第20回PFFスカラシップ作品『家族X』いよいよ撮影開始

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最新PFFスカラシップ作品『家族X』の撮影開始を明日に控え、オールスタッフが集まりました。イン前恒例の御祓いをぴあで行ったのです。何よりも大切な現場の安全を祈願するのですが、しみじみ興味深い習慣です。無宗教と言われながら、生活のあらゆる場面で、神仏やら霊やらの話が自然に出てくる日本の面白さを感じること、それを外国人に指摘されること、多いです。

実は映画祭スタッフも、映画製作スタッフも、どちらももう既にくたくたのふらふらな感じで、アワワワしている今日この頃ですが、「忙しい」とは「心を亡くす」と書き、「慌しい」とは「心が荒れる」と書くくらいだから、気をつけようとひっそり言い聞かせる毎日です。漢字の力でしょうか。
漢字といえば、先日ちょっと息抜きに入ったお店で、高校生くらいの娘が、母親らしき人にこんな話をしていました。「女の子の名前に"子"をつける風習は、「子」の字を構成してる「一」=生まれた最初のときから、「了」=人生が終わるまで、一生「子」の字の前につけた字のことが続くように、という願いで定着したんだよ」と。つまり、「美子」なら「ずっと美しく」、「和子」なら「ずっとなごやかに」という願いですね。たまに外に出ると、いい話が聞けるなあと、しみじみして仕事に戻ったのでした。(子のつく名前が激減したのは、気になるところですけれども・・・)

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それはともかく、『家族X』は、PFFアワード2008の審査員特別賞を受賞した『症例X』の吉田光希監督による長編映画で、今夏のPFFのクロージング作品。7月29日夜の上映です。
『症例X』は、科白を削ぎ落とし、人の動きと空間で見事に母と息子の日常をみせてくれましたが、『家族X』も、静かで強靭な映画が生まれる予感がします。
タイトルにもなった「家族」を演じるのは、南果歩さん、田口トモロヲさん、郭智博さん。
実は吉田監督は学生時代に塚本晋也監督の現場で働いた経験があります。それもあってか、撮影は塚本組の志田貴之さん。そして主演の田口さんも塚本監督との縁が深いですね。※写真は今朝の吉田組オールスタッフミーティングです。

縁で言えば今年のPFFの特集企画である若松孝二監督と縁の深い足立正生監督の『幽閉者』では、岡本公三をモデルにした主人公を田口さんが演じておられます。
その足立さんの特集が、6月に渋谷のシネマヴェーラで展開されます。勿論、無敵のコンビである「足立正生・脚本」&「若松孝二・監督」の作品も含まれます。6月のシネマヴェーラと、7月のPFFで、このコンビの重要な作品の多くを観ることができるわけです。

PFFの今年の一番大きな招待企画は若松孝二特集です。現在、ネガしか存在しない作品からのニュープリント製作にも初挑戦。ソフト化されていない作品の上映とあわせ、レア感満載です。また、My Best Wakamatsuと名付けた、若松監督ご指名の監督たちの選ぶ作品上映と対談も実現。石井岳龍監督、瀬々敬久監督、阪本順治監督が登場します。残念なのは、園子温監督のスケジュールがあわなかったこと。ちなみに園監督が迷わず選んだ若松作品は『ゆけゆけ二度目の処女』。詩人・園子温らしい選択です。(『ゆけゆけ二度目の処女』は、シネマヴェーラの足立特集にラインアップされますよ)

今年の若松特集は、若松監督をなんとなく怖いと思っている、若松未体験者に参加してほしいと願いラインナップをすすめています。怖くないんです。若松孝二。是非一度お試しください。