リハビリテーション

監督:渋谷のりこ

大嫌いだけど大切な、自分のトラウマのために。

幼い頃、性的暴力を受けていた男がいる。彼は、気がつくと目の前に現れて当時を思い出させる、もう1人の自分の存在に悩まされている。力づくで抑えようとしても抑えきれないその少年を男は憎むが、完全には憎みきれない。少年はそんな男を無言で慕う。そして2人はやがて、隙あらば好奇の目を向けようとする世の中で、共存して生きていくことを決意する。
あちこちに隠されている心理学上の記号は、単に意味を読み取らせるレトリックとしてだけでなく、映像としても充分に美しく印象的で、必然性から生まれる切なささえ感じさせる。また、人物の顔をはっきり見せない点が、夢の中の情景のような効果ももたらしている。

  • 1993年/15分/カラー/8mm
  • 監督・制作・脚本・編集:渋谷のりこ
  • 撮影:中野貴大 録音:藤本拓也 美術:須賀穣介 音楽:金子雄樹
  • 出演:宮崎達生、渋谷智之