まほろば

監督:小林浩道

学校帰りの雪道を2人の少女が歩いていく。彼女たちは山に抱かれて雪に籠る“まほろば”の住人。灰色のコートを着た少女・冬は、降りしきる雪に指を凍らせて冷たい白い塔を作っている。黄色いコートを着た少女・春は、少し離れたところでじっと見ている。雪に恋する冬少女は永遠にイノセント。閉ざされたままで、やがて死に向かう。春少女はそれを悲しんで冬少女の“まほろば”を打ち壊す。冬少女は移り行く季節に逆らえないことを知った。大人になる日が来るのだ。しかし冬少女の青春の潔癖は、死を賭して自らの堕落を阻もうとする。春少女は冬少女の肩を抱く。少女たちの頬に透けて見える赤い血の色。これは少女無惨の美しい神話である。雪に籠るまほろばは、やがていつの日か忘れられる。どこかで、春の鳥が鳴いている。

  • 1980年/16分/カラー/8mm
  • 監督・撮影・編集:小林浩道
  • 助監督:北村勝弘 製作:あまぎらふファミリー
  • 出演:柏崎由香利、石川ゆかり