しがらみ学園

監督:黒沢 清

冒頭、ありふれたストーリーが提示される。ある学生組織の内ゲバの話だ。主人公がカバンを奪ってくると、組織が彼の女ともどもそのカバンを奪い返すという話がそのまま始まる。カバンを持ち帰った男が女と向かい合う。その部屋は何故か左右相称。しかも小津調そのままのローアングル、フィックス画面。左右相称のフスマに男と女の服が相称に掛けられている。深夜、部屋に踏み込まれてカバンを奪われた男が畳に落ちているハンガーを拾い、彼の視線がフスマを昇っていくと、何故か男の服だけがある。こうした臨場感を伴って展開する。ロジックに構築されたリアリズム描写で“状況”の連鎖状態をつくり、いつの間にかストーリーをはるかに陵駕していく。これが映画の構造である。あまりに巧みすぎて全く偉大なる冗談だと思えるほどだ。

  • 1980年/63分/カラー/8mm
  • 監督・脚本:黒沢 清
  • 撮影:万田邦敏 協力:笠原幸一、本山俊也、浅野秀二 製作:パロディアスユニティ
  • 出演:森 達也、久保田美佳