のんびり上映、どうでしょう

フィリピンのマニラから、バスで6時間ほどの高地に、バギオという文化芸術活動の盛んな都市があります。山形国際ドキュメンタリー映画祭でもお馴染みの、キッドラット・タヒミック監督の住む土地でもあります。そこに移住した日本人の友人と15年ぶりに再会しました。
私自身はフィリピンはマニラとケソンに20年近く前(ひゃ)、インディペンデント映画の状況をリサーチに行ったことしかありませんが、そのとき、一日に何度も遭遇した「無計画停電」が印象に残っています。自家発電を導入している場所もありましたが、映画学校など、停電中は上映中止(試写をしてもらっている最中でした)で、庭の、マンゴーがたわわに生る木の下で、のんびりおしゃべりをしました。
今もフィリピンでは、無計画停電は当たり前(工場や病院など、切実に困るところには自家発電装置完備)、上水道完備なし水汲み当たり前、自然災害からの自己復旧当たり前、の暮らしを、無理せずゆったり過ごしているそうです。健康であることや、助け合いが重要な生活でもあるでしょう。
この夏、日本各地で強制的な節電や停電が実行されるかもという報道がされています。個人的には極小の電力消費生活なので、健康を害してない限り不便は殆どないかと思っているのですが、仕事のほう、「第33回PFF」会期中に、残暑厳しい日があるかもと想定しなくてはなりません。タイムテーブルを思案しながら、これまで想定しなかった場面をあれこれ想像します。「電気のない映画祭はどうなるか?」「万が一の災害避難はどうするか?」「情報発信方法はどうするか?」などなど。危機管理は、刺激的でとても面白い仕事です。
安定した変わらない日常をキープすることに使うエネルギーが、「必要な場面」と「そうでない場面」がある、としてもいいのでは?と、フィリピンの体験を思い出しながら、考えます。
世界で一番時間を正確に守る国という冠の揺るがない日本ですし、勿論、映画を予定通りご覧いただけるよう、万全を期して臨みますが、万一停電になったなら、「PFF会場でのんびりおしゃべりしたなあ・・・」とあとから懐かしめるような、そんな映画祭にしたいなと、考えました。「電気がないと大変なことになるぞ」と脅かされながら暮らすより、不便を楽しめる状態をつくりたい。映画祭に集うのは、そんな人たちでは?とも思います。

ところで、最近ぽかーんとしたニュースはこれでした。

 党のイメージ刷新を検討する自民党改革委員会(塩崎恭久委員長)は10日、中間提言をまとめた。「古い自民党」から脱却しようと素案で首相経験者の公認禁止や派閥政治との決別を明記したが、派閥幹部や首相経験者の反発に加え、石原伸晃幹事長も認めず、これらの項目は削除された。

 塩崎氏は10日の同委で「どれだけ改革のメニューを盛り込んでもつぶされる」と委員長を辞任。谷垣禎一総裁直属の同委による改革が骨抜きに終わり、派閥やベテラン議員による支配をかえって印象づけた。

 同委は5月26日に発表した素案で首相経験者の公認禁止と派閥政治との決別を目玉に据えたが、「塩崎君が派閥を抜ければいい」(伊吹派の伊吹文明会長)、「無所属でも勝つ。お好きなように」(首相経験者)と反発が相次いだ。
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漫画みたい・・・
「これまで慣れ親しんだ暮らし」を「変える」ことを楽しんでいける、その変化の恐怖を和らげるサポートができるのが、エンターテインメントであり、文化芸術なのだろうなあと思いながら、あまりの現実のとんでもなさに、企画書や、脚本を書いておられる方々はお悩みではないかと想像します。
こんなとき、もしかしてはっ!とその悩みから解放される映画は、『ふゆの獣』?ドロドロ恋愛映画by内田伸輝監督。
何故か今、この映画が浮かんできました。