1. ホーム
  2. PFFディレクターBLOG
  3. 2012年4月

PFFディレクターBLOGRSS

2012/04/28 11:14:56

映画への敬意が高まる

メジャー系の映画を、つい後回しにしてしまいます。一種の職業病でしょうか。
そして、出来るだけ白紙で劇場に行く習慣が更に嵩じています。タイトルとスチル、あるいは予告編、で勝手な想像をしながら劇場に行き、驚く。これが楽しみにすらなってきました。
『戦火の馬』は、ディズニーの『三匹荒野を行く』のように、「馬が我が家目指して旅する映画」かな?大陸の戦場を抜け出してどうやってドーバー海峡を渡りイギリスへ戻るのだろうか?ドーバーを泳いで渡る?船に紛れ込む?とかあれこれ想像。
実際は、ぜんぜん違いました!!当たり前か。
今、私の中での「スピルバーグ最高傑作」と位置づけられています。絶賛『戦火の馬』。

馬をどうしたらこんな風に撮ることができるのか、その技術にも呆然とする『戦火の馬』
猿がどんどん好きになる『猿の惑星 ジェネシス』
ちょっと違うけれど、車なのに魅力的『カーズ』
人間ではないものの魅力は、近年の撮影技術の進化で、更にアップしそうです。
(あ、でも、古式の撮影と思われますが『木漏れ日の家で』の犬、素晴らしかった。)

そして、『ヒューゴの不思議な発明』も大絶賛中!
一瞬だけ出演する、スコセッシの満面の笑顔に、更に心掴まれ暖かい気持ちで劇場を出ました。
スコセッシは、映画の修復保存活動でも有名です。2007年のカンヌ国際映画祭で発表されたこの活動(「世界映画基金」を立ち上げ、第一作は『赤い靴』でした)は、現在も着々と世界中の名作の修復保存を継続しています。

昨年末、突然私を襲った「ミュージカル映画みます!」熱。
実はこれまで、重力に囚われずに踊れるフレッド・アステアしか興味のなかったミュージカル。きっかけは、ふと「ジュディー・ガーランド」という存在に惹かれたから。そこから「少しでも早くミュージカル映画観ておかなくては・・・」と加速していったのは、彼女の出演した『スター誕生』でさえ、完全な形で残っていないことからです。(余談ですが『アーティスト』は『スター誕生』の4度目のリメイクかと勝手に想像していましたら、これまた違いました)
そんなとき、ジュディー・ガーランドの代表作のひとつである、『イースターパレード』が、前記、修復保存作品の1つになっていることを知りました。DVDの特典映像では、スコセッシとイーストウッドが『イースターパレード』の素晴らしさについて語っています。
あ~イーストウッド版『スター誕生』待ち遠しい!

奇しくも、『戦火の馬』も『ヒューゴ』も、第一次世界大戦が背景です。
第一次世界大戦は、初めて映像記録の残った戦争で、その悲惨さは「映像の世紀」(日本ではNHKで放映され、その後DVD化されたシリーズです)で一部みましたが、シリーズ中最も忘れられない一編でした。
勃発が1914年7月。5ヵ月後の「クリスマスには帰ってくるよ!」と、意気揚々と国を出た=志願兵となった若者たちが、予測もしていなかった4年間の果てしない戦いで、肉体も精神も壊れていった様が記録されています。PTSDで精神病院に収容された若者たちの記録もあります。映像の力を、まざまざと示す記録です。
戦禍を国土に刻まれた国は、日本のみならず、欧州にもアジアにも沢山あり、現在でもアフリカや中東はじめ、各地で無残な戦いが継続中だと思い出します。外国に国土を荒らされていない国ですぐ思い出すのは、アメリカ。荒らしても荒らされない、まさに暴力番長。世界中の植民地から軍隊維持費を集金してる、集金番長でもあります。
う~ん。「番長」って、なんだか妙にノスタルジックな響きですね。三池崇版『愛と誠』では、番長がどう描かれているのか、楽しみです。更にミュージカルということですし。

話しは戻って、今回の『ヒューゴ』。
なんと、これがメリエスに纏わる映画だということさえ、観るまで知らなかった私でありました。知っていたら、ちょっと怖くてまだみてなかったかも・・・・何故なら、メリエス、それは私の超弱点。心の宝だからです。ああ、みてよかった!
そのまま帰宅して、私の中で"メリエス的"なテリー・ギリアム作品を鑑賞。『バンデットQ』という、不思議な日本語タイトルの名作。現在の技術があれば、あんなこともこんなことも出来ただろうなあと、しみじみしてたら、エンディングにジョージ・ハリスンの唄が。はっ!と、この映画の製作がジョージ・ハリスンだったことを思い出したのでした。
ジョージ・ハリスンといえば、スコセッシは彼のドキュメンタリーもつくっていました。ああ、未見。子供時代、ジョージの大ファンだったもので、ちょっと照れくさかったのでした・・・・うかつ。

『戦火の馬』と『ヒューゴ』。どちらもエンディングクレジットが終わるまで、劇場の席から立つ人がいなかったのが、これまた印象に残りました。
映画への敬意をあらためて掻き立てられる、『戦火の馬』と『ヒューゴの不思議な発明』。
単なる映画ファンブログになってすいません。

2012/04/18 13:07:28

明日はカンヌのラインナップ発表ですね

世界で一番有名な映画祭。それはカンヌ国際映画祭です。
映画関係者の一番行ってみたい映画祭。それもカンヌと言っていいかもしれません。
気候はいい、食事は美味しい(ついこれが先に来る・・・)、リゾート感も抜群、勿論映写状態はいい、観客の感能力が高い、映画多すぎて嬉しい悲鳴、有名監督&スターとの遭遇率も高く、散歩するだけで楽しいし、なんだか全体的な高揚感、お祭り感は類がない。そこにいると、不思議と映画の仕事していることを誇りに思う効果がある。そんなカンヌ。滞在経費は他の映画祭より格段にかかりますからお財布が心配ですけど・・・・
と言いながら私は、もう随分とカンヌに出かけておりません。

しかし、エイプリル・フールのカンヌの「漏れたラインナップ」という嘘は、結構世界を駆け巡ったようです。
http://spooool.com/2012/04/cannes-film-festival-in-competition-line-up-leaked-and-translated-into-english/

それに対して、アーティスティック・ディレクターのティエリー・フレモーが怒っている(当たり前ですが)
http://www.deadline.com/2012/04/exclusive-thierry-fremaux-says-no-leak-at-cannes-film-festival-its-all-lies/

こんな騒ぎが起きるのも、カンヌならではだな~と感心しています。
私も、先日、カンヌの某セクションのプログラマーの一人から(どのセクションも、沢山いるんです。プログラマー)、選ばれた日本映画について耳打ちされましたが、口外しないのが映画祭運営者の常識です。

それにしても、一番小さい「監督週間」でも、PFFの10倍か?という予算でありながら半分以下の映画本数の上映。コンペなどの本体でしたら、多分100倍くらいの予算でしょう。う~すごい~。以前、「スポンサー探しに苦労したことがない」と言われたことがあり、腰が抜けそうになりました。
・・・・・あ、いかん。なんだか僻みっぽくなってきました・・・・
そうなんです。経済的苦労の連続なんです、映画祭運営は。全ての映画祭が同じ悩みを抱える昨今。景気のよい話は、カンヌ、釜山、トライベッカ、ハワイなどで、たまに聞くくらいです。あ、ドバイも。
・・・・なんだか話題がしょぼくなってきましたのでやめます。

大人になっても夢と希望と理想と信念と想像と創作について臆面もなく語る場所が「映画祭」ですので、そこでは、映画や映画監督が、その夢や希望やもろもろの畏敬の対象になります。「人間は素晴らしいものを生むことができる」という前提に立った場所、それが「映画祭」ともいえます。言い換えれば、「人はよきものになっていく」ということを恥ずかしげもなく確認する場所と申しましょうか。う~ん、書いてるとアブナイ感じがしますね・・・
一方、「映画祭」基準で暮らすと、世の中が不思議なものに見えてくるという傾向と申しますか、弊害と申しますか、は、あります。

私自身も、昨今の国内の出来事を目に、耳にすると「狂った世界」としか思えず、困っています。
戦後民主主義教育の成果はなかった・・・・と申しましょうか、世界でも有数の独裁国家に生きているという感を強くすると申しましょうか、江戸時代のまま変化がないことを痛感すると申しましょうか、2012年であることが信じられないと申しましょうか。
国の運営という仕事に携わる人たちの「(実は)何をしていいかわかりません」感、「責任は私にはありません」感、「嘘をつくこと、プロパガンダをすることが仕事です(えっへん)」感、つまるところ「誰か指示してください(強い人についていきたい)」でも「私たちは選ばれた人間で権力行使します(黙って言うことを聞け。いじめるぞ)」感。結局は「自分で考えて仕事したことがないのでよくわからない(所属するものがないと何もできない)」感。
という、混乱した子供な感じ。あ、職場の身近にもいませんか?そんなオソロシイ人。つまり、自分のことしかみてない人。
しかし、想定「将軍」も瓦解し始めている、幕末みたいな21世紀に、まだ「20世紀再び」と視野狭窄になってるというか、自暴自棄になってる為政者と共倒れ、と申しましょうか、その犠牲になるというかは、嫌だなあ・・・・
現実をみたくないなら、せめて現在を活写する映画をみてほしい!と声を大にしたい次第です。

私が多分小学校低学年のとき、年賀状に紛れこんだ、他家宛のあまりにも稚拙な葉書を笑ったところ、明治の末生まれの祖母に「この人は多分、文盲で、これだけ書くのも精一杯だったのだ。昔は読み書きできない人が沢山いたのだ。戦争が終わって、誰でも教育を受けられる、選挙に参加できる、好きな職業につける、病気になっても怖くない、乞食のいない、民主主義の社会になったのは、素晴らしいことなのだ」といったことを、ゆっくりと諭されたときの記憶が甦って驚いています。
「素晴らしい社会」
現在の目指すべき素晴らしい社会とは何なのか。
少なくとも、病人が出ると、親が子を、子が親を殺すという選択に追い込まれる社会、自殺が普通になる社会、老後の心配で頭がいっぱいなり貯金にはげみ、それを狙って詐欺が横行する社会、大人も子供もいじめが大好き、な社会、ではないことは確かではないかと思う次第です。

あれ?何故カンヌの話がこんなところに来たのでしょうか・・・・

映画に限らず、あらゆるエンターテインメント、あらゆる芸、クリエイティブ、表現、芸術、と呼ばれるもの、そしてスポーツや武道などの力が重要だとする仕事に長く従事してきました。同時に、その力によるコミュニケーションを信じています。
これは、川喜多記念映画文化財団のHPにのった最新の映画祭レポートです。
http://www.kawakita-film.or.jp/kokusai_3_2012_dauville.html
日本の様々な表現者が、世界で愛され、評されることが、日々積み重なっていることの一例を、もっと多くの人に知ってもらいたいなあと思ってリンクしました。

う~ん、なんだか、ナショナリストみたいに聞こえますね。
しかし、自分の暮らす場所が、愛と平和と敬意に満ちた場所であってほしいというのは、人類の希求でありましょう。
あら!今度は宗教者みたいになってしまいましたね~
困ったね。
何はともあれ、ちょと長すぎる本日のブログでした。

あ、被災地復興の宝くじの売り上げが1000億円を超えたのに、現地へは100億円ちょっとしか届かないという嘘か本当かわからない記事がありました(あり得るぞ!と思っていますが)。宝くじも集金マシーンのひとつですが、少なくとも購入するときは「夢」を買うマシーン。その夢への投資を、文化芸術芸能にまわす宝くじ発売は、実は私の願いのひとつです。思い出したので書いてみました。その使用におかしなことをなくするのが優先ですけど。

さて、カンヌ発表から数日遅れて、PFFの名古屋と福岡のプログラムを発表する計画です。
名古屋開催は、東京から近いということもあり、多数の監督が参加くださる予定です。是非、今必見の映画を、今ごらんください。
引き続き福岡会場へ移動する私たち。新幹線に乗る計画です。
映画評論家の相田冬二さんによると、現場に参加された『僕達急行A列車で行こう』の撮影に、劇中と同じく、マツケンはほんとに東京から博多まで新幹線で移動したそうです。九州では、あの映画に描かれた、黄色い一両だけの電車に乗って、あの無人駅に降りたいものです。そして、次の列車までの一時間、ぼーと読書。う~ん、7月だと、かなり暑そうですけどね。

2012/04/06 00:59:08

香港映画をみた

香港にいて香港映画をみるのに、何の不思議があるのか・・・と思われそうですが、近年、滞在時期に街の劇場から香港映画が消えていることが珍しくなかったのです。

香港国際映画祭にも、昨年の香港映画を一挙上映するプログラムがあるのですが、映画祭のはじまり時期に設定され、後半に参加しがちな私はずっと逃してきました。そこで、街の映画館でみようとするのですが(無茶苦茶ながら英語字幕がついての上映なので助かります)、近年はめっきり香港映画が減りまして、みるものがないという悲しい状況が続いたのでした。

さて今年は、4本あります。
残念ながら全部みるやりくりができなかったので、パン・ホーチョン監督の新作LOVE IN THE BUFFに行きました。2年前の作品、LOVE IN THE PUFFの続編。香港映画の王道、ラブロマンスコメディです。
前作では、いきなり建物内一斉禁煙になった香港で、裏通りの喫煙所が近隣のオフィスやショップの従業員たちの新たな出会いの場所になることをうまく使ったラブストーリーでした。そのときに知り合ったカップルの現在を、あれから急速に普通になった、北京あるいは上海への異動をフックに描いた作品です。
パン・ホーチョンの時代への嗅覚に、今回も「うまい!」と膝を叩くのでした。新作には、中国のスターも勿論キャスティングされ、北京の名所や独自の文化も漏れなく映画に取り込まれ、ほんとに「うまい!」の連続です。(実は私は"北京&台北食い倒れ"が趣味なので、北京の街にもちょっと親しみがあるのです)

同時に、30歳台のためのラブストーリーつくりの伝統が脈々と受け継がれる香港にも感服しました。日本にないもののひとつです。なかなか科白もニクいものが多い。この「LOVE IN THE ~」シリーズ、長く続いて欲しいなあと願ってしまいました。
*誰か映画祭上映あるいは、DVD発売いかがでしょうか?このシリーズ。

そんなこんなで、もう帰国です。
今回は、滞在が短すぎて悔いの残る毎日でした。短編も含めると500作品にのぼろうかという香港国際映画祭。会場が広く点在するため移動が手間なこと、どこにいっても冷房が効きすぎて骨まで冷えること、食べ物が美味しくて食事時間を大切にしたくなることなど、最大一日5作品みられるはずが、実はいささか難しいのが現実のこの映画祭。少し長く滞在したいなあと、また今年も思いながら終わるのでした。

2012/04/04 22:40:39

香港でカラオケ

既報のように、『恋に至る病』が香港国際映画祭Young Cinema Competitionで審査員特別賞をいただきました。今年から名称がリニューアルされたこのコンペ。昨年までは「デジタルシネマコンペティション」という名称で、その時代からほぼ毎年、何らかの作品を出品してきたPFFです。
賞は、「グランプリ」と「審査員特別賞」の2つのみ。大きさの少し違うトロフィー、少しランクの違う賞品、そして副賞として現金が少し贈られます。
今年の賞品は、Nikonのデジタルカメラセット。グランプリにはD7000、審査員特別賞にはD5100が贈られました。
8年前の『ある朝スウプは』の受賞の際には、賞品はSonyのビデオカメラ=香港仕様のPALシステムで、高橋監督がPFF事務局に寄贈してくださったのを思い出しました。また、中国映画の『牛革』とどちらがグランプリか紛糾して、最終的に2作品ともグランプリとなった異例の年でした。昨年は、『世界グッドモーニング』が、スペシャルメンションを授与されています。

このYoung Cinema Competitionのほかに、香港にはDocumentary Competition(ドキュメンタリーコンペティション), Fipresci Prize(国際批評家連盟賞), SIGNIS Award(人道賞), Short Film Competition(短編コンペティション)があります。
本年、日本映画では、他に短編グランプリを山村浩二監督『マイブリッジの糸』が獲得、人道賞のスペシャルメンションが、是枝裕和監督『奇跡』に授与されました。

表彰式のあと、会場では引き続き台湾映画「10+10」の上映が。
後ろ髪をひかれつつ、「日本のアジア映画祭できっとやるはず!」と願いを込めて映画祭ディナーに移動します。席が一緒になった香港のPR会社のOLさんと話していたら、やはり今、広東語では商売にならず、中国語と英語は必須だと。ディナーのあとは、なんと、初体験「香港でカラオケの夜」に突入。

審査員のひとりで、ハワイ映画祭のプログラマー、アンダーソン・リーさんの熱意に誘われて大人数でカラオケです。アメリカ、フランス、韓国、香港、日本と、多国籍の大グループ。部屋にトイレがついていてびっくり。そして、世界共通で盛り上がるのは、ビートルズ、U2、Queenなど。もともと外国語の曲がそれほど入っていないので、選択肢はそこそこのため、一番盛り上がりそうな唄を選べなかったりするのですが、アジアで誰でも知っていると聞いていた「昴」は、やはりすごかった。まず、日本語の歌詞の上に、ローマ字表記でルビが振られている。他にはないのでびっくり。そして、「あ~この曲知ってる」という人の多いこと!なぜか唄える人の群れに、むちゃくちゃ盛り上がるのでした。「リンダリンダリンダ」も結構いけました。
そんな私は、部屋でオリジナル鼻歌をうたうのは得意ですが、カラオケからはとても縁遠い暮らし。しかし、今回、音楽のコミュニケーション力に脱帽したのでした。
そして、かいがいしく飲み物の世話や、選曲の世話をしてくれる人がいて、映画祭スタッフかと思っていたら、The Hollywood Reporterの人だったのには驚きました。「"客に飲み物を絶やさない"という中国人気質にスイッチが入っちゃうのよね~」という姉御な感じにしびれるのでした。

これまで映画祭中盤に設定されていたコンペティションの発表が本年からは後半になり、映画祭も明日が最終日。私も、映画を観る事に集中できるのは明日のみ。明後日には帰国で、いささか焦っているところです。
香港の観客は、とにかく若い。『恋に至る病』の観客は、ほぼ全員高校生と大学生のようにみえました。30歳以上が見当たらない雰囲気なのです。この観客層が、毎年毎年入れ替わっている感じがするので、映画祭の最古参、アーティスティックディレクターのリ・チョク・トーさんに聞いてみました。

「香港は、日本のように年金や手当てが充実していないので、仕事についたら、自分の人生を支えるために少しでもお金を稼ごうとそれでいっぱいになり、映画祭に来なくなる。また、日本では大きな映画観客層であるシニア層は、香港では悠々自適という生活は獲得が難しいため、映画祭に来ない(何らかの形でずっと働いている人が多い)。
そのような環境で、映画祭は、エンターテインメントに限りのある香港では、若い人の年に一度のイベントとして盛り上げるのが使命になる。しかし、昼間に映画祭上映に集ってもらうためには、学生でも会社勤めでもない人に来場を促す必要があり、そのため、デイタイム上映の料金を、少し安く設定することをやっている。」

ただ、昨日小さい会場でみた、ドキュメンタリーコンペティションのグランプリ受賞作品『Jai Bhim Comrade』は、客席の年齢層も人種も大変多様でした。3時間に及ぶインドのカースト制に関する作品です。インド人の居住者数の少なくない香港なのに、インド人来場がひとりもないのが、この映画を物語っているところがあるのですが、子供のころは知っていたことを忘れかけてるのに愕然としたカースト制度。その歴史やプロテストを唄の力で熱く伝える場面の多さに、インドの口伝文化を目の当たりにする驚きと、戦い方の違いに対する驚きがありました。
先日は、伊集院静さんの「お父やんとオジさん」を読んで、北朝鮮と韓国が休戦状態なのだということをすっかり忘れていた自分に気づき赤面し、今回、『Jai Bhim Comrade』をみて、インドの(のみならず各国でありますが)カースト制度のことを忘れていた自分に赤面し、生活に追われて身の回りのことでいっぱいになるのって、あっけなくやってくるなあと怖く思ったのでした。

ページ上部へ