STILL LIFE

監督:藤川佳三

観客賞(名古屋)

レンタル可能/配信有り

何も感じないのは、感じると傷つくから。

長い道のりをさまよい歩く少女。気がつくと、ひと気のないニュータウンにいる。その少女に声をかけ、車に乗せる中年男。保護観察員だと名乗る男は、本当は団地の管理人で、乱暴目的で女性に声をかけるのを日課のようにしているのだった。少女は買い物の途中で「本屋に行く」と言い残したまま家出してきた高校生で、2人はお互いの中に共通する深い虚無感を見つける。1人になった少女は体を売って堕ちるように1日1日を過ごし、男は妻にさげすまれ、うだつの上がらない毎日を暮らしている。再び出会った2人はラブホテルに行くが、男は少女が団地の住人であること、その母親がしょっちゅう男を連れ込んでいることを、少女は男が管理人で、妻の尻に敷かれていることを知っていた。それぞれ、自分が最も捨てたいと願っている部分を突きつけられて感情をぶつけ合ううち、男が少女の首に手をかける。そして、遠い記憶をたどって2人が行き着いたのは、深い深い森だった。
虚無感や絶望を描く映画は多いが、この作品が際立ってそれに成功しているのは、イメージにふさわしいロケーションをきちんと選び、細部の音にまで気を遣っていることにもあるが、やはり大きな要因は、感傷的になり過ぎない、乾いた視線を監督が安定して保っていることだろう。時折、挿入される死のイメージ映像が、危なげだが続いていく生のしたたかさを鮮やかに浮かび上がらせる。

  • 2000年/70分/カラー/video 英題:STILL LIFE
  • 監督:藤川佳三
  • 制作:藤田功一 撮影:権藤秀和、金子正人 録音:小林徹哉 助監督:亀谷英司、新沼正興 製作:IN&OUT
  • 出演:藤川佳三、松崎佳代、岸野雄一、日垣一博、森本訓史

配信・放映

レンタル可能作品

料金:15,000円(税別) 貸出フォーマット:ビデオ

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