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PFFディレクターBLOGRSS

2012/02/27 00:27:52

白黒映画が流行中?

タル・ベーラの『ニーチェの馬』が立ち見も出る盛況と配給会社の方から伺い、大変嬉しく思っています。
白黒映画です。
先日、フランスのセールスカンパニーの方が、「このところ白黒映画が増えている気がする」とおっしゃっていました。「ハネケの『白いリボン』の影響が大きいのかも・・・」という話でしたが、どうなのでしょうか。

数時間後に始まる米アカデミー賞表彰式で、作品賞の最有力候補と言われている『アーティスト』も白黒映画ですね。ミシェル・アザナヴィシウス監督。東京国際で意表を突くグランプリが話題だった『OSS 117 私を愛したカフェオーレ』の監督ですね。
先日、ベルリン関係で紹介した、メインコンぺのポルトガル、ミゲル・ゴメス監督作品『タブー』も白黒映画でした。『アーティスト』は未見なのですが、『タブー』は、『アーティスト』にすこ~し似ているところがあるのかもしれないな~と勝手に気になってます(が、両作品ともご覧になってらっしゃる方多いでしょうから、頓珍漢でしたらすいません)。

表彰式では、このゴメス監督、受賞したアルフレード・バウワー賞(銀熊)がご不満の様子で、プレゼンテイターのオゾン監督をちょっと困らせていましたが、その受賞スピーチで(最初に発表されたポルトガルの短編映画監督のスピーチにあった、インディペンデント映画製作状況の大変困難なポルトガルという言葉に繋げて)オリヴェイラとペドロ・コスタ、この2監督の存在の大きさを話しておられました。そのとき、日本の監督が同じような状況で先人として名前を挙げるとしたら、どの監督になるのだろうなあ・・・と考えたのを思い出しました。

さて、米アカデミー賞の発表を、日本で一番ドキドキして待っているのは、ノミネート作品を公開する関係の皆様でしょう。特に、単館系公開作品にとって、その宣伝効果は得難い大きさだと想像できます。『アーティスト』、外国語映画賞候補のイラン映画『別離』、公開中の『ピナ』(『ピナ』が長編ドキュメンタリー賞候補なのは意外ですね)などでしょうか。なんだか、私も落ち着かない気持ちになってきました・・・

イラン映画『別離』は、個人的にヒットを願っています。
イランの映画製作状況が好転することを願ってやみません。映画製作状況だけに留まらない、もっと根本的な話なんですけど・・・・
イラン映画といえば、キアロスタミ監督の日本撮影の新作。一体どんな風に「日本」が写っているのか、待ち遠しいです。

「日本」と言えば、本日はヨロヨロと新橋演舞場 中村勘太郎改め勘九郎襲名披露千秋楽へ行って参りました。
遡れば6年前の新春浅草歌舞伎『仮名手本忠臣蔵 六段目』での早野勘平が度胆を抜く素晴らしさで、その後、出来るだけ目撃してきた中村勘太郎さん。昨年3月の博多座『夏祭浪花鑑』にまたまた驚き、今回『春興鏡獅子』すごかった。長唄囃子連がこれまた背筋がざわつく素晴らしさで、「残る人生で邦楽をやる!」と思ってしまうくらい心底震えました。ジャズですね。いや、すごい。その後見を務めた中村七之助さんの『於染久松』(平成中村座1月)も大変ようございました。ありゃ。歌舞伎ブログみたいになってきた・・・
歌舞伎、いったい何からみればいいのと思う方、歌舞伎は他の伝統芸能に比べ結構選択肢が多い。おせっかいですが、まず毎年正月のみ開催される「新春浅草歌舞伎」おすすめします。若手がのびのびと演じておられること、お値段が他劇場ほど負担にならないこと、など、手軽に楽しめます。自分が、仕事柄つい「若手」「新人」に注目するからかもしれませんが・・・
この「新春浅草歌舞伎」、若手を脱すると出演がなくなる定めですので、今年は市川亀次郎さん最後の出演となり、ものすごく暴れておられ爽快でした。亀次郎から猿之助へ襲名となる舞台には、香川照之さんが出演なさるのも話題。先日放映された『贖罪』での怖さの焼きつく香川さんの舞台、目撃できたらと思っています。

え~、話を白黒映画に戻します。
ベルリンネタもこれが最後ですが、映画祭会場のあるポツダム広場には「映画博物館」があります。展示方法が世界でも群を抜くかっこよさで、一度は訪問をお薦めするのですが、内容は、カリガリ博士、マレーネ・ディートリッヒ、メトロポリスが多くを占めていて、もう少し他をみたくなります。が、ドイツ語がわかれば、アメリカに亡命した監督たちの貴重な肉筆手紙なども沢山展示されてときめきます。今回、10年ぶりに再訪したのは、別フロアに設けられている特撮コーナーをもう一度みたかったからでした。レイ・ハリーハウゼンを中心に、ギーガーのエイリアンなど、ジオラマや、ミニチュア、実物など、実に見応えのある展示だったのです。が、しかし、今年はそのフロアが消えていました!2年前に撤収され、今は、テレビ番組のコーナーに変わったということで、特撮が過去のものになったことをしみじみと知らされ、がっくり。
で、白黒映画です。
この博物館に、ムルナウ監督作『最後の人』でエミール・ヤニングスが着たホテルドアマンの制服が展示されているのです。これが、鮮やかな朱色に金のボタンとモール。
何度みても、「ほほー」と思うこの色。歌舞伎や絵画をみても思うことですが、現在に比べ、19世紀までのほうが、人々は鮮やかな色の服を纏っていたのではないかと。ビクトリア時代のイギリスで大流行したというモーヴ色など、今、着る人はめったいにいないですしね・・・
明るい色は心を浮き立たせる効果、確かにあるような気がします。と言いながら、自分も黒黒黒なのを反省・・・
かつてスタジオには、白黒フィルムに色がどう映るか研究していた方がきっといたはず。
そんな勉強をしてみようかと思っている今日この頃です。あ、邦楽もやらなくちゃだし、忙しいぞ自分!
その前に仕事です。


2012/02/24 00:00:20

危うく死ぬところでした

めったに乗らない自転車で走っていましたら、信号無視で飛び出してきた小型トラックを避けようとして、鋪道にはみ出していた民家のブロックにタイヤをとられ転倒。半身が車道に飛び出し、そこで車が来てればもう今ごろは告別式、という事故にあいました。トラックは逃げちゃったけど。
人生、一寸先は闇であります。

いろんなところを打撲したようで、湿布をべたべた貼って、テープで固定して、「フランケンシュタイン~~~~」とかいって遊んでますが、痛みが移動しながら高まるのには、ちょっと困ってます。子供の時の懐かしの「膝小僧を擦りむく」とか「肘を擦りむく」とかも体験し、「かさぶたが出来るのはいつごろかな~」とか呑気なことを言っております。(かさぶたをはがす行為、大人になってとんと経験しないですよねえ・・・)

というわけで、自宅静養中なのですが、その前にぴあで郵便物を整理していましたら、北九州市民映画祭で、キム・ギヨンの特集というチラシを送っていただいていたのをご紹介したいと思います。PFFin北九州を実行くださっていた吉武あゆみさんからのお知らせです。
門司出身の青山真治監督も参加するこの企画、ゲストのひとりに、現在東京国際映画祭「アジアの風」プログラマーの石坂健治さんがおられます。

石坂さんのことは、以前にもご紹介いたしましたが、かつて渋谷に存在した国際交流基金の「アセアン文化センター」で、映画の担当をしておられました。その後、赤坂ツインタワーに移って、ずっと、日本未紹介のアジア及びアラブ映画の紹介を続けておられ、特にアセアン文化センター時代はお仕事をご一緒するご縁の深かった方です。
キム・ギヨンを、世界で最初に再発見再上映をした人です。
気難しい監督との親交も深く、日本での特集をきっかけに、本国韓国で再発見が始まり、いよいよ1998年には、ベルリン国際映画祭で特集が組まれるという、その直前に、ご自宅の火災で監督はご夫人と共に亡くなられ、ベルリンの会場には息子さんがいらしたのを覚えています。あのときは、心底驚きました。

さて、今や、知らないもののいないキム・ギヨン。
九州では初めての上映ということですので、是非多くの方に体験いただければと思います。

今年のベルリンでは、内線前の幻のカンボジア映画を3本特別上映しました。まだ、スタジオがあり、映画産業があった時代の映画です。カナダに亡命した監督も参加なさって、40年以上を経た貴重なそれだけしかない16ミリフィルムでの一回限りの上映。映画祭というのは、映画の最新事情を見せる場所でもあり、歴史をみせる場所でもあるなあと実感する会場の雰囲気でした。石坂さんは3作品すべてご覧になったのではと予測しています。(私は1作品しか時間がとれませんでした)

ベルリンの話題を続けますと、帰国して、しみじみと「スペシャルメンションの地位があがったなあ」と考えていました。
メインコンペで、スペシャルメンションに銀熊のトロフィーが贈られたのが、まず最初の驚き。すでに、「メンション」ではなく、「賞」という扱いですね。
これは「コンペティション」というもの変化が始まっていることを示しているのかも・・・と考えはじめています。映画祭運営側にとっては、新たな課題の表出です。

あ、前回のブログでは、『グレートラビット』を日本映画と記してしまいましたが、これはフランス映画でした。失礼しました。和田監督は日本在住ですが。というわけで、受賞した日本映画はCICAE賞の『かぞくのくに』(ヤン・ヨンヒ監督)なわけですが、スペシャル・メンションの今泉さん、平林さんとも、受賞と同じっていうベルリンの見解では。
今泉さんは、夫婦揃って映画監督というのも、現代日本の映画事情をうつす面白い話ではないでしょうか?

さて、海外から戻っていつも思うのは、日本の雰囲気の不機嫌さです。
公共機関で、街で、人々の顔が、空気が、不機嫌で剣呑だなあと感じます。不安で不幸ななかで、自分だけは得をしたい、という価値観がこの国を覆っていると申しましょうか、あるいは、最少単位である家族だけは安全でいたいが他はいい、という価値観と申しましょうか、なんか、全体的に身勝手な感じ。それって、つまるところ、損な発想ではないのかなあと思います。自分と家族だけでは暮らせないからなあ...現実は。ちょっとした視野の拡大や、優しさの表出が、何かのときに自分にも得となって戻ってくると思うけど、ちょっとやってみませんかね?と言いたくなる電車の中だったりします。

成田空港からの電車で一気読みした『海にはワニがいる』は、推定9歳でアフガニスタンを脱出し、子供の力でパキスタン、イラン、トルコ、ギリシャを経て推定15歳でイタリアに政治亡命した少年の記録ですが、この話で言えば、日本はあきらかに亡命者を助ける立場の国。その感覚はしっかりあったほうがいいと、しみじみ思った『海にはワニがいる』。私は横尾忠則さんの紹介文で興味を持ち読みましたが、映画化すすんでいるそうです。

本といえば、遅ればせながら、沼田まほかる『彼女がその名を知らない鳥たち』を昨秋拝読しまして、腰が抜けました。映画化は不可能だと思いますが、近年もっともすごかった小説でした。

2012/02/19 09:27:12

ベルリンからの帰国準備中

ベルリン国際映画祭は、綺羅星の如く賞があります
日本映画は短編『グレートラビット』と長編『かぞくのくに』が受賞をし、短編『663114』と長編『聴こえてるふりをしただけ』がスペシャルメンション授与という嬉しいニュースとともに(海外の映画祭にいると、自国の報告がつい最優先になるのがおかしですね・・・・)全て賞の発表が終了し帰国準備中です。次作への意欲に火をつける効果大!の金銀の熊の授与されるメイン表彰式へ、今年も木村監督へは出席を薦めながら、実は自分ではあまり参加しておあらず、本年は3年ぶりに会場へ。構成がシンプルに軽やかになり、さくさく進行する変化を体感。メインコンペ作品はわずか2本しかみておりませんでしたので、拝見した一本である、ポルトガル作品『タブー』のアルフレードバウワー賞(革新的な映画に与えられる銀熊)しか反応ができませんでした。この監督が、独特のチャームを放つ人で、スピーチもおかしく(古臭い映画を撮ったのに、この賞で戸惑ってるそうです)、ある出演者かと思いました。機会があれば是非ご覧ください。

準備に膨大な手間隙をかけながら、開幕後はあっというまに終了へと突きすすむ、一種、「花火」のようなイベント「映画祭」を改めて感じる映画祭最終日の訪れです。
『恋に至る病』は、受賞には至りませんでしたが、3回の上映に立ち会うことができた木村監督。共通の質問もありましたが、反応がくっきりと会場によって違うことを肌で感じたことは、得がたい体験だったのではと思います。「質疑応答に慣れたころには帰国」というのも、毎年思うこと。特に本作は、ジェンダーについての興味が高いドイツと、意識せずに暮らす日本という差も、はっきり見える反応でした。

長距離のフライト機内は、映画三昧の場所にもなります。実は仕事柄、後回しになりがちなメジャー系映画を観る時間となり、ロッテルダム往復では『スペースカウボーイ』と『カンフーパンダ2』が印象に残りました。カンフーパンダのほうは、自分のカンフー映画好きという要素と(あ!今回ベルリンでは、ツイ・ハーク監督の新作を拝見できませんでした。残念!)近年のアニメーション技術への畏敬とあわさって強烈だったのですが、『スペースカウボーイ』は、まるで現代日本の縮図であるところが興味深いのでした。メジャー映画の普遍的な物語構造の強みをみるようです。宇宙船はアメリカ、エイリアンは日本の政財界の既得権所有者=新財閥と呼べるような集団、エイリアンの目的である「金」を吸い上げる装置は、あまりにも生生しく迫りました。ベルリンへの往路では、アンドリュー・ニコル監督の新作『タイム』。最近「中世の王様が捜し求めた「不老不死」は、現在でも変わらず人間の求めることなのでは?」と感じているのですが、その感じを具体化されたような映画です。不老不死という言葉は誤解をよびそうなので、「死」の不安を乗り越えるために、肉体にも精神にもお金を注ぎ込む。と言い換えたほうがよさそうです。そして、クレジットカードの種類や限度額が人の価値の尺度になる。そんな現代社会が、『タイム』では「時間」に置き換えられています。旧作『ガタカ』同様、穴だらけのゆるい映画ながら、そくそくと迫るリアリティ。こんな社会にしない選択を続けていかねばなあと感慨深いのでした。帰国便も映画との出会いが楽しみです。

・・・って、映画祭の帰りにいう科白ではないですね・・・映画祭で映画に出会えよ!と自らつっこみ。映画祭は人との出会いが大きな要素でもあり、今年の個人的な驚きは、1992年の招待作品(この年は、招待作品部門で世界で話題のインディペンデント映画をラインナップしました)『Swoon』のトム・ケイリン監督との20年ぶりの出会いでした。最初、昼食の席で一緒になったのがケイリン監督と気づかなかったうかつな私。デビュー作『Swoon』が当時ベルリンのForum部門でカリガリ賞を受賞し、本年は、テディ賞の審査員として参加と同時に、『Swoon』の特別上映があるのです。PFFでの来日後、『美くしすぎる母』の公開でも日本に行き、主演のジュリアン・ムーアが来日できなかったかわりに、記者会見ではジュリアンのさまざまな衣装をかわりに並べたそのシュールなしかし情熱ある日本の配給会社が忘れられないそうです。また、現在コロンビア大学で教鞭をとる監督は、優秀な教え子である日本人女性が果たして日本で映画を撮るチャンスがあるのかを心配しています。が、今回のベルリンでは、日本からの長編フィクション映画は、4作品全て女性監督だったことをお伝えしました。ヤンさん、今泉さん、荻上さん、木村さん。映画状況は変化しています。

2月も残り少なくなりました。3月は京都シネマでのPFF京都開催です。同時期に所沢のイベント『世界が注目する日本映画たち』もやってきます。そして、PFFアワード2012締め切りが。香港国際映画祭もはじまりますし、森田芳光監督の特集も開催されます。
学校は春休み。さまざまな場所で映画を体験いただけるとうれしいです。

2012/02/17 10:40:36

ベルリンから その2

朝は早起き、夜は遅寝というか朝寝の本格的にハードな映画祭の日々になってきました。
ベルリンは、1:会場が多い、2:作品が多い、3:ホテルが遠い と「時間調整三重苦」な映画祭。更に、パーティー族ではない私にとって、パーティーハンターの方々の体力には脱帽です。映画とミーティングと、さらにパーティーという、「三種をはしご」して廻る日々の人々に「仕事は体力が勝負なのね・・・」としみじみ感じさせられております。

今回PFFから唯一の出品作品となった『恋に至る病』は、映画祭ラインナップの中で突出したオリジナリティとフレッシュさで大好評!と、自画自賛の恥ずかしいことを書かせていただきます。質疑応答では、木村監督歌まで唄って大受けです。「シリアスな映画の多い年に当たってかえってよかったよ~!」と内心思う私でした。

ロッテルダムでは、「ブラジルと韓国が当たり年では?」という声が聞こえてましたが、ここでは、「ポルトガル?」という声が。ポルトガル。アキ・カウリスマキもポルトガルの農園で暮らしてますね。私の中では『白い街』。リスボンに一度行ってみたいと思いながらはや幾年。うつの友人が、ポルトガルの旅で回復したのも印象に残っています。中世から第二次世界大戦前まで、世界各国を勝手に植民地化していた(いる)多くの帝国(イギリス、オランダ、スペイン、ポルトガルなど)の中でも、最も落日をみている、枯れた国終わった国というイメージが、日本の参考になるのではないかと長く感じているポルトガル。一度滞在して確認してみたいものです。
『山のあなた BEYOND THE MOUNTAINS』というベルギー人の母と日本人の父を持つ監督がポルトガルで撮った中篇作品もロッテルダムの上映から引き続き話題です。もともと東京在住だった監督。ランドスケープデザイナーのお父様が、風光明媚で自給自足の可能な土地への移住を考え、日本中を探しまわる過程で、ここだ!と思った理想的な土地には、必ず原発が建てられていたことから、「もう日本はだめだ」と諦め、ヨーロッパに住処を求め、巡り合ったポルトガルに土地を求めた、という幼い時の体験を回想、確認するドキュメンタリー。日本の映画祭からの問い合わせもかなりあるそうですので、みる事の出来る日も近いと思います。

原発。
今回のベルリンは、邦画とくれば原発がらみという印象で「恋愛映画ですいません・・・」という気分になっている私たちですが、ベルリンで初めて拝見した、岩井監督の『friends after 3.11』船橋監督の『Nuclear Nation』(藤原監督の『無人地帯』は日本で拝見したのですが、こちらには音を5.1チャンネルに再編集して出品しておられることを今日知りました)は、観客の反応が興味深かったです。『friends after 3.11』は、反原発発言、活動をしている方々のインタビューを中心に構成されており、現在第2弾も製作中とのことなのですが、上映後、プロデューサーは「私もこんな活動をしています」というかたがたに囲まれ、熱い時間をすごしておられました。『Nuclear Nation』は、双葉町から埼玉の廃校に避難していらした方々をじっくり追いかけたドキュメンタリー。永遠に追いかけ続ける。完成させる時期を決めていない。というつくりかたをしている作品で、今回第一弾の作品としてまとめるきっかけとなったのは、昨年末の政府の原発事故収束宣言。上映後の質疑応答前には、現在、補償交渉の大詰めで日本を離れられない町長からのメッセージビデオも流され、真摯な雰囲気に包まれました。しかし、海外でみる福島原発事故の記録は、改めて、日本の不思議さを感じます。怒らないひとびと。責任者がみえない状況。男男男の社会。「外国で日本のドキュメンタリーをみるのは、ものすごく面白いかも・・・」と感じる体験です。

フォーラム部門の日本からのもうひとつの長編作品は、ヤン・ヨンヒ監督の初フィクション映画『かぞくのくに』。未見ですが、「最後に泣いてしまった」という声を沢山聞きました。朝鮮半島の南北分断が、ドイツの東西分断と状況が近く理解がしやすいという側面があるからか、ヤン監督はベルリンのレギュラー監督。日本公開も近い『かぞくのくに』は、キャストも魅力的でとても楽しみです。

マーケットが撤収し、いよいよ終わりが実感されてきたベルリン国際映画祭。本年から広報担当者が変わり、世界中の新聞社に8泊の宿泊招待が出たそうですし、上映は英語字幕が中心へと変化、質疑応答も英語になり、プレスは例年より賑わっている感じです。私たちは、18日の上映立会いを最後に帰国です。


2012/02/14 05:08:36

ベルリンに着きました

深夜1時羽田発全日空ボーイング787でフランクフルトに着き、ビジネスマンでいっぱいの朝6時50分発ベルリン行きに乗り換え、朝9時すぎにホテルに到着し、ものすごく早いチェックインをさせてもらいました。ボーイング787。確かに、座席やトイレ、座席画面、いろいろゆったり設計の快適なフライト。何より、「夜発って朝着く」という感覚が、ほぼ徹夜状態なのを忘れさせ、そのまま映画祭事務局に行ってもろもろの手続きができ、即普通の一日が始められるのは、すばらしい限りです。まあ、今、目が真っ赤なんですけど・・・・

おそれていた寒波も一段落し、分厚い川の氷も割れてたゆたい始めています。もう数日すると、東京並みの気温に落ち着くのではという予測。ひと安心ですが、道は凍っています。

ドイツの首都となったベルリン。年内に大型の国際空港が完成し、今までフランクフルトからのフライトが到着していた、旧西ドイツの国際空港、小さく可愛い「テーゲル空港」は廃止されますが、その新国際空港に、日本ーベルリン直行便の飛ぶ可能性はゼロだそうです。ベルリンには日本企業がぜんぜんないから。ああ残念・・・

迎えに来てくれた映画祭ドライバー氏によると、テーゲル空港の跡地は、「空港の出来る前に戻す」ということで、森に帰すそうです。東京の暗渠も元に戻して、また、船で行き来する街に戻ったらいいのになあと一瞬夢想しました。

学生だというドライバー氏から、「ベルリン映画祭何度かきたことがありますか」と聞かれ、「多分あなたの生まれたころから通ってる」と答えたら(今回22回目だったので)彼は30歳。一度映画祭事務局で働いて、また学生に戻り、今年はバイトでドライバーをしているそうです。いや〜、若く見えるドイツ人もいるんですね。明日到着する木村承子監督は、私が最初にベルリンに来たときには、まだ保育園に行ってたのでは?と思うと同時に「もしかして、ベルリンがかつて東西に分断されていたことを知らない人もいるのか?」とも。・・・まさかね・・・・
かつて東西に分断されたドイツで、ベルリンは東側の中にぽっかり飛び地のように残された西側。19世紀、森鴎外が青春を過ごしたヨーロッパ最大の都ベルリンの面影は、壁の崩壊直後、かつての東側のほうにより残されており、ネオンの輝く西と、暗く手入れされない石造りの東と、コントラストがすごかったのですが、今や、街の中心部も、おもしろいことの発信地も、全て旧東側に集中しています。その前に、今や、旧西・東を話題にしません。

まあ、ともかく、ベルリン国際映画祭は、冷戦下に自由都市ベルリンで開催されることに意義のある映画祭でもあったわけです。

そして、今年。いろいろと驚くことがあります。

フォーラム部門は、カンヌの監督週間と同じく、メインのセクションへのアンチの立場で始まりました。ですから、オフィシャルセクションというよりは、ちょっと異端。また言葉を非常に大切にしていたので、映画祭カタログも、独自に、ヴォリュームたっぷりの作品紹介や監督のメッセージなどを盛り込んで発行していました。

しかし今年から、フォーラムも、コンペやパノラマと一緒に、分厚いカラーの映画祭カタログに一挙掲載され、独自のフォーラムカタログは、e-bookとしてダウンロードする形式となりました。

これは、とても大きな変化だと思います。また、映画祭全体でチケット管理がいっそう厳しくなり、もし一度でもチケットを受け取った作品を見に来なければ、即ブラックリストにのる。そうです。ひゃ〜。カンヌより厳しい?

そして、もともとベルリン国際映画祭が展開されていた、旧西側のZOO駅周辺の再開発が急ピッチで進んでいます。かつてのコンペ作品上映会場であったZOO PALASTも、映画祭ビルディングだったEUROPE CENTOREも、大工事中。来年どんな様子になっているのか、今、全く想像がつきません。

まあ、とにかく、刻々と変化するベルリンをみていると、ヨーロッパの不況をあまり感じないのですが、全ての都市計画は何年も前のもので、着工時点で現状とそぐわなくなるのは、古今東西毎度の出来事でもあります。

さて、前回のブログで、「木村監督、映画祭のスタッフを独占できるかも?」と書きましたら、それは甘い期待で終わり、明日は、岩井俊二監督作品の「friends after 3.11」の関係者もいらっしゃるそうです(監督はこられないそうで残念ですが)。と言いながら、こちらに来てから日本映画の詳細をカタログで読んでいる私。「friends after 311」がインタビュー集であることを知り、そして、明日お越しになる方のひとりは、藤波心さんということにひとり盛り上がっているのでした。

前述のドライバー氏の父上は日本贔屓で、これまで7回日本旅行を繰り返しているそうです。車中の話題も津波後の日本は大丈夫かという心配と、日本人のメンタリティについての質問など。そのあと、映画祭事務局で話かけられたスイスのプロデューサーも津波後の回復を心配してくださり、いろいろ聞かれました。贔屓の和食屋では、日本で寿司は食べられるのか心配されました。先日、ロッテルダムの帰路のドライバーも、日本を心配してくれたことを思い出します。彼はモロッコから幼い時に一家でオランダに移住し、一番上の兄が当時医学生でそのままモロッコで医者になったと。そのお兄様が3年間癌の闘病をして先日亡くなり、その3年は、保険も効かず、モロッコでの収入では手が出ないベストの治療を受けてほしくて、二ヶ月に一回、30万円近くの送金をして破産したけど悔いがなかったことや、アメリカのがん保険が役にたたなかったこと、などの話になりました。オランダ人の妻と3歳と7歳の子供がいて、この5年くらいでオランダ人の美点が失われ、他者排除の意識が急激に高
まって、冷たい国になってきているので、モロッコに移住することを考えていること、お金が貯まり子供も手がかからなくなったら、アジア旅行をしたいが、子供をストリートに放り出すタイやフィリピンのような国は絶対に行きたくないこと、モロッコでは子供は「聖なるもの」で虐待などありえないことなど聞きました。「日本も一日一件くらい子供の虐待死のニュースがある」というと、「そんなニュース聞いたことがない!日本は家族を大切にする国だと思ってた」とものすごく驚いていました。

あるイメージが、自分たちで自分たちを幻想に追い込むことはよくあるなあと、改めて確認したくなる、「日本のイメージ」。でも、世界は世界規模で“荒んで”いっているのは確かではないかと感じます。イメージから、現実へ。311が露呈したものは、つまるところ「現実」ではないでしょうか。現実をいいものに変える、その方法を文化芸術エンターテインメントそして芸能がどう担えるか、そこに「面白さ」を提示することに知恵を絞りたいと折々の会話のたびに思います。

昨年末、メジャーで全く報道されなかった、東電会長宅前の右翼青年のハンストを取材に来たのが、フリージャーナリストと、新聞「赤旗」の記者だったというのが、私の「昨年の面白さ最高の事件」でした。イデオロギーの崩壊を如実に語るこの出来事。「面白い」ことから未来の芽がみえるような気がします。

2012/02/12 16:29:55

東欧映画、そしてチケットレス入場

昨年のタル・ベーラ『サタンタンゴ』(新作『ニーチェの馬』みてくださいね。『サタンタンゴ』を超える俳優の忍耐力に驚愕しますよ~)上映は、約20年ぶりのPFFでの東欧映画上映でした。PFFの最優先事項は「PFFアワード」。作品選定や字幕制作に膨大な予算のかかる日本未公開作品上映は予算を考えると他の映画祭に任せるしかありません。しかし、東欧映画情報は随時知りたいなあと思っていた矢先、以前、ニューヨークのジャパンソサエティで映画担当をしておられた平野共余子さんが、新宿書房のコラムにルーマニアとセルビアの映画についてお書きになっておられることを知りましたのでご紹介します。
民族の坩堝とも言えるNY。「ルーマニア映画祭」会場には、ルーマニア所縁の人だけでも多くの観客がいそうですね。そして、「英語字幕だけで上映」できれば、どんなに映画祭が組みやすかろう・・・と、やりたい特集をあれやこれやと考えるのですが、ないものねだりはしないのが大人。夢想にとどめる次第です。*昨日、『Fish Tank』と書いていて、イギリス映画も近年日本にめっきり紹介されてないことを思いました。「少女映画特集」とかもあるなあ~とも思ったのですが、考えてみると、過酷な映画が多い。少女を取り巻く世界は、とてもとても厳しいことを再確認です。余談でした。

予算削減と言えば、今年のロッテルダムは、チケットレスに踏み切って、パスホルダーは、映画祭パスに、観たい作品のデータを入れてもらう方式になりました。上映会場入り口では、バーコードでパスの情報を読み取っていくのです。そうすると何が起きるかと申しますと、自己管理しないと「どの作品をどこで何時に観る予定か忘れる」のでした。紙のチケットには、作品タイトル、会場、時間が入っていましたから、それを順番に並べて回れば確認も兼ねて一日を過ごせたのですが、パスに入ったデータを自分でみることは出来ず、あわわわわ。パスのない観客はどうするのかと言いますと、これが、プリントアウトした紙(観る作品のバーコードが入っている)をパスと同じく入り口で読み取ってもらうのですが、この紙が、A4二枚とかになってたりするのです。昨年まで(昨年参加していませんが多分一昨年までと同じはず)のロッテルダムのチケットは、5センチ×7センチくらいでしたので、今年は遥かに紙使ってますねえ・・・あ、今度はお客が紙代負担か・・・。
なんだかね、「これからはペーパーレスになる」と喧伝されていた昔が笑えるほど、現在のほうがいろんな場面で遥かに紙を使っていますよね。プリンターのインクと紙、今や巨大産業ではないでしょうか。そんな万国共通の現実を相次いでみせられたロッテルダムでした。

そしてもうベルリン国際映画祭が始まっています。
マイナス16度。ホテルの部屋にいても寒いという話が聞こえてきます。近年の異常な寒波に、ベルリンの会期変更を求める声もあがるのですが(昔は5月だった)、5月のカンヌ、8月のベネチア、2月のベルリンと、プレミア合戦のトップにいる3大映画祭ですから、その会期の変更は難しいものがあるようです。「せめて12月はどう?」と呟いてみる私でした。
一昨年まで、ロッテルダムとベルリンの間に、一週間は日本に戻ることにしていました。そこに「PFFアワード」の会議のひとつが置かれていましたから。しかしPFF会期の変わった今、その必要もないのに、長年の習慣で今年もつい一週間空けて、明日からベルリンです。しかし来年からは、ロッテルダムは後半、ベルリンは前半と、連続滞在に切り替えようと考えています。あまりの寒さに、一度帰国すると戻りたくなくなってしまうのでした。ヨーロッパに。南極探検に行くわけではないのですけど・・・
今回は、『恋に至る病』のワールドプレミアとなり、追って木村承子監督も出発します。フォーラム部門です。ここには、日本から他にも長編映画4本が招待されています。フォーラム事務局は、舞台通訳や、ゲスト担当などの対日本語関係セッティングがしっかりしており、心配なく映画祭を過ごせるのですが、ふと気付くと、他の長編作品監督は、岩井さん、藤原さん、舟橋さん、ヤンさん、みなさん言葉が堪能。もしかして、木村監督は、日本人ゲスト担当をしてくださる近津さんを一人で独占できるのかも?と、彼女の幸運に驚いているところです。近津さんは近年映画祭期間はキャビンアテンダントの仕事を休んで日本人ゲスト担当として参加くださる奇特な方なのです。

2012/02/11 22:34:33

ロッテルダム受賞3作品は似ているかもしれない

ちょっと情報として古くなってしまいましたが、ロッテルダムのコンペ、「タイガーアワード」の長編グランプリ受賞3作品(各賞約150万円の賞金)について折々考えていました。
今回、3作品とも女性監督作品だったこと、いずれも少女の視点の物語であること、親世代とのコミュニケーションがとれないこと、など、共通点の非常に多い、乱暴に申しますと「似ている」3作だったなあと思い返しています。
歌舞伎をみていると、「何故登場人物(男)はこんなにも肝心のことを話さず、思い込みで行動するのか?」と茫然とすることがあるのですが、それはそこ、お芝居。無茶なことを役者の力と、音楽、美術で強引にねじ伏せる醍醐味が歌舞伎。その思い込み&早合点の行動が、他者をどんどん巻き込んでドラマを高めて行くのが(歌舞伎も含む)「芝居」というものですが、映画の場合、お芝居とは違い、なまなましい。そして今回の、肝心のことを話さない、いえ、話せない、に近い3人のローティーンの行動は、自分自身を傷つける度合いが高い。この生き辛さは、同時に、「女の子が生きやすい世界への道のり」はまだ困難なのか、という現実を写し出してもいたのでした。
具体的に3作品を紹介しますと、ロッテルダム映画祭の映画製作支援システム「ヒューバート・バルス・ファンド」(サードワールド対象ですので日本作品は受けられません)を得て製作されたチリ作品『Thursday Till Sunday』by Dominga Sotomayorは、両親と姉、弟という4人家族のロードムービーで、さりげない描写の連続でありながら見事にサスペンスフルに構築された、地味ながら3作品の中で頭一つ達者で唸らせられる才能です。少女は、もうひとつの受賞作、中国の『Egg & Stone』by Huang Ji の主人公と同じ年頃と思われます。両作品の少女とも、透明感の高い、素晴らしいキャスティング。細いうなじ、持て余す細長い手足、言葉にできず伏せるまつげの揺れる様、目で見る前に、感じる空気に反応する体。『Egg&Stone』では、養父が彼女を妊娠させる、その事実を言わない、言えない少女とその世界が、観客に問われる作品です。そして、しみじみと悲しく「家庭内性的虐待が世界共通の問題」であることを再認識させられます。監督のパートナーであり本作の撮影監督である大塚竜治さんの名前に記憶がありましたら、08年に『LING LING's GARDEN』という中編映画でPFFアワードの一次通過をなさった方でした。大変議論された作品なのでよく覚えています。こちらも見事な撮影でした。これからの活躍の期待高まる才気溢れる北京在住のカップルです。セルビアの作品『Clip』by Maja Milosは、前記2作より数歳年上の少女が主人公で、セックスを過大評価するのが痛ましい姿としてこれでもかと迫ります。常に自分の姿をiPhoneで撮影し、セクシーショットのお手本はFacebookから。ローティーンなのにセックス+ドラッグ+酒の毎日。親はコミュニティの破壊し尽くされたセルビアで真面目に暮らしをたてていくのが精一杯で、行き場のない苛立ちをぶつけ親を傷つける子供に対峙する余裕に恵まれず、そのギャップは開くばかり。この作品は同時に、オランダ批評家賞を受賞(賞金としてオランダ語字幕をつけてオランダ配給のチャンスにつなげる)しています。インパクト大。好きな男の子にまとわりつき、いきなりフェラチオ(それも学校のトイレ)で歓心を買う。犬のように扱われ、でも最後は、『愛』へと至るハッピーエンド。今回の受賞作で唯一、賛否両論、蛇蝎のごとく嫌う人もいた作品でした。「安いポルノ映画」と吐き捨てる人、「近年のローティーンの苛立ちを描いた作品の中でもひどい出来」という人(秀作例は『Everyone Dies But Me』露2008『Fish Tank』英2009など)、「ハッピーエンドから逆算してつくられた陳腐な作品」という人、それはそれは大変。確かに、骨格は古い恋愛映画です。が、あらゆる国の人にそんなに反感を買う作品、ちょっとみたくなりませんか?
*余談ですが、コンペ作品で、性器がやたらに出てきたのは、2作品でした。1つはこれ。さあもうひとつはどの作品でしょう?・・・とか下らないことを言ってる場合ではないですね。

と3作品のことを考えていたら、岡崎京子さんの『へルター・スケルター』映画化進行中というニュースが!ざっくり言って、上に羅列した映画の世界をいち早く描いた岡崎京子。その世界が蜷川監督の手でどんな映画になるのか、あまりにも楽しみです。実は1996年、岡崎さんが事故にあわれる一週間ほど前にPFFアワード審査員のお願いをした私。「数日考える時間を」というお答えに、そろそろお返事を伺おうと考えていた矢先の仰天の出来事。それからずっと何らかの新刊が出るたびに胸が痛んできたものですが、岡崎ワールドを映画化、演劇化したいという情熱は、各地で益々高まっているのではないかと感じます。例えば劇団「口字ック」。昨年PFFを手伝ってくださった山田佳奈さんが主宰する劇団。それがご縁で遅ればせながら拝見した舞台は女子満開!満開女子をこれでもかとぶつけてどんどんあがるテンションは、爽やかさまでに達していきます。(是非一度体験を!)
女子世界が女子によって描かれることが増え続けて行くことが、世界が面白くなることに繋がる予感がするという意味において、今回のロッテルダムの結果、大したものかも思う一方、無邪気な男子映画の減少に繋がるのもちと寂しいとも思うのでした。色々な映画を観たい欲張りな場所、それが「映画祭」でもあるのでした。
・・・・うわ~、ブログにあるまじき長さになってますね・・・
ロッテルダムに戻ります。短編グランプリ3本の1本に日本の作品が選ばれたのも話題でした。牧野貴監督の『Generator』。私は残念ながら未見ですが、こちらは、PFFの名古屋会場でもある愛知芸術文化センターが「身体」をテーマに毎年製作する作品の最新作です。企画が選ばれれば、監督が予算を貰って自由に完成させるという方法で、以下のように多彩な監督による、多彩な作品があります。
http://www.aac.pref.aichi.jp/frame.html?bunjyo/original/index.html
*PFF名古屋開催は、5月を予定しています。

しかし、男女問わず、「伝えたいことを言葉にして話すという技術」の獲得って難しい。よく喋る人は、考えを隠すため、騙すために喋る場合が多々あり、疑われやすいですし、言葉は誠に厄介。昔、審査員をお願いした桃井かおりさんが、少女時代にイギリス留学から戻って日本の暮らしに馴染めず、何をどう話せばコミュニケーションできるのかわからなくなり、途方に暮れて話し方教室に通った結果、とにかく自分の考えていることを全部相手に伝えるという方法を用い始めたとおっしゃっておられましたが、帰国子女には、その方法を用いる人が少なからずいる印象があります。「あらゆる人と対等に向き合う」ということが、言葉を伝えるための第一歩では、と個人的には考えていますが、対等に向き合いたくない人も多いですし、こちらも厄介。
あ、老人の繰り言みたいになっちゃいました。

2012/02/02 07:14:04

エージェントとかセールスカンパニーとか呼ばれる会社あるいは個人があります

あっというまに帰国となりました。残念ながらJALのアムステルダム直行便が廃止されたので、10年ぶりくらいのKLM利用。機内では映画を見続けることにしているのですが、KLM(およびAir France)の映画紹介は、かなりどうでもいいマニアック、あるいは眉唾な裏話が必ずついてきて、面白いのでした。「日系航空会社の映画紹介ではあり得ないなあ・・・」と日本の真面目さをここでもまた発見する次第です。
往路は、実は「ひとりアニメ特集」をしてみましたが、機内上映ラインナップがハリウッド作品満載なのにびっくりです。「ハリウッド映画が日本ほど公開されないのかも?」と考えてみたり・・・

日本は、世界で一番各国の映画が配給・公開されている国です。映画祭のラインナップを交渉する際も、日本国内の配給会社と交渉するケースが多いので、海外の映画祭ほど、作品をハンドリングしているエージェントというか、セールスカンパニーとの交渉がないかと思われます。この「エージェント」とは、たとえば、日本作品ですと「日本以外の劇場公開、テレビ放映、映画祭出品、DVD化、リメイク」などの交渉窓口になるわけですが(日本を含む、という場合もあります)、どうしても大きな商売が優先になるのは、ビジネスとして当たり前ではあります。映画祭も、勿論、手間隙かけての効果の高い、大きな、マーケットがあるような映画祭に力が入ります。小さな映画祭は「交渉しても返事ももらえない」ということは、珍しくない話です。大きな映画祭とは集客力抜群のメガストア、小さな映画祭とは商店街の小売店みたいなものかもしれませんね、ビジネス的には。フランス、ドイツ、オランダ、イギリスなどに会社が置かれてる場合の多い、つまり、ヨーロッパで盛んな仕事です。
今、増加する日本からの放射性物質で汚染された貨物の陸揚げ拒否・返送でも話題のウラジオストック。「極東のヨーロッパ」と自分たちでも呼んでいるこの街に、「ウラジオストック映画祭」という、決して小さくない映画祭があります。コンペ部門の審査員を、桃井かおりさんや、岩井俊二さんが努めたこともある、東京から2時間半で行けるロシア=ヨーロッパです。この映画祭で昨年、日本からのコンペ作品の上映が出来ず、招待されたゲストは上映なしで帰国したという出来事がありました。フィルムの時代、人気作品のプリントの映画祭間転送がうまくいかず、ゲストの滞在期間に上映されずに終わった場に私も居合わせたことがありますが、ウラジオストックの場合は、フランスのエージェントからのデータがシステムの不具合で開かず上映できなかったのでした。何をどうしてもだめだとわかったのが、上映の2日前。すぐフランスに連絡したが、時差が8時間で向こうは深夜。つまるところ1日が消えてしまい、上映前日に電話でやりとりしながら再挑戦したが、だめで、審査員にはDVDで試写室審査に切り替えてもらい、会場は上映中止で平謝りの返金だったと、今回ミーティングした際に伺いました。
この話の教訓は「上映素材チェックは遅くとも1週間前に終わろう」ということですが、そのことに加え、時差もなく、2時間半で行ける製作国・日本にある素材で何とかならないのであろうか?という残念さ。しかし、製作者側にも「エージェントを通さなくてはならない」という契約=決まりがあり、それを破ることにかかる煩雑な交渉や、製作者&映画祭双方とも、今後の長い付き合いへの配慮からの判断であることも理解できます。同時に映画祭運営者にとっては「テープ上映が確実だ」「バックアップの用意は必須」ということの再認識でもあります。

あら?話がロッテルダムから離れてきました。
コンペ作品は無事完遂し、アイスランド、トルコ、中国、韓国(2作品。ひとつは3D!)、ギリシャ、ブラジル(2作品。ひとつは白黒シネスコ!)、ビルマ(!)、セルビア、ポーランド、タイ、ロシア、チリの最新作品をみました(日本作品は既に拝見してました)。こうしてまとめて観ると、不幸なセックスやドラッグや暴力、多いです。コミュニティの崩壊がまだ修復されないセルビアやロシアの辛さ、ひと際重いです。また、アジアって、なんだかスィートで柔らかな感じなんだなあと驚きます。そして、ヨーロッパの作品は、その作品国系のお客さんで溢れかえります。いやはや、面白いです。
*ロッテルダムには5段階評価方式の観客投票があり、上映翌日位には集計されリストアップされるのですが、コンペ作品で現在最も評価が高いのは、トルコ映画「VOICE OF MY FATHER」です。

見逃した作品も勿論沢山あります。ラウル・ルイス追悼トークや、フランスでつくられた足立正生さんのドキュメンタリーは、特に残念です。
そしてともかく帰国し、中旬からはベルリン国際映画祭に参加します。昨日ベルリンのタイムテーブルが発表され、業界人は早速スケジュール作成にはいっています。この時期、ベルリンと、アカデミー賞が話題です。


プロフィール

PFFディレクター
荒木啓子 Keiko Araki

雑誌編集、イベント企画、劇場映画やTVドラマの製作・宣伝などの仕事を経て、1990年より映画祭に携わる。1992年、PFFディレクターに就任。PFF全国開催への拡大や、PFFスカラシップのレギュラー化、海外への自主製作映画の紹介に尽力。国内外で映画による交流を図っている。

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