なぜパウエル&プレスバーガー、そしてカーディフなのか、と問われたら
第34回PFFぴあフィルムフェスティバルのコンペティション部門「PFFアワード」16作品を発表し、引き続き「招待作品部門」を、少しづつ公表しています。
最初に、「映画のルックを浴びてみる!」と題した、製作&監督コンビ、マイケル・パウエル&エメリック・プレスバーガー、そして、撮影のジャック・カーディフの3名に焦点をあてる企画をアップしました。先日も書きましたが、映画の「画」について、気になることが増えてきた結果、生まれた企画です。
近年、上映作品のスチルを並べていると、まるで「1本の映画」にみえると感じることがありました。
画の印象が似ている。
「撮影時に採れる音だけに頼らず、"音"にひと工夫してみると作品展開の幅が拡がりますよ」という「音に拘ろう」キャンペインを長く続けてきたPFFですが、最近は「"画"にもひと工夫すると、チャンスが拡がりますよ」という「画に拘ろう」キャンペインをしたいなあと感じていました。
同時に、近年「写ってしまった邪魔なものを消す」ということに手間暇かける現場が多いことを耳にすることが増え「その労力は必要なのか?」と疑問に思っていました。
だああ~と撮って、そのあと、マイクであるとか、スタッフであるとか、写りこんだ邪魔なものを消す、ということに、人手と時間をかける。
でも、その時間とお金を、俳優や美術やお弁当や編集や音楽や、色々と「映画を構成する」ものに使うほうがいいのでは?と思えてならない私。どんな仕事の現場でも、取り掛かる前の「設計」と、スタッフの「完璧を求める」テンションって、大切だと思うからです。
そんなこんなで、「映画のルック」がひとつのテーマとなってきた昨今ですが、そのための企画とは何か?と考えていたときに、ふと思い出したのが、マイケル・パウエルです。
ユニオンジャックの意匠が昨年からブームになっていることも関係しての連想だったかもしれませんが、イギリス映画の黄金時代を支えた巨匠。突出した"つくりこみ"を行い、何かにとりつかれ、こだわる人間を独特の美学で描いた巨匠。
キャリアの途中で、自らに必要な能力を持つエメリック・プレスバーガーを発見し、製作&脚本&監督の名コンビ「パウエル&プレスバーガー」を組み、自らの製作会社「アーチャーズ」を設立し、数々の大ヒット作品を生み出したふたり。
そんな二人の頭の中にある映画に、具体的な画を持ち込んだ、撮影監督ジャック・カーディフ(後に映画監督としても活躍しました)。
フェアで視野の広い映画人3人だと感じています。
この3名が関わった作品は、4本(『老兵は死なず』『天国への階段』『黒水仙』『赤い靴』)しかありませんので、ともかく、小さくても特集として成立させたいと考えてました。
フィルムで、それぞれ2回づつ上映する計画です。
あわせて、マイケル・パウエルがまだ先の見えない新人監督だった時代に、低予算プログラムピクチャーの1本としてつくった『ヒズ・ロードシップ』が60年間の行方不明の果てに発見されましたので、特別上映します。
アメリカ映画をパロディーするような、パウエルならではのおかしみと、映画的な演出へのあれこれの工夫が満載された小品です。
プリントの交渉、スチル写真集め、パウエル、プレスバーガー、カーディフの写真集め(あの時代の監督らしく、みなさんピシ!としたスーツ姿で新鮮です)など、やっとめどが立ち、チラシやカタログも形になりそうです。
チラシは来週印刷に入り、8月9日に完成配布を目指しています。
チケットの発売は、8月11日を予定。
本年は、フィルムセンター大ホールだけでなく、小ホールでも数日間展開する計画のPFF。
プログラム発表をお楽しみに!!!
それにしても、『老兵は死なず』は1943年。第二次世界大戦のまっただなかに、この作品が生まれるイギリスって・・・・としみじみします。
戦争中シンガポールに派兵された小津安二郎監督が、押収した倉庫にあった、『風と共に去りぬ』『ファンタジア』をみて、「日本は負ける」と映画三昧で暮らした逸話を思い出しました。
ともかく、是非みてほしいパウエル+プレスバーガー+カーディフです。