ベルリンからの帰国準備中
ベルリン国際映画祭は、綺羅星の如く賞があります。
日本映画は短編『グレートラビット』と長編『かぞくのくに』が受賞をし、短編『663114』と長編『聴こえてるふりをしただけ』がスペシャルメンション授与という嬉しいニュースとともに(海外の映画祭にいると、自国の報告がつい最優先になるのがおかしですね・・・・)全て賞の発表が終了し帰国準備中です。次作への意欲に火をつける効果大!の金銀の熊の授与されるメイン表彰式へ、今年も木村監督へは出席を薦めながら、実は自分ではあまり参加しておあらず、本年は3年ぶりに会場へ。構成がシンプルに軽やかになり、さくさく進行する変化を体感。メインコンペ作品はわずか2本しかみておりませんでしたので、拝見した一本である、ポルトガル作品『タブー』のアルフレードバウワー賞(革新的な映画に与えられる銀熊)しか反応ができませんでした。この監督が、独特のチャームを放つ人で、スピーチもおかしく(古臭い映画を撮ったのに、この賞で戸惑ってるそうです)、ある出演者かと思いました。機会があれば是非ご覧ください。
準備に膨大な手間隙をかけながら、開幕後はあっというまに終了へと突きすすむ、一種、「花火」のようなイベント「映画祭」を改めて感じる映画祭最終日の訪れです。
『恋に至る病』は、受賞には至りませんでしたが、3回の上映に立ち会うことができた木村監督。共通の質問もありましたが、反応がくっきりと会場によって違うことを肌で感じたことは、得がたい体験だったのではと思います。「質疑応答に慣れたころには帰国」というのも、毎年思うこと。特に本作は、ジェンダーについての興味が高いドイツと、意識せずに暮らす日本という差も、はっきり見える反応でした。
長距離のフライト機内は、映画三昧の場所にもなります。実は仕事柄、後回しになりがちなメジャー系映画を観る時間となり、ロッテルダム往復では『スペースカウボーイ』と『カンフーパンダ2』が印象に残りました。カンフーパンダのほうは、自分のカンフー映画好きという要素と(あ!今回ベルリンでは、ツイ・ハーク監督の新作を拝見できませんでした。残念!)近年のアニメーション技術への畏敬とあわさって強烈だったのですが、『スペースカウボーイ』は、まるで現代日本の縮図であるところが興味深いのでした。メジャー映画の普遍的な物語構造の強みをみるようです。宇宙船はアメリカ、エイリアンは日本の政財界の既得権所有者=新財閥と呼べるような集団、エイリアンの目的である「金」を吸い上げる装置は、あまりにも生生しく迫りました。ベルリンへの往路では、アンドリュー・ニコル監督の新作『タイム』。最近「中世の王様が捜し求めた「不老不死」は、現在でも変わらず人間の求めることなのでは?」と感じているのですが、その感じを具体化されたような映画です。不老不死という言葉は誤解をよびそうなので、「死」の不安を乗り越えるために、肉体にも精神にもお金を注ぎ込む。と言い換えたほうがよさそうです。そして、クレジットカードの種類や限度額が人の価値の尺度になる。そんな現代社会が、『タイム』では「時間」に置き換えられています。旧作『ガタカ』同様、穴だらけのゆるい映画ながら、そくそくと迫るリアリティ。こんな社会にしない選択を続けていかねばなあと感慨深いのでした。帰国便も映画との出会いが楽しみです。
・・・って、映画祭の帰りにいう科白ではないですね・・・映画祭で映画に出会えよ!と自らつっこみ。映画祭は人との出会いが大きな要素でもあり、今年の個人的な驚きは、1992年の招待作品(この年は、招待作品部門で世界で話題のインディペンデント映画をラインナップしました)『Swoon』のトム・ケイリン監督との20年ぶりの出会いでした。最初、昼食の席で一緒になったのがケイリン監督と気づかなかったうかつな私。デビュー作『Swoon』が当時ベルリンのForum部門でカリガリ賞を受賞し、本年は、テディ賞の審査員として参加と同時に、『Swoon』の特別上映があるのです。PFFでの来日後、『美くしすぎる母』の公開でも日本に行き、主演のジュリアン・ムーアが来日できなかったかわりに、記者会見ではジュリアンのさまざまな衣装をかわりに並べたそのシュールなしかし情熱ある日本の配給会社が忘れられないそうです。また、現在コロンビア大学で教鞭をとる監督は、優秀な教え子である日本人女性が果たして日本で映画を撮るチャンスがあるのかを心配しています。が、今回のベルリンでは、日本からの長編フィクション映画は、4作品全て女性監督だったことをお伝えしました。ヤンさん、今泉さん、荻上さん、木村さん。映画状況は変化しています。
2月も残り少なくなりました。3月は京都シネマでのPFF京都開催です。同時期に所沢のイベント『世界が注目する日本映画たち』もやってきます。そして、PFFアワード2012締め切りが。香港国際映画祭もはじまりますし、森田芳光監督の特集も開催されます。
学校は春休み。さまざまな場所で映画を体験いただけるとうれしいです。