OVERTONE

監督:嘉悦基光

技術賞(日活賞)

レンタル可能

一緒に暮らし始めてわずか1ヵ月で最愛の女性を失った若い芸術家。かつてモデルだった美しい彼女との思い出の土地であるアトリエに戻るが、あまりにも大きな喪失感から、食事の時も眠っている時も、まるで彼女の死が自分の勘違いだったようなリアルな幻想を見る。そんなある日、何かに取りつかれたように、彼は粘土で彼女の像をつくり始める。一心不乱に打ちこんだその像が完成した夜、アトリエに射しこんだ月光が、粘土の塊に命を吹きこむ。そして、目を覚ました彼は再び最愛の人と出会うのだが…。
ドラマチックなストーリーだが、抑制の効いた演出と、無骨ささえ感じるザラついたカメラが、甘さを抑えた、それゆえに余計に痛みの深さが感じられるラブストーリーを完成させた。亡くなった恋人の幻想と実際の思い出のバランス、挿入のタイミングが良く、濃密だった2人の時間と彼女の魅力を充分に伝えている。また、生と死、触れ合い、別れ、つくり出す、生み出すことなど、この映画の様々なテーマを象徴させた“手”の表情の撮り分けにも注目したい。ちなみに「OVERTONE」とは、音の性質を表す「倍音」のことで、協和する音や倍音を多く含む虫の音などが合わさると、違った響きとなって聞こえるという。さらにTONEはドイツ語で土、粘土を表す言葉で、ストーリーはこの言葉から発想された。

  • 1999年/28分/カラー/16mm 英題:OVERTONE
  • 監督:嘉悦基光
  • 撮影:関元由希子 録音:小林 喬 撮影助手:月永雄太 美術:小野佐知子 音楽:アミット・ロイ
  • 出演:福津泰至、榎本 愛

レンタル可能作品

料金:15,000円(税別) 貸出フォーマット:16ミリ、ビデオ

レンタル方法はこちら