悲しいだけ

監督:豊島圭介

兄に、彼を、取られた。

いつも苛立ち、スリルのためだけのスリや強盗を強要する女。抵抗しながらも、限りない寛容で共犯を続ける男。相手を繋ぎ止めておくために必死なのは、男か女か。果てしなく膨らみ続けるように見えた苛立ちと寛容の間に入ったのは女の兄。しかし、両親の墓前で女に謝罪させる彼もまた、自分の愛を繋ぎ止めるために、ウソという罪を犯すのだった。
説明的なセリフはほとんどない。余白の多い映画ながら、登場人物それぞれの気持ち、境遇を伝えて余りある。構成、脚本や演技力という映画の基礎力の確かさが、新しい三角関係の誕生をクールに、そしてリアルに描き出すことを成功させている。

  • 1994年/17分/カラー/8mm
  • 監督・制作・脚本:豊島圭介
  • 撮影:葛生 賢 音楽:原野守弘
  • 出演:奥村康代、関口卓臣、原口大史

海外映画祭

1995年 フィルムビデオ95 イタリア