黄金の月

監督:長岡広太

レンタル可能/配信有り

日本人はどこから来て、どこへ行くのか。

浴衣、麦茶、うちわが当たり前に夏の必需品だった昭和20年代後半。妻を亡くし、息子・國男と暮らす杉田には悩みがあった。妻の死をきっかけに、常識では考えられない変化が國男の身に起こり始めたのだ。小学4年生だというのに体も顔つきも大人のそれとなり、めったに口もきかず、そばにいるだけでなぜか恐ろしい気分になることも増えてきた。今日も具合が悪いと寝込んでいる息子を往診してもらうが、悪いところは見つからない。医者は「心配ない」と言うが、國男がにらんだだけでコップが割れる。そして医者が帰ったあと、息子の不思議な力に導かれるように、杉田は見るはずのない景色を次々と目の当たりにする。妻・よしえの死、極限状態で死んでいった戦友の佐伯、一心不乱にお経を読む人々…。次第に現実と幻想の境目は曖昧になり、遂に杉田の家の廊下に真っ赤な鳥居が現われる。そして鳥居の向こうに杉田が見た巨大な物体とは?
一見、ごく普通のオカルト作品を思わせるつくり。しかし物語が進むにつれて次第に「日本人とは?」「日本人らしさとは?」というテーマが現われる。後半、せりふへの配慮が手薄になるが、戦争、宗教などの軽くないモチーフを通し、シリアスな問題に地に足のついた姿勢で取り組んでいる。昭和20年代という時代も、テーマが不自然でないという理由から選んだものだろう。わかる話をわかる範囲で扱う作品が多い中で、貴重な取り組みと言える。

  • 2002年/39分/白黒/video 英題:The Golden Moon
  • 監督・脚本・撮影・編集:長岡広太
  • 美術:高木里美 照明:宮崎正輝 音楽:thraw 衣装:寺田綾子 アドバイザー:田中貴子
  • 出演:扇田拓也、倉沢 学、紺谷昌充、稲田美穂、扇田森也、光岡原子、野ロ雄介、結縄久俊

配信・放映

レンタル可能作品

料金:15,000円(税別) 貸出フォーマット:ビデオ

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