睡蓮の人

監督:村田朋泰

審査員特別賞

レンタル可能/配信有り

残された人の、残された時間の使い方。

初老の男が1人で暮らしている。家族も、訪ねて来る人もいない。少し寂しいが、贅沢を言えばキリがないと諦め、時間が止まったような家の中で日々を過ごしている。ある日、男は夢を見た。夢の中で、ゲタの音が聞こえた。自分はこの音を知っている。そう思いながら目を覚ますと、部屋に1匹のカメがいた。なぜか懐かしい気持ちのするカメに導かれるように鳥居が続く階段を登っていくと、池のほとりに辿り着いた。すると男の脳裏には、はっきりした情景がよみがえって来る。まだ自分が20代の頃、やはり若かった妻と2人で来た場所だった。いつも無口な自分の隣で、いつも笑顔でいた妻。夢で聞いたゲタの音は、妻のものだった。その時、男はやっと思い当たる。それは亡くなった妻からの伝言だと。何も考えずに過ごすのと、懐かしい人を思い出しながら生きるのでは、孤独の意味が違う。たまには自分を思い出してほしい――。寂しさを避け、思い出すことをしなかった自分は、亡き人に寂しい思いをさせていたのだ。そう気付いた男の目に、やさしい睡蓮が映った。
ラフにつくった紙粘土細工のようなテイストのクレイアニメーション。その素朴さが「孤独とは、1人ではないことを教えてくれるものだと思う」という作家のメッセージを、さり気なく、あたたかく伝える。ふすまや廊下や木の窓枠など、家の細部に懐かしい昭和の風景を丁寧に再現した点もまた、作品に深みを与えている。

  • 2001年/16分/カラー/video 英題:Nostalgia
  • 監督・脚本・編集・美術・照明:村田朋泰
  • 音楽:坂巻史和
  • 声の出演:村田朋泰

海外映画祭

2003年 マンハイムハイデルベルグ映画祭 ドイツ
2003年 フリブール映画祭 スイス
2003年 ニッポンコネクション ドイツ
2004年 第9回香港インディペンデント・ショートフィルム&ビデオアワード 香港
2004年 全州国際映画祭 韓国
2004年 第1回グリーン・フィルムフェスティバル 韓国

配信・放映

レンタル可能作品

料金:15,000円(税別) 貸出フォーマット:ビデオ

レンタル方法はこちら