塚本晋也監督+川原伸一プロデューサー+石井岳龍(聰亙)監督
昨日ご報告した蔡明亮&李康生MASTER CLASSに引き続き、26&27日には同じく「JAPAN国際コンテンツフェスティバルにおける国際人材育成事業及び交際人材交流事業」の一環として、ワークショップ『自主でできる音創りの可能性に挑戦する』を開催しました。
会場は、渋谷のとある会議室。受講者は、今回も実作者に限り17名という、濃密で贅沢なワークショップです。
昨秋10月24&25日、塚本監督と川原プロデューサーには、実際に短編映画を完成するというワークショップを行っていただきました。その際、最後の仕上げを駆け足で終わったことにいささか悔いが残ったこともあり、今回は「音」という映画で最も大切なもののひとつに集中してのワークショップとなった次第です。が、しかし、題材がこと「音」ですから、ここで文字で紹介するのは非常に困難ですので、ざっとした内容をご紹介します。
塚本作品は、アフレコでの製作が多いのが特徴です。アフレコでの製作をするか、同録での製作をするか、その判断も映画製作では必要です。そういった話も交え、公開を5月に控えた『鉄男 THE BULLET MAN』の一部を教材にして、科白、環境音、効果音、音楽、などをどうやってミックスしていくかについて、実際に素材と、その作業の過程をみせて下さいました。
今回は、タイトルにあるように"自主でできる"=自分のPCで映画をどこまで創れるか、がテーマです。川原プロデューサーは、そのために入手したPro Tools LE(3万円程度)などの機能を具体的に紹介してくれます。
その後、受講者の質問に、おふたりに丁寧に答えていただきました。
印象的だったのは、デジタル機器が一般化してきた頃の『ブレア・ウィッチ・プロジェクト』(米・1999年)をご覧になった体験です。画は家庭用の小型カメラで撮られた誰でも可能なクオリティでも、音は非常によく計算され構築された立派なものだということに感嘆し、「音がしっかりしていれば、劇場公開において非常に強力な武器になる」ことを痛感したというお話です。 二日目、27日は、石井監督がゲストとして登場し、「デジタルは貧乏人の味方だ」というキャッチフレーズのもとに、自分で整音ができるソフトSound BoothやFinal Cut Proでの簡単なミキシング方法について紹介してくださり、塚本監督もメモに余念がありません。
また、アフレコ、同録、そしてその二つをあわせたような岩波映画出身の監督たちが多用したという(具体的には黒木和雄監督の『竜馬暗殺』など)「撮影したその直後、役者さんたちがまだそのテンションの中にいる間に、科白を録ってしまう」という方法についても検討されました。 そして、ご自身の作品『シャッフル』(1981)の一部を題材に、アフレコのシーン、同録のシーンなど、具体的に、なぜその方法を選択したか、どう撮ったかについて説明下さいました。
ただ、二日間とも、何度も出たのは、「科白がきちんと聞こえることが最も重要」です。また「現場で環境音を沢山録っておくこと」も繰り返し語られました。
今回は、自分で音も徹底的に創ってみることを選択した場合、その作業は、緻密で膨大であろうことが実感できた二日間であり、また、音も、結局は「自分は何を創りたいのか」という根本的な課題の元にあるものであり、それだけ特化したものではないということを、再度確認させられる時間となったと思います。
こうして、23&24日のマスタークラスと、今回のワークショップと、4日間の濃密な時間を過ごしてみると、映画を一本つくりあげるまでの、精神的、経済的、肉体的なテンションの継続と、イメージ=自分の欲しいもののキープという、映画監督に求められるものの重さ、そして映画を創るということの困難さ、それと同時に、その創造的な深み、を、改めて確認する体験となりました。
『鉄男 THE BULLET MAN』
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石井岳龍(聰亙)監督
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