東京白菜関K者

監督:緒方 明

ある朝起きたら、白菜男になっていたK。街へ出たKは、疎外感や不条理に悩む暇もないくらい、モテてモテて、さまざまな事件や人々に追いかけ回される。そして、くたびれ果てたKは土に戻っていく…。明らかにカフカを下敷きにしながらも、全く心理描写や文学性とは無縁なところで、男の顔に白菜をかぶせたコスチューム、そして彼にただひたすらに街を迅走させる視覚的なアイデアだけで映画を成立させていく手腕は見事。走るKを追っていく手持ちのカメラ。一見乱暴な編集はバックグラウンドで鳴り響くロックのサウンドと心地よい対位法をかたちづくる。白菜が異常に高騰した時期の、街頭インタビューなども混じえながら、本来ならばKの内部の出来事として描かれるべきものを、すべて彼の外部の出来事に視覚的に置きかえていく手法は、すぐれて映画的であり、因果関係に縛られない新しいアクション映画の萌芽も見える。

  • 1980年/62分/カラー/8mm
  • 監督・脚本:緒方 明
  • 撮影:石井聰亙 照明:手塚義治 製作:ダイナマイトプロ
  • 出演:尾上克郎、保坂和志、日野繭子、室井 滋