夜明けの晩に

監督:堤 章男

20歳の女性がラジオドラマ用に書いた生理的な文学世界が原作。終電に乗り遅れた少女が電話ボックスの中で一夜を過ごす間に、相手のいない受話器に向かって話す言葉には彼との別離の悲しさよりも身ごもった優しさが印象づけられる。そして徐々に彼女の隙間、幼い頃に双子の妹が死んだことや母親から自立しようと思っていること、本当は彼が恋しいこと、が見えるにつれ、映像の動きは感情の動きとなっていく。雨から彼女を守る筈の電話ボックスは子宮のようではあるが、実は寒々しいもの。そう気付いた時、朝がやって来るのだった。

  • 1980年/27分/カラー/16mm
  • 監督:堤 章男
  • 制作:渡辺宏司 原作:赤木素子 撮影:榎本岳志 助監督:神田健一 録音:田中竜雄 照明:高橋良章 製作:多摩芸術学園
  • 出演:森光順子