数字

ブエノスアイレス国際インディペンデント映画祭での『家族X』コンペティション部門出品にあわせ、吉田光希監督がアルゼンチンへの旅に出ました。カナダ・トロントでのトランジット数時間をあわせ、片道30時間を超える旅です。往復で3日が費やされると思うと、ちょっと腰が痛くなりました・・・
ブエノスアイレスまでの「作品」の旅は何度かありますが、「監督の招待」は初めていただきました。得がたい体験であることを祈っています。

私の南米体験は、10年前のブラジルのサンパウロ(短編映画祭に参加しました)しかありません。LAで乗り換えて向いました。映画祭への海外からのゲストは集団行動をさせられること、車の窓にも鉄格子がつけてあること、休日に開かれた骨董市の価格の驚くほど高いこと、などから、よく聞く「南米の貧富の差は激しい」という印象は変らなかったのですが、実は南米の中産階級層は拡大を続けており、現在貧富の差が最も大きいのはロシアとアメリカとイランだという話を聞きました。特にアメリカの変化は大きいらしい、と。

米総人口の1%の最富裕層が、全国民の年間収入合計額の25%を稼ぎ、全資産の40%を持所持している、と。1985年にはこの1%の最富裕層は、総収入の12%の稼ぎで、総資産の33%を所持していた。つまり、1%の最富裕層の収入はそれから18%増加し、同時に中産階級の所得が減少している、と。
そして、この「18%」という数字は、米国の経済成長に近い数字であり、つまるところ、経済成長の果実はすべてトップ1%の金持ちの懐に入った=富の独占が加速している、と。
また、この独占状況は、19世紀より悪くなりつつあるのではないか、と。
更に、連邦議員のほとんどが1%の富裕層に所属している、と。
平等、チャンス、という言葉がアメリカの形容詞につかなくなって久しいのも、むべなるかな、と納得する数字です。

お金ついでに、原子力安全委員会の委員報酬がひとり約1,650万円(年収)ということを聞き、「この金額の制作費もない映画が沢山ロードショーされるてるよう~!」としみじみしました。
本来"億"単位欲しい映画製作費を、その10分の1,100分の1で乗り切るのは、もう珍しくない現実は苦いのですが、しかし一方で、同じ1,650万円という金額で、もっと多彩で可能性のあることが映画には出来ますね。そのことを追求して行こうと改めて思います。

もうお金の話は置いておいて、少しほっとした数字です。
東北大学には、夏目漱石の幼少からの書籍資料が驚くほどの数収蔵されています。実は私は漱石ファン。できれば東北大学図書館で漱石資料の番をして残りの人生を過ごしたいと妄想したりするのですが、残念ながら司書の資格も、学芸員の資格もありません(映画祭ディレクターは資格のいらない仕事です)。それで、ずっと漱石資料の損傷がどの程度がが気になっていたのですが、仙台の友人が親切に確認してくださったところ、5冊ほど補修しなくてはならないものが出た程度だとのことでした。
二度と大きな地震が東北地方で起こらないことを改めて祈ります。

東京は、ここ数日の強風と本日の雨で、折角の桜が花見に興じることも出来ずに散っていっています。被災地の蔵元から、宴会をしてお酒を飲んで欲しいというメッセージが出ていましたが、本日は利き酒会に参加します。また好きなものの話で恐縮ですが、東北の日本酒はしみじみ美味しい。振り返れば、一番愛飲しているのは福島のお酒で、奥の松、飛露喜、大七など、呑み飽きることがありません。

ところで明日、高円寺でおおきなデモが予定されています。
近年PFFの会場でオフィシャルカメラマンをやっていただいている内堀さんが写真を撮るそうなので、週明けにご紹介します。
http://www.magazine9.jp/matsumoto/110406/