白黒映画が流行中?

タル・ベーラの『ニーチェの馬』が立ち見も出る盛況と配給会社の方から伺い、大変嬉しく思っています。
白黒映画です。
先日、フランスのセールスカンパニーの方が、「このところ白黒映画が増えている気がする」とおっしゃっていました。「ハネケの『白いリボン』の影響が大きいのかも・・・」という話でしたが、どうなのでしょうか。

数時間後に始まる米アカデミー賞表彰式で、作品賞の最有力候補と言われている『アーティスト』も白黒映画ですね。ミシェル・アザナヴィシウス監督。東京国際で意表を突くグランプリが話題だった『OSS 117 私を愛したカフェオーレ』の監督ですね。
先日、ベルリン関係で紹介した、メインコンぺのポルトガル、ミゲル・ゴメス監督作品『タブー』も白黒映画でした。『アーティスト』は未見なのですが、『タブー』は、『アーティスト』にすこ~し似ているところがあるのかもしれないな~と勝手に気になってます(が、両作品ともご覧になってらっしゃる方多いでしょうから、頓珍漢でしたらすいません)。

表彰式では、このゴメス監督、受賞したアルフレード・バウワー賞(銀熊)がご不満の様子で、プレゼンテイターのオゾン監督をちょっと困らせていましたが、その受賞スピーチで(最初に発表されたポルトガルの短編映画監督のスピーチにあった、インディペンデント映画製作状況の大変困難なポルトガルという言葉に繋げて)オリヴェイラとペドロ・コスタ、この2監督の存在の大きさを話しておられました。そのとき、日本の監督が同じような状況で先人として名前を挙げるとしたら、どの監督になるのだろうなあ・・・と考えたのを思い出しました。

さて、米アカデミー賞の発表を、日本で一番ドキドキして待っているのは、ノミネート作品を公開する関係の皆様でしょう。特に、単館系公開作品にとって、その宣伝効果は得難い大きさだと想像できます。『アーティスト』、外国語映画賞候補のイラン映画『別離』、公開中の『ピナ』(『ピナ』が長編ドキュメンタリー賞候補なのは意外ですね)などでしょうか。なんだか、私も落ち着かない気持ちになってきました・・・

イラン映画『別離』は、個人的にヒットを願っています。
イランの映画製作状況が好転することを願ってやみません。映画製作状況だけに留まらない、もっと根本的な話なんですけど・・・・
イラン映画といえば、キアロスタミ監督の日本撮影の新作。一体どんな風に「日本」が写っているのか、待ち遠しいです。

「日本」と言えば、本日はヨロヨロと新橋演舞場 中村勘太郎改め勘九郎襲名披露千秋楽へ行って参りました。
遡れば6年前の新春浅草歌舞伎『仮名手本忠臣蔵 六段目』での早野勘平が度胆を抜く素晴らしさで、その後、出来るだけ目撃してきた中村勘太郎さん。昨年3月の博多座『夏祭浪花鑑』にまたまた驚き、今回『春興鏡獅子』すごかった。長唄囃子連がこれまた背筋がざわつく素晴らしさで、「残る人生で邦楽をやる!」と思ってしまうくらい心底震えました。ジャズですね。いや、すごい。その後見を務めた中村七之助さんの『於染久松』(平成中村座1月)も大変ようございました。ありゃ。歌舞伎ブログみたいになってきた・・・
歌舞伎、いったい何からみればいいのと思う方、歌舞伎は他の伝統芸能に比べ結構選択肢が多い。おせっかいですが、まず毎年正月のみ開催される「新春浅草歌舞伎」おすすめします。若手がのびのびと演じておられること、お値段が他劇場ほど負担にならないこと、など、手軽に楽しめます。自分が、仕事柄つい「若手」「新人」に注目するからかもしれませんが・・・
この「新春浅草歌舞伎」、若手を脱すると出演がなくなる定めですので、今年は市川亀次郎さん最後の出演となり、ものすごく暴れておられ爽快でした。亀次郎から猿之助へ襲名となる舞台には、香川照之さんが出演なさるのも話題。先日放映された『贖罪』での怖さの焼きつく香川さんの舞台、目撃できたらと思っています。

え~、話を白黒映画に戻します。
ベルリンネタもこれが最後ですが、映画祭会場のあるポツダム広場には「映画博物館」があります。展示方法が世界でも群を抜くかっこよさで、一度は訪問をお薦めするのですが、内容は、カリガリ博士、マレーネ・ディートリッヒ、メトロポリスが多くを占めていて、もう少し他をみたくなります。が、ドイツ語がわかれば、アメリカに亡命した監督たちの貴重な肉筆手紙なども沢山展示されてときめきます。今回、10年ぶりに再訪したのは、別フロアに設けられている特撮コーナーをもう一度みたかったからでした。レイ・ハリーハウゼンを中心に、ギーガーのエイリアンなど、ジオラマや、ミニチュア、実物など、実に見応えのある展示だったのです。が、しかし、今年はそのフロアが消えていました!2年前に撤収され、今は、テレビ番組のコーナーに変わったということで、特撮が過去のものになったことをしみじみと知らされ、がっくり。
で、白黒映画です。
この博物館に、ムルナウ監督作『最後の人』でエミール・ヤニングスが着たホテルドアマンの制服が展示されているのです。これが、鮮やかな朱色に金のボタンとモール。
何度みても、「ほほー」と思うこの色。歌舞伎や絵画をみても思うことですが、現在に比べ、19世紀までのほうが、人々は鮮やかな色の服を纏っていたのではないかと。ビクトリア時代のイギリスで大流行したというモーヴ色など、今、着る人はめったいにいないですしね・・・
明るい色は心を浮き立たせる効果、確かにあるような気がします。と言いながら、自分も黒黒黒なのを反省・・・
かつてスタジオには、白黒フィルムに色がどう映るか研究していた方がきっといたはず。
そんな勉強をしてみようかと思っている今日この頃です。あ、邦楽もやらなくちゃだし、忙しいぞ自分!
その前に仕事です。