ベルリンから その2

朝は早起き、夜は遅寝というか朝寝の本格的にハードな映画祭の日々になってきました。
ベルリンは、1:会場が多い、2:作品が多い、3:ホテルが遠い と「時間調整三重苦」な映画祭。更に、パーティー族ではない私にとって、パーティーハンターの方々の体力には脱帽です。映画とミーティングと、さらにパーティーという、「三種をはしご」して廻る日々の人々に「仕事は体力が勝負なのね・・・」としみじみ感じさせられております。

今回PFFから唯一の出品作品となった『恋に至る病』は、映画祭ラインナップの中で突出したオリジナリティとフレッシュさで大好評!と、自画自賛の恥ずかしいことを書かせていただきます。質疑応答では、木村監督歌まで唄って大受けです。「シリアスな映画の多い年に当たってかえってよかったよ~!」と内心思う私でした。

ロッテルダムでは、「ブラジルと韓国が当たり年では?」という声が聞こえてましたが、ここでは、「ポルトガル?」という声が。ポルトガル。アキ・カウリスマキもポルトガルの農園で暮らしてますね。私の中では『白い街』。リスボンに一度行ってみたいと思いながらはや幾年。うつの友人が、ポルトガルの旅で回復したのも印象に残っています。中世から第二次世界大戦前まで、世界各国を勝手に植民地化していた(いる)多くの帝国(イギリス、オランダ、スペイン、ポルトガルなど)の中でも、最も落日をみている、枯れた国終わった国というイメージが、日本の参考になるのではないかと長く感じているポルトガル。一度滞在して確認してみたいものです。
『山のあなた BEYOND THE MOUNTAINS』というベルギー人の母と日本人の父を持つ監督がポルトガルで撮った中篇作品もロッテルダムの上映から引き続き話題です。もともと東京在住だった監督。ランドスケープデザイナーのお父様が、風光明媚で自給自足の可能な土地への移住を考え、日本中を探しまわる過程で、ここだ!と思った理想的な土地には、必ず原発が建てられていたことから、「もう日本はだめだ」と諦め、ヨーロッパに住処を求め、巡り合ったポルトガルに土地を求めた、という幼い時の体験を回想、確認するドキュメンタリー。日本の映画祭からの問い合わせもかなりあるそうですので、みる事の出来る日も近いと思います。

原発。
今回のベルリンは、邦画とくれば原発がらみという印象で「恋愛映画ですいません・・・」という気分になっている私たちですが、ベルリンで初めて拝見した、岩井監督の『friends after 3.11』船橋監督の『Nuclear Nation』(藤原監督の『無人地帯』は日本で拝見したのですが、こちらには音を5.1チャンネルに再編集して出品しておられることを今日知りました)は、観客の反応が興味深かったです。『friends after 3.11』は、反原発発言、活動をしている方々のインタビューを中心に構成されており、現在第2弾も製作中とのことなのですが、上映後、プロデューサーは「私もこんな活動をしています」というかたがたに囲まれ、熱い時間をすごしておられました。『Nuclear Nation』は、双葉町から埼玉の廃校に避難していらした方々をじっくり追いかけたドキュメンタリー。永遠に追いかけ続ける。完成させる時期を決めていない。というつくりかたをしている作品で、今回第一弾の作品としてまとめるきっかけとなったのは、昨年末の政府の原発事故収束宣言。上映後の質疑応答前には、現在、補償交渉の大詰めで日本を離れられない町長からのメッセージビデオも流され、真摯な雰囲気に包まれました。しかし、海外でみる福島原発事故の記録は、改めて、日本の不思議さを感じます。怒らないひとびと。責任者がみえない状況。男男男の社会。「外国で日本のドキュメンタリーをみるのは、ものすごく面白いかも・・・」と感じる体験です。

フォーラム部門の日本からのもうひとつの長編作品は、ヤン・ヨンヒ監督の初フィクション映画『かぞくのくに』。未見ですが、「最後に泣いてしまった」という声を沢山聞きました。朝鮮半島の南北分断が、ドイツの東西分断と状況が近く理解がしやすいという側面があるからか、ヤン監督はベルリンのレギュラー監督。日本公開も近い『かぞくのくに』は、キャストも魅力的でとても楽しみです。

マーケットが撤収し、いよいよ終わりが実感されてきたベルリン国際映画祭。本年から広報担当者が変わり、世界中の新聞社に8泊の宿泊招待が出たそうですし、上映は英語字幕が中心へと変化、質疑応答も英語になり、プレスは例年より賑わっている感じです。私たちは、18日の上映立会いを最後に帰国です。