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PFFディレクターBLOGRSS

2016/03/25 10:17:02

助け合いたいなあ、映画祭や映画製作。ありえないと言われても・・・

一昨夜、こんなニュースをネットみて、一体、何がどうなったらこうなったのだろうかと呆然としつつ、ここでは当事者の言葉は見えないので、追っての報道を待とうと思いつつ、奇しくも、PFFの公募締め切り日に重なるニュースで、なんだか胸が痛かったのですが、
【東京アニメアワードが世界からの応募357作を審査せず 混乱のまま終了】
偶然昨夜、このことについてテレビニュースへのコメントを求められました。
PFFアワードの予備審査員を体験くださった方が、TV局の方に「映画祭の審査について話せる人を紹介してほしい」という相談を受け、私を推してくださったのです。「PFFはみんな必死で審査していますよ」という言葉を添えて。

お電話いただいての取材では、「映画祭ではこんなことはよく起こるのでしょうか?ないとは思いますが」という素朴な確認質問から始まり、こちらから、いろいろと"審査"というものについてお話し差し上げた結果、「TVニュースで言葉を使うことができるか」というご相談をいただき、何とか言葉を連ねてみたのですが、やはり、何が起きたのかきちんと知らないのに、そのことに対してのお話しをすることは不可能でした。
それで
●映画祭は、高名なカンヌでもベネチアでもベルリンでも、そして私たちのPFFでも、寄せられた映画をどうやって漏らすことなく見尽くして、どうやって、世界を驚かせる作品や作家を紹介できるか、に命がけですよ
●映画祭の仕事で、「映画祭上映」は実は仕事のごく一部、氷山の海に見えている先っぽの部分のようなもので、そこに至るまでの準備と、その根本を支えるセレクションが、「映画祭の仕事」ですよ。地味でこつこつとした仕事です。そこ、かなり理解されていないかもしれない・・・
といった、常識についての話しをすることしかできませんでした。
あら?今思うと、この例えは、氷山ではなく、大根とか人参とかの根菜類にしたほうがよかったかもしれないですね!

実は、そもそも長くテレビなしで暮らしており、テレビに不慣れな私。今回の取材は、「東京都の予算」についてのコメントも期待されていたようで、ますます困ったなと。
というのも、公的資金が映画祭含む文化に使われること=国民が、例えば、映画をみたり、本を読んだり、音楽をきいたり、文楽をはじめとする伝統芸能を体験したりすることに使うこと、そんな"あってもなくてもいい"と言われがちなことに、私たちが時間や収入を使うゆとりが生まれる為に、公の補助が使われることは「世界平和に繋がる」と信じている私としては、公的資金が使われる映画祭あるいは文化をネガティブに扱われたくないのです。
世界平和、という言葉を使うのは、誤解を生じがちですが、つまり、映画や書籍や演劇や音楽などなど、人間が語り、記録し、自らの肉体を動かすもの、これらレンジの広い体験には、その作品に現れる人々の個々の差異を知る力が大きく、また、そこにある多彩な国や時代を超えて迫る普遍的な人間の営みは、個人では実際に体験できない様々な世界の事象を知ることを可能とし、同時にそれは受け取った側の膨大な知識となり、そして、それがひいては、心のゆとりと平和に繋がると信じるからです。つまり「何があっても冷静に目の前の現象を受け止め、対処するという態度への準備」そして、更には「多様で多彩な世界を楽しむ準備」そして、「穏やかで平和な心の持ちように繋がる」と益々思うのです。
つまり、大変効率のいい公的予算の使用方法のひとつが、文化に向けたものだと思っております。外交にも、大変役立つスキルです。

話は戻りますが、冒頭のニュースを見たときに、最初に湧いた疑問は「なぜ誰もなんとかしようとしなかったのだろうか?この映画祭に関わる人全員が放置をよしとしたわけはないだろうに」ということでした。そして、次に「ちょっと相談してくれればよかったのに・・」ということでした。審査に意欲のあるかたがたをご紹介できると思いました。余計なお世話ですが・・・でも、余計なお世話は必要な時代ではないかとも思うのです。言い換えれば「困ったときはお互い様」の精神。それは映画祭や映画製作で、今こそ活発に発揮したい精神ではないかと思えてなりません。映画製作の規模が縮小し、雇用が縮小し、専門的な学校を出れば就職先があるという常識の通用しない映画界。そこでは自ら映画を製作する自主制作は殆ど常識となってもいます。実は現在、商業映画も自主映画も、映画を支えようという志の人たちが必死で様々な現場を走り回っています。すでに、対抗ではなく、共存の時代に突入している映画世界。もっともっと気楽に力を貸しあえる世界になりたいなあと、しみじみ思うのです。

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本年のPFFビジュアルに変身してもらう、渡部満画伯
の新作「眠れるボヘミアンを訪れる奈緒子」が
届きました!サイズはS100号。海外で益々人気の
渡部画伯の奈緒子シリーズ。ただいまデザイナーさん
の手で、映画祭ポスターへと変身中です。
ともあれ、「第38回PFF」は、9月10日(土)から23日(金)京橋の東京国立近代美術館フィルムセンターでの開催が決定しました。
世界で一番丁寧に作品を拝見するシステム「PFFアワード2016」のセレクションも始まりました。「1作品を最低3名が、途中で切ることなく完全にみる」というPFFの"非効率"なセレクション方法は、他の映画祭が呆れる、世界でも類のない時間の使い方です。が、世界が求めるのは、「みたことのない映画たち」「驚愕の新人監督」。効率がいいと言われる"最初の10分だけでわかる"という観賞方法では、新しい映画との出会いは難しいのではないかな?との心配から、毎年改良を重ねてこの方法に行き着きました。
本年「PFFアワード2016」の入選発表は7月を予定しております。
どうぞお楽しみに!

もうひとつお知らせです。
このブログの国際映画祭の使い方 その④として、カンヌについての回を準備中です。少々お待ちください。

プロフィール

PFFディレクター
荒木啓子 Keiko Araki

雑誌編集、イベント企画、劇場映画やTVドラマの製作・宣伝などの仕事を経て、1990年より映画祭に携わる。1992年、PFFディレクターに就任。PFF全国開催への拡大や、PFFスカラシップのレギュラー化、海外への自主製作映画の紹介に尽力。国内外で映画による交流を図っている。

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