手の話

監督:村松正浩

ジャストシステム賞

「彼女」がいれば、大丈夫

粗雑なくらいさばさばした性格の夏子。少し気弱なマイペース男、坂井。ある日、夏子は坂井の仲介で、本棚を人に譲ることになった。2人は車で出かけるが、届け先がわからない。でも「彼女が教えてくれるから大丈夫」と坂井は言う。「彼女」とは選択に迷った時に現れる、彼にしか見えない女性の右手。そのおかげで(?)目的地に到着するが、夏子が怪我をしてしまう。本棚を放り出し、病院を探して車を走らせる坂井。だが「彼女」の存在はぷつりと消えて…。
月のような信号、星のような街灯。冬の夜の道路をあたたかく映し出すカメラは、友達以上恋人未満の2人を見つめる監督の眼差しでもある。坂井が迷う間もなく一番大切なものを選んだとき=愛する責任を引き受けたときに、“選んでくれていた”彼女がいなくなるピリオドは、物語に深い奥行を与えた。非現実的なモチーフを使いながら、充分に現実的な幸せの誕生を描いた映画。

  • 1996年/30分/カラー/16mm 英題:THE LEADING HAND
  • 監督・脚本・編集:村松正浩
  • 制作・記録:高橋真美 撮影:花山純子、田嶋克次 照明:根津信哉、広嶋哲也 録音:宮地 寛、向井崇人 音響:武井尚士、藤井暁久 音楽:竹花寿実、瀬尾タロ
  • 出演:瀬尾タロ、勝田 愛、佐々木 広、大窪将央

海外映画祭

1997年 トロント国際映画祭 カナダ
1997年 オルレアン国際映画祭 フランス