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PFFアワード

PFFアワード作品紹介

PFFアワード2014

作品名 監督名 作品名 監督名
『暁の石』 清原 惟
飛田みちる
グランプリ
『ナイアガラ』
早川千絵
審査員特別賞
『埋み火』
山内季子 『流れる』橋本将英
『沖縄/大和』比嘉賢多 ジェムストーン賞(日活賞)
『ネオ桃太郎』
小田 学
観客賞(京都)
『怪獣の日』
中川和博 日本映画ペンクラブ賞
『波伝谷に生きる人びと』
我妻和樹
『還るばしょ』塚田万理奈 『反駁』伊之沙紀
『彼は月へ行った』藤村明世 観客賞(福岡)
『ひこうき雲』
柴口 勲
映画ファン賞(ぴあ映画生活賞)、観客賞(東京・名古屋)
『ガンバレとかうるせぇ』
佐藤快磨 審査員特別賞
『人に非ず』
矢川健吾
『Super Tandem』小林勇貴 『丸』鈴木洋平
『多摩丘陵の熊』岡 真太郎 審査員特別賞、観客賞(神戸)
『モーターズ』
渡辺大知
『小さな庭園』斎藤俊介 準グランプリ
『乱波』
中島悠喜
エンタテインメント賞(ホリプロ賞)
『独裁者、古賀。』
飯塚俊光    

応募総数 528本 入選 21本

『暁の石』

監督:清原 惟、飛田みちる

お金も携帯も家族も世間も置いてきて、
少女たちは微熱のような夏とたわむれる

母が失踪して3か月の佳子は、干上がって水際に大量の魚の死体が浮かぶ不気味な沼で幼馴染みの光子と再会する。佳子は職にも学校にも付かず、光子は夏休みを迎えたばかりだった。かつてのように、沼地、図書館、「神殿」と呼ぶ廃屋、森などで無為の戯れに興じる2人。一方で母の部屋に籠り、母の実体を感じられなくなった佳子は、光子を伴ってある行為を行う決意をする。
この映画は通常想起されるような母の不在への閉塞に向かわず、少女たちの戯れを通じ、生活の何処にも属さぬ、あてどなき時間そのものを鮮やかに掬い取ってみせるという大胆な映画的挑戦に満ちている。しかしその感触は、戯れに興じる少女たち同様に殊の外軽やかで、フランス辺りの一連のバカンス映画をも彷彿とさせ、良い意味でどこか日本映画らしさを欠いている。
文:江川太洋(フィルムラボスタッフ)

2014年/30分/カラー 英題:Dawning Stone
監督・脚本・撮影・編集:清原 惟/監督・録音:飛田みちる
出演:坂藤加菜、橋本日香里、菊沢将憲、吉村英治

【貸し出し対象作品】料金:15,000円(税別)/貸し出しフォーマット:ビデオ

審査員特別賞

『埋み火』

監督:山内季子

奥底に埋めたはずの火の灰が、彼と再会して熱を持つ。
私が静かに発火する

田舎町のスーパーで魚をおろし続ける比富美は、小さなアパートで寝たきりの母親を介護中。東京から戻った大輔との再会で、心の奥深くに埋めていた希望の光に手を伸ばそうとするが…。20代半ばで介護に縛られる閉塞感を、手を洗うという行為で表現。比富美の未来に光が射すよう心を込めてエールを送りたい気持ちにさせられる。
江口のりこに少し似た風貌の比富美は、魚の生臭い匂いが染みついた手をゴシゴシ洗う。帰宅すると、母親のおむつを替え、再び手をゴシゴシ。大切な母親が快適に過ごせるよう心をくだいているが、介護生活の不安を聞いてくれる友人はいない。この生活からいつか解放された暁に自分に何が残るのか、そもそも解放されるのか、解放を望んでいいのかも、わからない。そんな暗闇の絶望感のなか手を洗いつづけるけなげな姿に、涙を禁じ得ない。
文:片岡真由美(映画ライター)

2014年/32分/カラー 英題:Banked Fire
監督・脚本:山内季子
撮影:足立友梨/編集:本田佐恵/録音:横田昌信/照明:尾山颯介/制作:小川 学/助監督:石黒裕章、田中 篤/撮影助手:小寺安貴
出演者:武田多佳、松原大貢、飯尾弘子

劇場公開
海外映画祭
2015年 ジャパニーズ・フィルム・フェスティバル・インディア 2015 (インド)

【貸し出し対象作品】料金:15,000円(税別)/貸し出しフォーマット:ビデオ

『沖縄/大和』

監督:比嘉賢多

僕とあなたを隔てるラインはどこにある?
当事者目線の切実さで、気づき、気づかせ、始めてゆこう

沖縄に生まれ育った監督は、沖縄と本土の間にある心理的な境界線の存在を仮定し、それを追求するドキュメンタリーの制作を始める。そこで出会う人々の言葉や顔から浮かび上がってくるのは、沖縄と日本本土の政治的な歴史ばかりではなく、豊かな民俗学的考証でもあり、そこに生きる個々人それぞれが持つ小さな歴史でもある。
この映画を見て、いや、映画の枠を越えた日常生活でも否応なしに気づかされるのは、隔てられた沖縄と大和のそれぞれの内部でさえ、いかに人々は分断され孤立させられているかということだ。沖縄の内部で基地反対派と推進派は一本の道路を挟んで対立し、同様のことは本土でも起こる。この「沖/縄/大/和」、あるいは「お/き/な/わ/や/ま/と」とでも言うべき絶望的な状況を真摯に見つめることからしか、連帯は始まらない。
文:結城秀勇(ライター・映写技師)

2014年/99分/カラー 英題:Okinawa/Yamato
監督・撮影・編集:比嘉賢多
出演:安富租里穂、安富租 肇、安富租ミツ、小橋川共行、比嘉賀代子、比嘉好富

【貸し出し対象作品】料金:15,000円(税別)/貸し出しフォーマット:ビデオ

観客賞(京都)

『怪獣の日』

監督:中川和博

優れたSF映画は現実の陰画。
この怪獣への対処法は、この国の現実そのもの

内閣府からの発表で映画は始まります。太平洋沖に現われた未知の怪獣は、自衛隊と米軍による作戦でなんとか活動を停止させることに成功したと。そして、その遺骸がやがて日本の沿岸に漂着すると…。これは、その沿岸の町を舞台にした、さまざまな立場の人々を描いた物語です。
無策な政府、その政府からの補助金を目当てに、怪獣を建屋で囲んで観光名物にしようとする住民一派。全く未知の生態であるが故、完全に死んでいるとは確約できないと、反対する主人公たち…。そこで交わされる議論と対立は、明らかなメタファーとなって鑑賞者に投げかけられます。そう、この映画は決して無邪気な特撮エンタテインメントではありません。作り手の静かな怒り、商業映画ではなかなか見受けられない気骨というものを、是非ご覧ください! これぞ怪獣映画スピリッツ!
文:真壁成尚(映像ディレクター)

2014年/30分/カラー 英題:Day of the Kaiju
監督・脚本・編集:中川和博
撮影:田中平太/録音:米澤 徹/照明:藤井聡史/VFX:上田倫人/CGI:田村 健
出演:イワゴウサトシ、三沢幸育、山下ケイジ、高木公介、松澤輝朝、たなべ勝也

劇場公開
海外映画祭
2015年 ヘルシンキ シネ・アジア (フィンランド)

【貸し出し対象作品】料金:15,000円(税別)/貸し出しフォーマット:ビデオ

『還るばしょ』

監督:塚田万理奈

日常の中で少しずつ溜まっていく澱を解放させた瞬間、
泥にまみれて彼女は太陽を見上げた

歯科衛生士として働くちかげは毎日を淡々と過ごしている。女友達の家に泊まりに行く彼氏を許し、付き合っている意味を同僚からも問われ、姉には「ちかげってなんかつまんなそーだよね」と言われても、それが幸せとも不幸とも感じていなかった。そんな日常が少しずつ、ちかげ自身を受け入れさせなくなっていく…。
矛盾を抱えながら生きている人間の複雑な内実を、忘却の彼方においやるのではなく、映画の中の主人公を通して炙り出す。それを見ている私たちの中から引き出される言葉もまた、根の深い領域からやって来るだろう。自分でも気付かない何かが違和感を引き寄せるようにして…。『還るばしょ』は、我に還るという感覚に限りなく近い響きを見るものに残す。
文:小原 治(映画館スタッフ)

2014年/36分/カラー 英題:Color My World
監督・脚本・編集:塚田万理奈
撮影:名古屋純子/録音:伊東俊平
出演:佐藤由紀子、手塚けだま、村上 玲、中田くるみ、藤井佳代子

【貸し出し対象作品】料金:15,000円(税別)/貸し出しフォーマット:ビデオ

『彼は月へ行った』

監督:藤村明世

トランシーバー、公園、夏のプール。
痛くて優しい夏の日々を、僕らはきっと、忘れられない

親友・優一を亡くして他人に心を開かなくなった主人公・順は、子供時代に優一と遊んだトランシーバーでのアポロ通信ごっこを独りでいつまでもやっていた。ある日、また学校でこっそりトランシーバーで喋っていると、トランシーバーに謎の返信が…女の子の声だ。とまどう順だったが、やがてその声だけの少女に心を開いてゆく…。
月に行ってしまった(死んでしまった)親友とトランシーバーで交信を続けようとする主人公・順は、学校のプールの中という、ある種月世界にも似た無重力空間の中でついに親友の影と再会する。「なんで死んだんだよ!」この美しく切ないシーンを淡々と且つユーモラスに描いてゆく筆致は、23歳の若い監督ならではの切実さにあふれている。
文:小林でび(映画監督・役者)

2014年/19分/カラー 英題:THE SUMMER MOON
監督・脚本・編集:藤村明世
撮影:山田星太郎/編集・助監督:中村麻理子/録音・プロデューサー:高橋宏文/助監督:松島里奈/プロデューサー:森川 保
出演:石津侑輝、天内千尋、小川向陽、長谷川優人、中村カズ

【貸し出し対象作品】料金:15,000円(税別)/貸し出しフォーマット:ビデオ

映画ファン賞(ぴあ映画生活賞)、観客賞(東京・名古屋)

『ガンバレとかうるせぇ』

監督:佐藤快磨

爽やかでも健やかでもない。
だから…簡単に、朗らかに、ガンバレとか言うな

映画(にかかわらず)において、「部活動のキャプテンと女子マネージャー」というのは割とよくあるシチュエーションなのだが、描写が丁寧であれば、無理して物語を作ろうとしなくても作品は成立するのだと改めて思う。
この作品の良さはまず、物語の中の人間にしっかりと実感があること。そして、その人間にほどよい色気が漂っていることだと思う。色気といってもそれは熟した男女の湿度の高さではなく、澄み切った空気に似た質感だ。全体的に抑えられた演出で、だからこそ匂い立つ人間の情なのだろうと思う。キャプテンとマネージャーの真剣な表情や物を見るときの視線は、ただ真っ直ぐなだけではない。情熱というのとも少し違う。それは静かな闘志のようなもので、青い炎のゆらめきに似ているな、と思う。しっかりと対象に向き合う者だけがする目つきだった。
文:森下くるみ(文筆家・女優)

2014年/70分/カラー 英題:Don't Say That Word
監督・脚本・編集:佐藤快磨
撮影:加藤大志/録音:内田達也/プロデューサー:渡邊翔太
出演:堀 春菜、細川 岳、布袋涼太、柳沼 侃、江國亮介、山城ショウゴ、石上真紀子、ミョンジュ

劇場公開
海外映画祭
2014年 第19回釜山国際映画祭
New Currents部門
(韓国)
2015年 ジャパニーズ・フィルム・フェスティバル・インディア 2015 (インド)

【貸し出し対象作品】料金:15,000円(税別)/貸し出しフォーマット:ビデオ

『Super Tandem』

監督:小林勇貴

この善行はだれのため?若さと善意と衝動が承認欲求を求めて暴走する
人のために何かしたい。その決意のもとに自警団を結成した大石と悪友荻田。万引き犯を手痛く成敗するも、待ち受けるのは暴走族の復讐劇。それでも己が信ずる方向へ!エロ漫画カラー版制作、深夜のカーチェイス、暴走族とのMCバトル、救急センターへのゲリラ突撃。現実と妄想のラインを超えた強引気ままなストーリー。荒々しく襲いかかる映像と音楽の洪水。迸る勢いが私たちを引きずり込む。
有り余る若さと捨てきれない幼稚さと近しい暴力。監督は地元富士宮に生きる若者たちに愛を持って、時に自虐的なまでに演出し、ひねくれた自身を映画のフレームで見事描ききった。その根底にある純粋な思いは終始一貫している。人のために、善のために動けるか。
一人の青年の全力の叫びが、乗り合せた者に伝播し、世界の願いへと変わる奇跡を見る。
文:木下雄介(映画監督)

2014年/40分/カラー 英題:CRAZY-OISHI & Mr.OGITA!
監督・脚本・撮影・編集・録音:小林勇貴
出演:大石淳也、荻田大輔、石川ボン、佐野由磨、小林直美

【貸し出し対象作品】料金:15,000円(税別)/貸し出しフォーマット:ビデオ

『多摩丘陵の熊』

監督:岡 真太郎

長く厳しい冬が過ぎるまで、熊はこんこんと眠り、生きる力を蓄える
多摩丘陵に暮らす兄と弟。両親の死後、生家である団地に戻り2人きりの生活を営んでいた。兄は恋人が浮気相手と旅行中に事故死したことが原因で失声症となる。季節は冬。弟は兄の回復を待つが…。高台から見晴るかす風景、兄弟が興じる釣り、春の光に溶けかけた雪―─それらはすべて、自然と共に自由に生き死ぬことを肯定している。
言葉の力によりながら、お互いを見つめるまなざしが重要な意味を持っている。声を発することをやめた兄は、「冬眠する熊」だ。言葉を発しない熊は、絵を描くことや贈り物をすることで意志を伝える。兄から贈られた茶色いニットを着て弟が兄と収まる写真は、弟もまた熊であることを示しているかのようだ。弟も兄を見つめることしかできない。観客もまた、それをただ見つめることしかできない。来るべき春を待ちながら。
文:小川原聖子(書店員)

2014年/32分/カラー 英題:Hibernation
監督・脚本・撮影・編集・録音・音楽・出演:岡 真太郎
アシスタント・出演:鈴木佑辰/アシスタント:土井省吾、山本 生
出演:堀井綾香

【貸し出し対象作品】料金:15,000円(税別)/貸し出しフォーマット:ビデオ

『小さな庭園』

監督:斎藤俊介

安らかな安定と不安な自由。小さな主人公が、大きな決断を迫られる
学校で理科の教鞭を執っている者にとって、本作品は実に興味深く、隅々まで科学的好奇心を想起させられた。どこかで見覚えのある造形群は作者の映画体験の蓄積を物語っていると同時に、細胞分裂や地殻変動、エントロピーと不可逆性など、科学的素養の深さに思わず嫉妬する。しかし、その一方で想像と創造が入れ子のように連なり、生命誕生と宇宙創世を匂わせた曼荼羅的世界観は、秩序とは相反する混沌の渦の中に迷い込ませる。“カオス”の対義語を調べてみるとその答えは“コスモス”。この瞬間、主人公である片眼のハンプティ・ダンプティ(勝手にそう呼んでいる)は、まさにカオスとコスモスをつなぐ「LIFE」の存在証明であったと確信した。主人公が目を覚ますといつもの庭園があり、空を鳥がゆらりと泳いでいる。まるで全てを悟った者のように。
文:中山康人(教師)

2014年/12分/カラー 英題:Small Garden
監督:斎藤俊介
音楽:岡本憲昭/サウンドデザイン・ミックス:染谷和孝/2D背景:佐々木達也/2D動画仕上げ:スズキハルカ/ロゴデザイン:恰土希帆

劇場公開
海外映画祭
2014年 第33回バンクーバー国際映画祭
ドラゴン&タイガー部門
(カナダ)
2015年 ヘルシンキ シネ・アジア (フィンランド)

【貸し出し対象作品】料金:15,000円(税別)/貸し出しフォーマット:ビデオ

エンタテインメント賞(ホリプロ賞)

『独裁者、古賀。』

監督:飯塚俊光

絶対的距離感を壊すには、近づくしかないんだよ!
たとえ負けても、叶わなくても

希薄な存在感ゆえにクラスのいじられ役である古賀。古賀をかばったがために、いじめの標的となる女子生徒、副島。2人が惹かれ合う理由は、純粋な恋心か、それとも傷の舐め愛か?愛で(たぶん)世界は変わらない。ならば自分が変わるしかない。きっかけは自己満足でいい。副島さんへの想いを証すため、古賀は変われるか!?
ダウナーかつ正統派(?)いじめ映画を彷彿とさせる序盤から、甘酸っぱさいっぱいのボーイ・ミーツ・ガール的中盤。そして第3の登場人物にして古賀の師匠となる黒柳さんとの『ベスト・キッド』な特訓を経て、いじめっ子カップルとのタイマン勝負…はたしてこれはシリアスなのか、コメディなのか。はたまたそのどちらでもあり、どちらでもないのか? 先の読めない物語なればこそ、物語を語ることへの覚悟と勇気がほの見える。
文:皆川ちか(ライター)

2014年/79分/カラー 英題:Dictator, Koga
監督・脚本・編集:飯塚俊光
撮影:幡川和雄/録音:堂坂武史/助監督:宮原周平/制作:石澤 舞/音楽:小島一郎
出演:清水尚弥、村上穂乃佳、芹澤興人、臼井千晶、輿 祐樹、松木大輔

劇場公開
2015年 7月18日~31日 東京 K's cinema
10月10日~16日 大阪 シアターセブン
海外映画祭
2015年 ジャパニーズ・フィルム・フェスティバル・インディア 2015 (インド)

【貸し出し対象作品】料金:15,000円(税別)/貸し出しフォーマット:ビデオ

グランプリ

『ナイアガラ』

監督:早川千絵

生きている音、生きている私。大丈夫、恐れることなどなにもない
18歳になった女の子やまめは、施設を出る直前に祖父母の存在を知る。祖父は死刑囚で、祖母は認知症。という事実を、驚きも落胆もせず受け入れる彼女の前向きさに、まず引きこまれる。祖母を介護する青年が録音する、街中の何気ない日常の音の愛おしさから、生きている有難みを実感、感動がじんわり胸に沁み込んでいく。
施設育ち、死刑囚、認知症など、深刻なドラマの予感に思わず身構える観客を、鮮やかに裏切っていく。自分の境遇をマイナスではなく、常にプラスで考えるヒロインの思考回路に、教えられることは多い。そこにいるはずのない人が目の前に現れても、怯えず、慌てず、何も問いたださない。そうした彼女の態度ひとつひとつが積み重なって、滝のように炎が流れる花火が「生」そのものに見え、爽やかな夜風に吹かれた心地に満たされるのだ。
文:片岡真由美(映画ライター)

2014年/27分/カラー 英題:Niagara
監督・脚本・撮影・編集:早川千絵
撮影:古賀志信、東村諭弥/録音:鈴木悠也、川崎早也香/制作・録音:佐藤陽一郎
出演:伊丹咲季、星野慶太、河内雅子、実近順次、近藤輝二、多田野曜平

劇場公開
海外映画祭
2014年 第33回バンクーバー国際映画祭
ドラゴン&タイガー部門
(カナダ)
2015年 ヘルシンキ シネ・アジア (フィンランド)

【貸し出し対象作品】料金:15,000円(税別)/貸し出しフォーマット:ビデオ

『流れる』

監督:橋本将英

僕の友だち見つけたよ。心があれば、言葉はいらないはずだったのに…
すぐそばを川が流れる公園で暮らす少年。彼はある時、傍らに置かれた小石の存在に気づく。小石と共に、公園と川との間の狭い空間を転々と行き来する少年。しかし、ある時小石は忽然と消えてしまう。一切のセリフを排し、たったひとりの登場人物と彼の所持する石との不思議な関係を描く。
登場人物の背景もわからぬまま、観客は彼と彼の手に握られた小石とを、そして彼の周りに広がる光景をただ見つめることになる。蹴り上げられたサッカーボールが川の向こう岸に落下する時、寄りかかった木の大きさが引きの画で示される時、ありふれたなんということのない光景が目の前でその空間としての豊かさを押し広げられて行く。最小限の要素を用い、そこから普遍性と壮大さを引き出す本作には、紛れもない才能が宿っている。
文:結城秀勇(ライター・映写技師)

2014年/13分/カラー 英題:Passing
監督・脚本:橋本将英
企画:濱田 壮/撮影・編集・録音:松永 侑/撮影協力:橋本真治
出演:樽見 啓

【貸し出し対象作品】料金:15,000円(税別)/貸し出しフォーマット:ビデオ

ジェムストーン賞(日活賞)

『ネオ桃太郎』

監督:小田 学

俺の、俺による、俺のため(だけの)桃太郎。
各自のエゴが激突するとき、現場は修羅場と化す…

大学の映画サークルの熱き連中が廃工場で撮影中…タイトルは『ネオ桃太郎』、時代劇だ(笑)。監督は夢中過ぎて周りが見えてない。主演は無闇に役に入り込んでいる。撮影監督はサークルOBで扱いづらい。現場で女口説いてる奴がいる…さまざまな撮影アルアルを乗り越えて、さあ『ネオ桃太郎』は完成できるのかーっ!?
劇団兄貴の子供主宰でもあり「本当に笑えるコメディ」を撮る事で知られる鬼才・小田学監督がついにPFFに乗り込んできた!彼が今回題材に選んだのはズバリ「映画撮影」だ。ココで描かれるさまざまは、もしこれがスポーツサークルであっても旅行サークルであっても料理サークルであっても成立する普遍性がある。だから誰もが爆笑しながら涙するのだ! 僕も涙した。そう『ネオ桃太郎』は映画撮影をする全ての者が涙する「爆笑巨編」なのだ!
文:小林でび(映画監督・役者)

2014年/20分/カラー 英題:Neo Peach Boy
監督・脚本・編集:小田 学
撮影:中島元気、春木康輔/編集:長江悠介/助監督:今村瑛一
出演:尾浜義男、山本圭祐、柳沢茂樹、渡 猛、小笠原 結、依田哲哉、青木宏幸

【貸し出し対象作品】料金:15,000円(税別)/貸し出しフォーマット:ビデオ

日本映画ペンクラブ賞

『波伝谷に生きる人びと』

監督:我妻和樹

その土地で生きる困難と、生きる甲斐。
つくり手と対象者たちの信頼関係がにじむ、“生でリアルな記録”

宮城県南三陸町にある波伝谷部落。3.11までの3年間、海と共に生きる人びとの濃密な小世界を一途に追い続けたドキュメンタリー。1年に1度の獅子舞に皆が集まり、家族・親族総出で海の仕事を支え合う。民俗学から出発した我妻監督は、閉じられた共同体特有の原初的な共生のあり方を、人びとの暮らしから凝縮した。共同体が社会の変容とともに衰退して行くなか、人間の蠢く生が露呈する。
養殖で痩せていく海、血が決める共同体のパワーバランス、気づきながらも動かせない現実。波伝谷の人びとが頑に守り続けてきた人と人の共生のあり方にひずみが生まれ出す。ほころびは揺れ動く前からすでにあったのだと痛みと共に思い知る。遠くかけ離れた波伝谷の暮らしも当然我々と同じ時間軸にあることを忘れてはならない。意識を広げれば思いが共有できる瞬間がある。
文:木下雄介(映画監督)

2014年/134分/カラー 英題:The People Living in Hadenya
監督・撮影・編集:我妻和樹

劇場公開
2015年 8月1日~21日 東京 ポレポレ東中野
9月26日~10月2日 愛知 名古屋シネマテーク
10月31日~11月13日 大阪 シネ・ヌーヴォ
11月7日~20日 京都 立誠シネマプロジェクト
12月12日~25日 宮城 桜井薬局セントラルホール
2016年 3月12日~18日 神奈川 横浜シネマリン
3月12日~18日 新潟 シネ・ウインド
3月15日~21日 広島 横川シネマ
海外映画祭

※貸し出しについては、PFF事務局までお問い合わせください。

『反駁』

監督:伊之沙紀

父親不在、学歴重視、母子密着…。
現在日本の極北が箱庭の中に凝縮される

1997年7月、受験地獄の只中にいた沙羅は渋谷の路上で通り魔と遭遇し、思わず呟く。「わあ、自由だ。あの人、自由に殺しまくってる」その場に居合わせた3人の小学生と最高学府で再会し、封印された記憶、過去の所業が、そのうちの1人の杉崎という悪魔の如き男によって、次々と露わにされていく。沙羅は今まで自分の奥底に沈めていた、母に対する真の願望を思い出す。その時、母は沙羅の身を案じ、大学へと向かっていた…。
1組の母娘の壮絶な愛憎を主軸に、人間が人間の精神を蝕み、崩壊させ合う過程を容赦なく抉り出す。瓶、鉛筆、人形などの、不穏さを煽る小道具の用い方も秀逸。人間の深い闇を希求しながらも、映画はその先の人智を越えた運命の領域にまで到達する。奈落に向かって決して逃れ得ぬ運命の無慈悲さ。それが何よりも恐ろしい。
文:江川太洋(フィルムラボスタッフ)

2014年/51分/カラー 英題:Winding Night
監督・脚本:伊之沙紀
撮影・照明:中瀬 慧/編集:和泉陽光/録音・整音:大野裕之/音楽:有田尚史
出演:富田理生、佐藤愛葉、泉水美和子、森田亜紀

劇場公開
海外映画祭
2015年 ジャパニーズ・フィルム・フェスティバル・インディア 2015 (インド)

【貸し出し対象作品】料金:15,000円(税別)/貸し出しフォーマット:ビデオ

観客賞(福岡)

『ひこうき雲』

監督:柴口 勲

生徒が生徒を、先生が先生を演じる。
自らが自らに扮することで見えてくる自分の姿

物語は夏休みの前日。とある中学校の教室で、「修学旅行の予定表」が破き捨てられるという小さな事件が起こる。一体誰が…?しかし、これをきっかけにクラスメイトの心が繋がり、大きな輪となる。
初めて観たのに、どうしてこんなに親しみ深いのだろうと思った。空気の合う人との出会いのような映画だ。それが嬉しかった。この作品では12歳~14歳の生徒がそのまま生徒役を、同じく教師が教師役を演じているわけだが、その演技は奇抜さや小賢しさとは一切無縁。とにかく、とてつもなく素直で素朴、言葉は人肌のように温かくて、微笑みのように柔らかい。健康な血の通った感覚がある。わたしはきっとそのことに一番心を揺さぶられたのだ。彼ら彼女らの経験した夏の1日は、永遠のように切なく、輝かしい。本物の若さに「二度」はない。
文:森下くるみ(文筆家・女優)

2014年/25分/カラー 英題:Contrail
監督・脚本・撮影・編集:柴口 勲
助監督:安達真実子、植木晋太朗/音楽:岡村奈央子/撮影:小畑来夢、坂倉 梓
出演:前田紘輝、川添瑞貴、渡邉 凌、吉村颯真、宮野志都、川本美樹

【貸し出し対象作品】料金:15,000円(税別)/貸し出しフォーマット:ビデオ

審査員特別賞

『人に非ず』

監督:矢川健吾

ヤギを人が撃ち、人をやつが撃つ。
これは殺戮か?それとも生態系の法則か?

小笠原諸島の父島にある観光客向けホテル・ホライズンにひとりの新人従業員がやってくる。彼は、海と山の豊かな自然に囲まれた一見のどかに見える日常生活の裏に、閉鎖的な環境からくる陰鬱な人間関係があるのを垣間見る。それは人知れず、陰惨な事件の萌芽の温床となっていた。
小笠原諸島の雄大な海や山を背景として展開する、ほとんど動機を欠いたまま淡々と行われる凶行と、それらを背後に覆い隠すことでむしろいままでなかった輝きを取り戻す日常とのコントラスト。人間らしいのかそうではないのか。世界のごくごく一部に過ぎない人間の狭い基準によって立てられたその問いが、鳥、獣、虫、あるいは山や海といった、人ではないものたちの間で発せられる時、その意味をまったく変える。
文:結城秀勇(ライター・映写技師)

2014年/65分/カラー 英題:The Brutal
監督・脚本・撮影・編集:矢川健吾
脚本・出演:佐藤考太郎/録音:丸山勝之/美術:新谷 葉/助監督:辻本 守/衣装:石川ひろみ/整音・音楽:浜田洋輔
出演:椎橋綾那、大瀬 誠、よこえとも子、藤枝真樹、高橋有香

【貸し出し対象作品】料金:15,000円(税別)/貸し出しフォーマット:ビデオ

『丸』

監督:鈴木洋平

それは凶報か福音か?私たちを試しに丸はやってきた
平凡な一軒家で発生した父子心中未遂事件。父親のみが銃で自殺し、現場にいた次男・鉄男とその恋人・百合子は、その事件以来、文字通り時間が静止してしまう。記者・出口は独自に調査を進めるうち、不条理極まりない世界へ迷い込む…。それを見ると時間が止まり、世界が歪む。不穏な丸の正体は、観る者の解釈そのもの。
さながら『2001年宇宙の旅』のモノリスのように、鈴木家の空間に突如として現れた球体。しかしもたらしたものは叡智ではなく、静止。父の死と次男の静止によって、それなりに平穏無事だった鈴木家の日常が変化し、真相を追う男をも変えてしまう。クライマックスで対峙する鉄男と出口の殺し合いは、身体の静止者と思考の停止者の、互いの全存在を懸けての闘いに他ならない! ともすれば空気さえも読む私たちを…丸は試してくる。
文:皆川ちか(ライター)

2014年/89分/カラー 英題:OW
監督・脚本・編集:鈴木洋平
共同脚本:小山侑子/撮影:柏田洋平/録音:平井名辰哉/音楽:今村左悶/ラインプロデューサー:上野修平
出演:飯田 芳、木原勝利、池田 将、金子紗里、軽部日登美、村上ROCK

劇場公開
海外映画祭
2014年 第33回バンクーバー国際映画祭
ドラゴン&タイガー部門
(カナダ)
2015年 MOMAニューディレクターズ・ニューフィルムズ (アメリカ)
台北映画祭 (台湾)
ウィーン国際映画祭【ビエンナーレ】 (オーストリア)

【貸し出し対象作品】料金:15,000円(税別)/貸し出しフォーマット:ビデオ

審査員特別賞、観客賞(神戸)

『モーターズ』

監督:渡辺大知

ぼくらの擦れ違いが、やがて季節に変わる。
あなたに会えて、きっとよかった。

田舎の整備工場で働く田中は、うだつのあがらない日々を過ごしている。新入りのタケオもバンドがしたくて仕事をすぐ辞めることになるが、職場の面々は彼を優しく迎える。そんな中、一組のカップルが車の修理にやって来た。その彼女に淡い恋心を抱く田中だったが…不器用だけど愛らしい人間模様が映画の時間を充たしていく。
どんな映画にも終わりがくる。それは寂しいことだけど、優しいことだ。ある限られた季節の出会いと別れを写し取ったこの映画も、やはり83分で終わる。しかし、心の時間に風が吹き込んでくるような感触は、この先も色褪せることはないだろう。彼らのような魅力溢れる人間たちと擦れ違うために、明日も映画を見るのだから。渡辺大知監督のデビュー作『モーターズ』は映画の喜びそのものだ。ブラボー!
文:小原 治(映画館スタッフ)

2014年/83分/カラー 英題:The Motors
監督・脚本・編集:渡辺大知
脚本・録音:磯 龍介/撮影:中里龍造、大竹優輝/照明:高橋純一、中川翔太
出演:渋川清彦、犬田文治、木乃江祐希、前田裕樹、川瀬陽太、鹿江莉生

劇場公開
2015年11月14日~27日東京新宿武蔵野館
12月21日~26日 東京下高井戸シネマ
2016年1月9日~15日福岡中州大洋劇場
1月9日~22日栃木宇都宮ヒカリ座
1月10日のみ 長野 松本CINEMAセレクト
1月16日~22日 神奈川シネマジャック&ベティ
1月23日~29日 愛知 名古屋シネマテーク
2月19日・3月11日 山口 山口情報芸術センター
2月20日~3月3日 京都 京都みなみ館
2月20日~3月3日 大阪 第七藝術劇場
2月20日~3月4日 兵庫 元町映画館
2月29日~3月14日 広島 横川シネマ
4月10日~14日 新潟シネ・ウインド
海外映画祭
2015年 第39回香港国際映画祭 (香港)

【貸し出し対象作品】料金:15,000円(税別)/貸し出しフォーマット:ビデオ

準グランプリ

『乱波』

監督:中島悠喜

愛もなく、モラルも自由もなく、暴力と使命とチャラ銭のみ……
これぞ忍者の最前線!

5分間の壮絶な忍者軍団vs忍者軍団の死闘! 忍者が走る!跳ぶ!手裏剣が飛ぶ!腕が飛ぶ!首も飛ぶ!その超人的アクションは実写では撮影不可能!SFXでもワイヤーアクションでも実現困難であろうリアルな忍者バトルが、手描きのアニメーションで次々と実現されてゆく衝撃!忍者の真実を見たければこの『乱波』を見るべし。
この短編映画が世界中で上映されることを切に望む。『乱波』は世界中の忍者ファンを魅了し、熱狂させるだろう。『乱波』の忍者は地味でひかえめで、同時にスーパーで最強だ。彼らの戦闘スタイルは世界中の忍者ファンに、ジェダイの騎士のライトセイバー戦クラスのインパクトと熱狂を与えるのではないか。そしてあっという間にクラシックになってしまうのではないか。それくらいの説得力と興奮を『乱波』には感じるのです。
文:小林でび(映画監督・役者)

2014年/5分/カラー 英題:Rappa
監督・脚本・撮影・編集・録音・声の出演:中島悠喜
声の出演:妹尾 想、曽根重千代

劇場公開
海外映画祭
2014年 第33回バンクーバー国際映画祭
ドラゴン&タイガー部門
(カナダ)
2015年 ヘルシンキ シネ・アジア (フィンランド)

【貸し出し対象作品】料金:15,000円(税別)/貸し出しフォーマット:ビデオ

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