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2010/03/02 16:34:27

蔡明亮&李康生によるマスタークラスを行いました

「JAPAN国際コンテンツフェスティバルにおける国際人材育成事業及び国際人材交流事業」(主催:ぴあ株式会社・共催:NPO法人映像産業振興機構(VIPO))の一環として、ふたつのワークショップを企画したことは以前にもお伝えしましたが、まず、去る2月23日&24日の二日間で展開した「MASTER CLASS」をご報告します。

tuxaiws02.JPG講師は、台湾からお招きした蔡明亮(ツァイ・ミン・リャン)監督と、蔡監督作品の主演俳優であり、監督としても活躍する李康生(リー・カンション)さんの2名。映画製作状況の大変厳しい台湾で、自身の創作を自力で追及する蔡監督の知恵と体験を、同じく厳しい状況で悩みを抱える日本の若い映画を志す方々に分けていただければと、「実作者」に限り30名を招待しました。
会場は、東京国立近代美術館フィルムセンターの小ホール。蔡監督が自身で公開も手がけるきっかけとなった作品『ふたつの時、ふたりの時間』(2001)をはじめ、フランスとの合作である最新作『顔』製作に繋がった作品の上映もフィルムで行うという贅沢な時間となりました。

初日23日は蔡監督おひとりで、二日目の24日は、蔡監督と李氏おふたりで、受講者の質問に答えて行くという方法ですすみました。通訳として、台湾をはじめ中国語圏の監督たちに絶大な信頼を受ける小坂史子さんに来日いただきました。
まず、蔡さんの非常に丁寧な答えに感動。質問者の意を汲み、具体的な体験を交えながら、時に30分も答えが続きます。
初日の印象的な言葉をいくつか挙げます。

・「感動させる」ことを目的とした映画製作がつくり手を観客をおかしくさせている。自分はつくらなければと思うものをつくるだけだ。
・映画を目標にしてはならない。映画は"到達目標があり、そこに至るプロセスをひとつひとつ潰して行けば完成する"というものではなく、映画は人生であると受け入れることである。
・映画が映画館で上映されるのではなく、美術館に作品として収蔵されるということがこれからもっと始まってよい。私は今映画の新しい上映のされ方について挑戦している。

そして、一部では大変有名な話なのですが、蔡監督たちは、自分たちの映画を、自分たちでチケットを手売りして動員を図ります。その活動についても、詳しくお話くださいました。

tuxaiws01.jpg・『ふたつの時、ふたりの時間』は初めて自分たちで製作した作品だったので、公開も初めて手がけてみて、劇場のブッキングが難しいことに直面した。それで、映画館を一週間単位で安くない値段で借りることになった。次にチケットを売り出すと、最初の一週間で5枚しか売れないことに仰天した。それまでの作品も動員は振るわなかったが、今度は自分たちの死活問題なので、本腰で取り組もうと思った。まず、出演者も一緒にゲリラで人の集まるところでチケットの手売りをした。一緒に写真を撮ったりサインをしたりもどんどんやった。次に、映画や演劇、芸術系の学校に連絡して、講演や時には上映をさせてもらった。そこで、特別に許可を貰ってチケットを売った。1000人集まっても、30人でも、同じ労力をかけた。今は、大体、公開が決まってからの1~2ヶ月でこういった講演に70箇所は廻るのが習慣になっている。また、映画館のない街や、島に、映写機とプリントを持って巡回興行も行っている。そうやって、現在はまず、1万枚のチケットを売ることが出来るようになっている。
tuxaiws03.jpgしかし、何度かの体験でわかったのは、この1万人は、増え続けないということだ。最初の1万人が何千人か増え続け、2万人になるということは起きず、人は入れ替わってもずっと1万人のままであることが最近よくわかってきた。ただ、自分で自分の映画をみせる活動をして、色々な発見や出会いがあった。演劇学校で上映と講演をやったときに、そこの教師から「あなたの映画は全く演技というものを否定していると思っていたので、学生には絶対に観てはならないと話していたのだが、それが大きな間違いであるとわかった」と謝罪されたりした。自分の作品を観たことがなくても、勝手に想像している人が多いのを、変えていけているという実感がある。

さて、人口二千万人の台湾に比して日本はその六倍の人口一億二千万人。
その日本でも、一万人の動員は、非常に困難な昨今です。それを、単純に人口比で言えば日本での六万人くらいに当たる数を動かす蔡監督たちの活動は、確実に台湾の何か「創作」に対する理解を少しづつ変えていくのではないかと思います。

すいません。長くなってしまいましたので、二日目を駆け足で紹介します。
24日は、主演の李康生、(愛称シャオカン)を迎えたこともあり、演出に関する質問も多く、前日の経験から、答えも短めに進みました。
以下、すごくおおざっぱにまとめます。

・李康生が、最初の数作品は一生懸命脚本を読んで参加したが、近年では全く読まず、やってくれと言われることをその場でやっていること
・監督が、『楽日』での陳湘琪の役を、まわりがどんなに絶賛しても納得できず、それが何故か悩みながらラッシュをみたら、「かなしすぎる」からだと気付き、それ以降彼女もリラックスしてよい演技になったこと
・撮影に際しては、現場を何度も何度も訪ね、よく観察し続けること。『顔』の製作前には、3年間ルーブルに通い続けたこと。日常的に場所と人をとにかくよく観続けることが大切なこと
・多くの人に自分の作品を気に入ってもらおうと思わないこと。見知らぬ何万もの人を想定して映画をつくることは不可能であり、自分の周りの20人に理解してもらうためにつくることが、非常に大切であること。

などをお話くださいましたが、トータル通訳入れてですが5時間以上お話いただきましたので、とてもここに全部は紹介できません。出来れば第32回ぴあフィルムフェスティバルのカタログに採録したいと考えています。
終始笑顔で熱く語る「昔は嫌だったけど、最近はアーティストと言われるとちょっと嬉しい」蔡監督と、物静かで言葉数も少ないけれどしっかりした李さん。李さんの最新短編映画には、蔡監督が主演しており「時間はかかるけど悪くない演技をする」と李監督に評されていました。
もう家族と言っていい、キャストとスタッフで生み出される蔡明亮映画。新作がますます楽しみになる二日間でした。

tsaiws06.jpg*珈琲をこよなく愛する蔡監督は、李さんと女優の陸奔静さんと3人で、コーヒーショップ「TSAI LEE LU 蔡李陸」を開店しました。最後の写真は、お土産にいただいたショップオリジナルの珈琲と、監督オリジナルレシピのクッキーです。


プロフィール

PFFディレクター
荒木啓子 Keiko Araki

雑誌編集、イベント企画、劇場映画やTVドラマの製作・宣伝などの仕事を経て、1990年より映画祭に携わる。1992年、PFFディレクターに就任。PFF全国開催への拡大や、PFFスカラシップのレギュラー化、海外への自主製作映画の紹介に尽力。国内外で映画による交流を図っている。

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