日(土)~9日(金)

【名古屋】愛知芸術文化センター
12月18日(木)~21日(日)

【神戸】神戸アートビレッジセンター
12月20日(日)~23日(火・祝)

【福岡】福岡市総合図書館
2015年4月24日(金)~26日(日)

≪「第36回PFF全国開催」詳細はこちら≫