東欧映画、そしてチケットレス入場
昨年のタル・ベーラ『サタンタンゴ』(新作『ニーチェの馬』みてくださいね。『サタンタンゴ』を超える俳優の忍耐力に驚愕しますよ~)上映は、約20年ぶりのPFFでの東欧映画上映でした。PFFの最優先事項は「PFFアワード」。作品選定や字幕制作に膨大な予算のかかる日本未公開作品上映は予算を考えると他の映画祭に任せるしかありません。しかし、東欧映画情報は随時知りたいなあと思っていた矢先、以前、ニューヨークのジャパンソサエティで映画担当をしておられた平野共余子さんが、新宿書房のコラムにルーマニアとセルビアの映画についてお書きになっておられることを知りましたのでご紹介します。
民族の坩堝とも言えるNY。「ルーマニア映画祭」会場には、ルーマニア所縁の人だけでも多くの観客がいそうですね。そして、「英語字幕だけで上映」できれば、どんなに映画祭が組みやすかろう・・・と、やりたい特集をあれやこれやと考えるのですが、ないものねだりはしないのが大人。夢想にとどめる次第です。*昨日、『Fish Tank』と書いていて、イギリス映画も近年日本にめっきり紹介されてないことを思いました。「少女映画特集」とかもあるなあ~とも思ったのですが、考えてみると、過酷な映画が多い。少女を取り巻く世界は、とてもとても厳しいことを再確認です。余談でした。
予算削減と言えば、今年のロッテルダムは、チケットレスに踏み切って、パスホルダーは、映画祭パスに、観たい作品のデータを入れてもらう方式になりました。上映会場入り口では、バーコードでパスの情報を読み取っていくのです。そうすると何が起きるかと申しますと、自己管理しないと「どの作品をどこで何時に観る予定か忘れる」のでした。紙のチケットには、作品タイトル、会場、時間が入っていましたから、それを順番に並べて回れば確認も兼ねて一日を過ごせたのですが、パスに入ったデータを自分でみることは出来ず、あわわわわ。パスのない観客はどうするのかと言いますと、これが、プリントアウトした紙(観る作品のバーコードが入っている)をパスと同じく入り口で読み取ってもらうのですが、この紙が、A4二枚とかになってたりするのです。昨年まで(昨年参加していませんが多分一昨年までと同じはず)のロッテルダムのチケットは、5センチ×7センチくらいでしたので、今年は遥かに紙使ってますねえ・・・あ、今度はお客が紙代負担か・・・。
なんだかね、「これからはペーパーレスになる」と喧伝されていた昔が笑えるほど、現在のほうがいろんな場面で遥かに紙を使っていますよね。プリンターのインクと紙、今や巨大産業ではないでしょうか。そんな万国共通の現実を相次いでみせられたロッテルダムでした。
そしてもうベルリン国際映画祭が始まっています。
マイナス16度。ホテルの部屋にいても寒いという話が聞こえてきます。近年の異常な寒波に、ベルリンの会期変更を求める声もあがるのですが(昔は5月だった)、5月のカンヌ、8月のベネチア、2月のベルリンと、プレミア合戦のトップにいる3大映画祭ですから、その会期の変更は難しいものがあるようです。「せめて12月はどう?」と呟いてみる私でした。
一昨年まで、ロッテルダムとベルリンの間に、一週間は日本に戻ることにしていました。そこに「PFFアワード」の会議のひとつが置かれていましたから。しかしPFF会期の変わった今、その必要もないのに、長年の習慣で今年もつい一週間空けて、明日からベルリンです。しかし来年からは、ロッテルダムは後半、ベルリンは前半と、連続滞在に切り替えようと考えています。あまりの寒さに、一度帰国すると戻りたくなくなってしまうのでした。ヨーロッパに。南極探検に行くわけではないのですけど・・・
今回は、『恋に至る病』のワールドプレミアとなり、追って木村承子監督も出発します。フォーラム部門です。ここには、日本から他にも長編映画4本が招待されています。フォーラム事務局は、舞台通訳や、ゲスト担当などの対日本語関係セッティングがしっかりしており、心配なく映画祭を過ごせるのですが、ふと気付くと、他の長編作品監督は、岩井さん、藤原さん、舟橋さん、ヤンさん、みなさん言葉が堪能。もしかして、木村監督は、日本人ゲスト担当をしてくださる近津さんを一人で独占できるのかも?と、彼女の幸運に驚いているところです。近津さんは近年映画祭期間はキャビンアテンダントの仕事を休んで日本人ゲスト担当として参加くださる奇特な方なのです。