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橋口亮輔監督×鈴木敏夫プロデューサー「映画にとって、新しい表現とは何か?この壮大で永遠の課題に、答えは出るか?」

第38回PFFのプログラム「映画のコツ~こうすればもっと映画が輝く~」の一企画として、橋口亮輔監督とスタジオジブリの鈴木敏夫プロデューサーにご登壇いただきました。今回お二人に与えられた対談テーマは“映画の新しい表現”。さて、お二人の考える映画の新しい表現とは?そして、そこから見えるずっと変わらない表現とは?会場で語られた貴重なトークをご紹介します。

取材・文=金澤誠
※本レポートは「キネマ旬報」(2016年11月上旬号)からの転載です。

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映画の新しい表現とは……

『ウィークエンド』

『さざなみ』のアンドリュー・ヘイ監督が、ゲイクラブで出会った青年2人の奇跡の週末を描いた作品。ゲイ版『ビフォア・サンライズ』と評され、世界中の映画祭で数々の賞を受賞した。

橋口亮輔監督(以下、橋口):PFFディレクターの荒木さんから“映画の新しい表現”というテーマをいただいて、何か参考作品を上映したいと言われた時に、『ウィークエンド』が浮かんだんです。僕はアンドリュー・ヘイ監督の『さざなみ』を観て素晴らしいと思ったんです。その監督の出世作になったこの映画は、どういうものなんだろうと興味がありました。

鈴木敏夫プロデューサー(以下、鈴木):いい映画を紹介していただいて、ありがとうございました。ゲイのカップルのラブストーリーだと思いましたけれど、僕は仕事の関係でハリウッドの方たちと付き合い始めて、20年くらいになるんです。するとハリウッドにはゲイの方が多いですよね。でも彼らが作る映画は男女の愛だったりして、何か偽って作っていらっしゃるんだと思っていたんですよ(笑)。そういうことを常々感じていたので、こんな映画がちゃんとできるようになったのはいいことだと思いました。

橋口:昔は同性愛を描く映画は低予算のインディペンデント作品だったんですが、去年くらいから『キャロル』とか『リリーのすべて』とか、一線級の俳優たちがゲイやレズビアンの映画をやるようになりましね。

鈴木:やはり時間が必要だったんでしょう。

橋口:また僕は、『ウィークエンド』を最初に観たとき、ジェーン・カンピオン監督がブレイクする前に作った『ルイーズとケリー』(86)を思い出したんです。これは思春期の女性二人を描いているんですが、普通なら二人が出会って、友情を育んで、どうなっていくかという描き方をすると思うんですけれど、ここでは二人が疎遠になった今から始まって、時間が逆行していってラストシーンは、彼女たちの出会いが映し出される。こんなに美しい出会いだったのにって、観ていて胸が引き裂かれるような思いにさせられたんですよ。『ウィークエンド』もいろんな想いがあって、最後は一番最初の場面に戻っていくという描き方をしていたものですから。ただこれが“映画の新しい表現”なのかと言われると、そうは思わない。でもゲイならだれでも日々感じるようなことが織り込まれていて、アンドリュー・ヘイ監督は自分のアイデンティティを確立するような作品を、このスタートラインで作ったと思いました。またヘイ監督は次の『さざなみ』で、レベルがグーンと上がっている。作家としての“個”がきちんとあってスタートする人は、何かのきっかけがあれば急激に伸びていくんだと感じさせました。

鈴木:僕は“映画の新しい表現”ということを念頭に置いて観たんですけれど、何が新しいのかわからなくて(笑)。結局、こういう映画が作れるようになったことが新しいのかなと思ったくらいなんですけれど。

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