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海外映画祭レポート

海外で上映するために、必要だったいくつかのこと

文:鶴岡慧子(PFFアワード2012『くじらのまち』監督)

リニューアル第二弾は、PFFアワード2012で『くじらのまち』がグランプリを獲得し、第23回PFFスカラシップ作品『過ぐる日のやまねこ』を監督した鶴岡慧子さんからのレポートです。
大学の卒業制作として製作し、当初は英語など他の言語の字幕がついていなかった『くじらのまち』が、様々な困難を乗り越えて、どのように数多くの海外映画祭で上映されていったかを、自身の反省を踏まえて語っていただきました。

PFFアワード2012に、『くじらのまち』という作品を出品しました、鶴岡慧子と申します。今回のレポートでは、『くじらのまち』を海外映画祭へ出品した経験をもとに、<海外で上映するために、具体的にどのような準備が必要だったか>をまとめてみたいと思います。内容が所々、失敗に基づく反省文になりますので、こういった部分はぜひ反面教師として参考にして頂けると幸いです。

始めに、ことわり(言い訳)をさせて頂きますと、『くじらのまち』をPFFに応募したその当時、私は作品のデータをどのようにパッケージしたら良いのかの知識が全くなく、「HDcam」や「DCP」が何の事かも分からず、とりあえず編集素材をそのままブルーレイとDVDへ焼く方法だけを覚え、立教大学での卒業制作上映会以降、「この作品が上映される機会が一回でも増えれば嬉しいけど…ダメもとじゃ」というなんともいい加減な構えでありました。今では考えられませんが、「作品を上映する」という事への意識がとても低かったのです。その所為で、痛い目をたくさん見る事になり、また周囲に多大なご迷惑をおかけしました。デジタルの時代で、なんでも手軽にできると言われますが、覚える事はたくさんあるので、しっかりデータ関連の知識を整理しておくことは、のちのち役立つことだと痛感したのでした。
それでは、前置きが長くなりましたが、映画祭上映準備の行程を振り返っていきます。

英語字幕作成について
釜山国際映画祭での鶴岡慧子監督。

まず始めの項目は<英語字幕作成について>です。
2012年7月、PFFアワードへの参加決定が決まるとまず、入選監督の顔合わせ会がありました。そこへ出席した際に、PFFディレクターの荒木啓子さんから、「釜山国際映画祭から招待を受けています」とお話を頂きました(まったく予想していなかったことなので、とても驚きました)。その時点では、『くじらのまち』にはまだ、どこの国の言葉の字幕も付いていなかったのですが、PFF側が、釜山国際映画祭のプログラマーが来日された際に、同時通訳で内容を説明しながら作品を上映して下さったことがきっかけでのオファーでした。映画祭によっては、<英語字幕がついていること>が応募必須条件になることが多いのですが、こう言った形で字幕を付ける前に作品を観て頂ける機会を作ってもらえたのは、本当に幸いでした。
さて、釜山への出品が決まったので、まずは早急に英語字幕を付けてください、とのお達しがありました。PFF側からは、もし英語字幕を付けてくれる当てがなかったら、プロの方を紹介できますので相談してください、ともお話を頂きましたが、その当時私はまだ学生だったので、プロへ依頼するには、お財布と相談する必要がありました。ひとまず自力でなんとかしてみますと答えたものの、英語字幕などそれまで考えた事も無かったので、どうしたら良いものか…と考えながら帰り道を歩いていたら、ふと、ある考えが浮かびました。
私は、高校時代、演劇部に所属していたのですが、ひとつ上の親しい先輩に、大学へ進学された後にアメリカへ留学され、翻訳の勉強をされている方がいることを思い出したのです。彼女の名前は安達妙香(たえこ)さん。私は、高校時代、安達先輩が書いた文章や詩を読むのがとても好きでした。作家としてもとても尊敬している方で、英語も堪能。さっそく安達さんに連絡をとってみました。すると幸いにも、すぐに「やってみたい」とお返事を頂く事ができました。
安達さんと、パートナーの三好翔さんのお二人で翻訳をして頂き、お友達のネイティブの方にもチェックして頂いてから、2晩徹夜して自分で字幕を打ち込みました。私は字幕作成ソフトの使い方を知らなかったため、編集素材の上から直接文字を入力していきました。
★ちなみに、安達さんと三好さんは、HybridCreatures(ハイブリッドクリーチャーズ)という団体を主催されていて、現在映像制作や字幕翻訳・作成のお仕事をされています。

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