かさぶただらけのマリア

監督:松本真葉

愛が、濃い

「愛してない、でもセックスする。」そう宣言する女を本気で愛していく男。付き合ってください、と言われて付き合い始めた男に、次第に執着していく女。恋に捕らわれた人間はプライドと独占欲の間で自分を失い、バカげた行動にひた走る。彼らの愛憎の対象となった人間もまた、恋愛における優位に立ってしまった自分を持て余し、ただ立ち尽くす。愛というナイフで傷つけられ、自分をも傷つけた者たちは、だがしかし、かさぶたも治らないうちに、また誰かを愛し始める。
恋愛が、人間の精神に、肉体に、もたらすもの。その全てを直視しようと奮闘するカメラ。最後まで高い集中力を保つその視線が、愛すること、愛されること、愛さないこと、愛されないことが微妙に枝分かれしていく様を、くっきりとフィルムに焼き付けた。男性の心理描写が細やかで、特に、恋人の部屋で歯みがきをしようとして、自分以外の男の存在に気付くシーンは秀逸。

  • 1996年/92分/カラー/8mm 英題:SCARRED MARIA
  • 監督・脚本・音楽・Premire編集:松本真葉
  • 撮影:松本真葉、和田龍成 撮影協力:中間耕平、藁垣洋平、松川直人、堀内裕未、サーヤ 機材協力:松浦 亨
  • 出演:島本三起子、松本真葉、和田龍成、的野裕子、山崎浩司、ポコ橋本、富田耕一郎、ムッシュ武居、サーヤ